多国籍企業グループおよび大規模な国内グループに係るグローバルミニマム課税法案を協議(キプロス)

2024-01-23

2023年10月3日、財務省は、2022年12月14日付の多国籍企業グループおよび大規模な国内グループに係るグローバルミニマムレベル課税の確保についてのEU指令の国内法への取り込みに関する公開協議を開始した(10月31日までコメント募集)。財務省は、ギリシャ語で法案を公表している。法案本文(テキスト)は概ね本指令に沿ったものであり、これまでに公表されたOECD/G20包摂的枠組み(IF)の執行ガイダンスの特定要素を考慮した追加的なテキスト(短期ポートフォリオ持分に係る簡素化など)が含まれている。本法案によると、2024年から適格所得合算ルール(QIIR)、2025年から適格軽課税所得ルール(QUTPR)および国内ミニマムトップアップ税が適用されよう(法人所得税やその他の関連税とは別途の追加税の導入)。なお、国内ミニマムトップアップ税について、QIIRやQUTPRと同様、被支配外国法人(CFC)課税に係るプッシュダウン規定が含まれている(詳細は省令で規定の見込み)(注1)。移行期間CbCRセーフハーバーなども規定するとみられる。国際海運所得に関して、本法案では、トン数税制などの対象となる活動を幅広く除外するよう、適用除外の範囲を拡大しているが、現在までに公表された本指令、モデルルールおよび執行ガイダンスではこの特定の除外の拡大については規定しておらず、したがって、制定法の最終版には含まれない可能性がある。一般的濫用防止規定(GAAR)は、本法案には含まれていない。これは、同じくGAARを明確に規定していない本指令/モデルルールに沿ったものである。明確に禁止はされていないため、今後GAARの適用を選択する国・地域が出てくる可能性はある(注2)。本法案では、既存税法の一部としてではなく、独自の執行規定を持つ独立した税法を想定しているため、既存の税法におけるGAARが自動的に適用されるわけではない。

(注1)2023年2月の執行ガイダンス(モデルルール10.1条関連パラ118.30)(本誌2023年4月号参照)によると、適格国内ミニマムトップアップ税(QDMTT)の一要件として、国内の構成事業体(CE)は、国内のCFC税制における外国CEの所得に係る税額を除外しなければならないとするほか、一般的にCFC税制の下でCEの所有者が支払った国内CEに配分可能なクロスボーダーの税額を除外しなければならない、とされている。なお、ハンガリーでは、2023年10月18日、財務省が、グローバルミニマム税(GloBE)に係る理事会指令(EU)2022/2523およびOECDモデルルールの実施法案をパブリックコメントのために公表している(2024年1月1日にIIR・QDMTT、2025年1月1日にUTPRが適用開始見込み)が、この点を考慮している(外国親会社に課されるCFC(被支配外国法人)税は、QDMTTの実効税率の計算上、配分されない)。

(注2)たとえば、カナダの財務省が2023年8月4日に公表した第2の柱の法案の中で、一般的租税回避防止規定(所得税法第245条)の適用が提案されている(本誌2023年10月号参照)。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修