大規模税制改革を可決(コロンビア)

2023-04-10

22022年12月13日、コロンビア(2020年にOECD加盟)の行政府は、税制改革法(法律第2277号)を制定した(2023年1月1日発効)。議会では、12月上旬に同法案を可決していた。本税制改正法では、法人(居住者および非居住者)に適用される現行の税制に、以下のような重要な変更が加えられた。

法人所得税(CIT)

  • 一般CIT税率は、35%に据え置かれる。
  • コロンビア居住法人に適用される15%の最低実効税率(METR)(業種による例外あり)を導入する(OECD ・第2の柱によって提案された税率を反映)。
  • 特定の金融業界の納税者に適用されている一時的な5%の付加金(surcharge)(通常の35%のCITに上乗せ)の対象を拡大する。本付加金の対象となる納税者には、保険・再保険会社、株式・商品ブローカー、株式・証券市場のインフラ供給会社で、課税所得が約110万米ドル(2022年末時点の為替レート)以上となる者が含まれる。
  • 新規ホテルサービス、エコツーリズム、アグロツーリズムのテーマパークに適用されるCIT税率を、15%(現在9%)に引き上げる(一定の条件あり)。
  • 課税所得が約47万米ドル(2022年末時点の為替レート)以上の原油・石炭の採掘・生産業の納税者に対する恒久的なCIT付加金を導入する。料率は業種や特定セグメントによって異なり、5%から15%の間となる。本付加金は、当年度の平均市場価格が過去120か月の平均価格の65%を超える場合にのみ適用される。
  • 課税所得が約28万米ドル(2022年末時点の為替レート)以上の水力発電会社に対し、2023年度から2026年度までの会計年度に3%の一時的な付加金を導入する。
  • 適格自由貿易地域(FTZ)利用者が、20%の優遇CITの恩典を受けるための新たな要件を採用する。この新要件には、2023年または2024年に政府に対して輸出振興計画を提出(および承認)することが含まれる(2022年に2019年の収入に対して60%の成長を示した者には現行制度を適用)。なお、適格FTZ利用者は、商品およびサービスの輸出以外の活動からの所得に関しては、一般的な35%のCITが課される。
  • 以下の適格FTZ利用者は、引き続き、CIT優遇税制(20%)の対象となる。

1. オフショアFTZ利用者(探鉱および生産)
2. オンショアFTZで操業する適格法人(港湾サービス、石油由来燃 料または工業用バイオ燃料の精製に特化した常設 FTZ)
3. FTZ管理事業体に物流(ロジスティック)サービスを提供する適格FTZ法人

  • これまで非課税扱いとされていた特定の項目、特別控除、非課税所得、税額控除について、納税者の純所得(これらの項目を差し引く前のもの)の3%に制限する。
  • 2年超保有している資産/株式の譲渡などに適用されるキャピタルゲイン税の税率を、居住・非居住納税者ともに15%(現在10%)に引き上げる。
  • 産業貿易税(ICA)の全額が引き続きCIT費用控除されるが、CITに対する50%の税額控除は認められなくなる。
  • コロンビアで大規模な投資を行う納税者に適用される優遇税制(メガ投資税制)を廃止する。
  • 石油、ガス、鉱業におけるロイヤルティーの支払いについて、CIT上の控除を否認する。
  • 2017年から2027年までの探鉱および生産支出に関する5年間の定額償却制度を廃止する。
  • コロンビア証券取引所に上場している株式の売却益に対するCIT免除の適用について、単独所有者の保有持分上限を3%(現在10%)に引き下げる。

配当課税

  • クロスボーダーの配当源泉税率を20%(現在10%)に引き上げる。
  • 国内配当に対する源泉税率を10%(現在7.5%)に引き上げる。
  • 株式による配当の現物分配を受益者の課税所得と取り扱う。

国際課税

  • 実質的管理の場所(EPOM)の基準を拡大する。新規定では、EPOMは主観的な基準が弱まり、日々の活動が行われている場所や、経営幹部が通常事業体の業務に対して権限と責任を行使している場所にも焦点をあてて検討されることになる。
  • 重要な経済的プレゼンス(SEP)規定(注)を採用する(2024年1月1日から適用)。コロンビアの消費者に対する商品の販売やデジタルサービスの提供はCIT上の課税所得となり、10%の源泉税か、プロバイダーの選択により総収入の3%の課税(登録と毎年の所得税申告が必要)の対象となる。SEPは、当会計年度または前会計年度において、収入が約27万5千米ドル(2022年末時点の為替レート)を超え、かつ、商品/サービス販売の対象顧客/ユーザーが30万人超に達する納税者に適用される見込みである。

その他

以上のほか、炭素税(CIT控除可)適用範囲の拡大、梱包・包装用使い捨てプラスチックに係る新消費税(Excise tax)(CIT控除不可)、糖分の多い超加工品飲料に係る新消費税(2023年11月から適用。輸出向け販売を含め一定の免税措置が適用)(CIT控除可)、砂糖とナトリウムを多く含む超加工食品に係る10%(2024年は15%、2025年以降は20%)の新消費税(2023年11月から適用。例外あり)、がある。また、恒久的な富裕税(0.5%から1.5%の累進税率)(1月1日時点の純資産約 63万5千米ドル (2022年末時点の為替レート) 超の納税者で、株式・リース資産・債権以外のコロンビア資産を有する個人および所得税申告者でない非居住事業体が含まれる)が再導入される。このほか、納税者が所得税申告書を提出していない場合における税務当局による電子インボイス記録を使用した納税額の査定、未払関税・納税義務につき2023年6月30日までの全額支払いまたは税務当局と納税者によるその日前の支払契約の締結の場合におけるデフォルト利率の50%引き下げ、税務当局への情報未提出に係る最大ペナルティーを約6万米ドル (現在約12万米ドル)(いずれも2022年末時点の為替レート)に引き下げ、2022年12月31日時点で連邦税申告書を提出していない納税者につき特定要件の順守による利子・ペナルティーの一時的減額の選択、資産の非開示・存在しない負債の報告・脱税等の判定に係る閾値の引き下げ、タックスホリデー廃止に伴う祖父条項などがある。

(注) 2022年10 月11日に公表されたG24(コロンビアを含む)の声明では、より包摂的な多国間協力の必要性を示しており、発展途上国・新興経済国にとって有益となる3つの税概念(1. デジタルサービス税 (DST) を含む、デジタル・リモート取引に対する源泉税、2. 課税対象となる重要な経済的プレセンス、3. 第 2の柱・租税条約上のルール(サービス・キャピタルゲインを含む)、に焦点を当てている。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修