デジタルプラットフォーム事業者に係る義務的情報交換の採択(EU)

2021-05-05

2021年3月22日、欧州連合理事会(Council of the European Union)は、デジタルプラットフォーム事業者に係る自動的情報交換の範囲を拡大し、税務分野における執行協力に関する既存規定を改正するEU指令(“DAC7”)を採択した。DAC7では、税務分野における執行協力に関する指令2011/16/EU(“DAC”)の第6次改正を導入している。

デジタルプラットフォーム事業者に係る情報交換

本新規定は、デジタルプラットフォームを介して実行される商業活動に関する税規定(所得税やVAT(付加価値税)など)の施行を確実にするために、必要な情報をEU加盟国の税務当局に提供し、デジタルプラットフォーム事業者の管理上の負担を軽減すべく標準化された報告要件を導入することを目的としている。

この新たな報告義務は、EUおよびEU域外のデジタルプラットフォーム事業者に適用され、これにより、特定販売者(“報告対象の販売者”)は、以下の(クロスボーダー/国内)活動を行うために他のユーザーにつながることが容認される。

a)不動産の賃貸

b)人的サービスの提供

c)物品販売

d)あらゆる輸送手段(mode of transport)のレンタル

本報告は、販売者の法的性質(legal nature)に関係なく適用される。より具体的には、EUデジタルプラットフォーム事業者とは、税務上、EU加盟国の居住者である事業者、またはそうでない場合は、EU加盟国の法律に基づいて設立された、またはEU加盟国に管理地(place of management)/恒久的施設がある事業者と定義される。

EU域外のデジタルプラットフォーム事業者とは、EUと前述の地理的ネクサス基準のいずれも満たしていないが、(a)報告対象の売り手による報告対象活動の実行を促進する、またはEU加盟国に所在する資産(property)を賃貸する、あるいは、(b)EU加盟国に所在する不動産の賃貸に関与するデジタルプラットフォームを運営する事業者、として定義される。したがって、EU域外のデジタルプラットフォーム事業は、EU加盟国に登録する必要がある。

しかしながら、これらの事業者は、自国(つまり第三国)の当局に対して同様の報告義務を履行する必要がある場合、これらの報告義務を免除され、そのような当局は、特定の合意に従ってEU当局と情報を交換する。

複数のEU加盟国でそのように認定されているEUの報告対象プラットフォーム事業者は、報告を実施する単一のEU加盟国を選択することができる。EU域外の報告対象プラットフォーム事業者は、通常、報告規定上、登録するEU加盟国を選択することができる。

報告対象の情報には、売り手の正しい識別情報と、プラットフォームを通じて売り手が実現した利得(profits)の決定に関連する情報が含まれる。本情報は、販売者が報告対象販売者として識別された暦年の翌年の1月31日に、プラットフォーム事業者が、所轄税務当局に報告する必要がある。その後、受領するEU加盟国は、受領した情報を他のEU加盟国の税務当局と交換する。

DACのその他の改正

上述以外で、DAC7により、DACについて以下の改正が行われる。

  • 要請に基づく情報交換の前提条件としての“予測可能な関連性(foreseeable relevance)”の基準の明確化(“グループベースの要請(group requests)”に関するものを含む)
  • ロイヤルティーへの義務的な自動的情報交換の拡張
  • 共同調査のための新しい法的枠組み

採択されたDAC 7は、EU官報に掲載される。EU加盟国は、2022年12月31日までに本指令を実施し、2023年1月1日から新規定を適用する必要がある。2023年1月1日以降の報告期間に対応する最初の情報は、2024年に報告する必要がある。

出典:PwC, EU Direct Tax Newsalert
「月刊 国際税務」 2021年05月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人
PwC税理士法人常任顧問 岡田 至康 監修