2020-08-05
2020年4月23日、欧州理事会は、COVID-19の社会経済的影響に対処するための経済回復基金(recovery fund)の創設に向けて作業を行うことを決定した。本理事会は、欧州委員会(EC)に、正確なニーズを分析し、「本課題に相応する(commensurate with the challenge)」提案を早急に示すよう求めている。
2020年5月27日、ECは、EU全体にわたるCOVID-19後の経済回復基金(次世代EU(Next Generation EU))、および現在の2014-2020年の複数年次EU予算(Multiannual Financial Framework; 「MFF」)の改訂に関する提案を公表した。
ECは、一時的に現在のEU「自身の資金(own resources)」上限をEUの国民総所得の2%に引き上げることを含め、新たな経済回復手段の創設を提案している。これにより、ECは、次世代EUのための金融市場での7千5百億ユーロの借入に自らの信用格付けを使うことが認められよう。
ECによれば、その追加調達資金は、最重要の欧州グリーンディール(European Green Deal)およびEUのデジタル検討課題(agenda)といったEUプログラム(EU programmes)を通じたものとなろう。本資金は、将来のEU予算を通じて返済される必要があろう(2028年より前ではなく、2058年より後でもない)。これを「公平かつ共通の(fair and shared)」方法で行うことを促すために、ECは、以下のような、可能性のある新たな独自の資金源を提案している。
これらは、簡素化されたVATおよび再利用されないプラスチックに係る独自資金のためのEC提案に加わることになる。
連帯(solidarity)と公平性(fairness)が経済回復の核心であることを確かなものにするため、ECは、加盟国が現在の危機の重要課題に対処するために必要な税収をあげることを支援するべく、脱税(tax fraud)およびその他の不公正な実務への対抗を強化する。ECによると、共通連結法人税課税標準(CCCTB)は、事業者に、EUでの法人税の課税標準を計算するための単一の規則書(rulebook)を提示し、また、税の簡素化により、事業環境を改善し、経済成長に貢献することができるとしている。
ECはまた、現在の2014-2020年MFFを改訂し、2020年に以下のための115億ユーロの追加資金を利用可能とすることにより、最も差し迫った必要性に対処するため、資金をすぐに利用可能とすることを提案している。
ECは、欧州の回復(力)を進めるため、2020年改訂EC作業計画(Work Programme)も公表している。直接税に関するものとして、以下がある。
ECの経済回復案(package)は、最近の独仏共同提案に綿密に従っている。しかしながら、オーストリア、デンマーク、オランダ、スウェーデンは、補助金(grants)ではなく、貸付けによる回復資金を望んでおり、EU予算を増やすことに反対している。さらに、ECにEUレベルの課税権を付与することには、加盟国間で議論がある。EU27か国の首脳は、2020年6月18日-19日の欧州理事会会議で、本計画を討議している。ECの計画は、理事会での満場一致、および欧州議会での同意が求められる。
出典:PwC, EU Direct Tax Newsalert
「月刊 国際税務」 2020年8月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修