2022年財政法案(ドイツ)

2022-11-10

2022年7月28日、連邦財務省(MoF)は、2022年財政法案の草案を業界団体に送付した(2022年8月11日まで意見募集)。本草案の改正案には、ドイツの登記簿に登録された権利に係る支払いに関する課税の改正(ドイツ所得税法第49条)が含まれる。2022年6月29日の「簡易手続」の1年延長に関する通達公表(本誌2022年8月号参照)、および2020年11月の限定的納税義務の廃止法案公表に続き、MoFは、2022年7月28日に、特に非居住者である納税者間でのロイヤルティー支払いに係る課税改正案を公表した。本法案では、ドイツ国内の登録簿に登録された権利の売却によるキャピタルゲイン課税も以下の通り改正されよう(注1、2)。

  1. 2022年12月31日までに受領したロイヤルティーとキャピタルゲインについて、課税対象は、関連者間支払いに限定されよう(非関連者(第三者)への支払いは本規定の範囲外)。
  2. 2022年12月31日後に受領する支払いについて、ドイツ所得税法第49条に含まれていた限定的納税義務が全面的に廃止されよう(関連者、第三者間支払いのいずれも)。
  3. 2022年1月1日以降に受領するすべての支払いは、ドイツタックスヘイブン対策法第10条に基づき規制されよう(関連者、第三者間のすべての支払い)。本改正規定によると、タックスヘイブン対策法上のタックスヘイブンに居住する納税者への支払いのみ、原権利がドイツの国内登録簿に登録されている場合に、課税対象となろう。現在、同法上のタックスヘイブンは、米領サモア、フィジー、グアム、パラオ、パナマ、サモア、トリニダード・トバゴ、米領バージン諸島、バヌアツである(タックスヘイブンのリストは、MoFの提案とドイツ連邦議会の承認を条件として変更の可能性がある)。

以上のほか、法人へのビジネスユニットの出資(事業、ビジネスセグメント、パートナーシップ持分または企業の100%持分の継続簿価または中間値での出資)に係る繰延ルールについて、EU/EEAケースと第三国ケースの統一繰延ルールへの改正がある。これらはATAD実施法によって導入され、財政法(Abgabenordnung)第6条(4)に盛り込まれた。したがって、条件を満たせば、申請により、年7回の均等分割納税(延滞利子なし)が可能である(保証/担保が必要)。このほか、2023年12月31日後に完成した居住用建物の定額減価償却率3%への引上げなどもある。

(注1) 本法案によると、ドイツで登録された権利を、ドイツと租税条約(源泉地国の課税権規定なし)がある締結国の拠点グループ法人に移し始めている多国籍企業もあるとしている。なお、OECD第1・第2の柱導入により、ドイツで登録された権利を、ドイツと租税条約がない国の企業に移すインセンティブは減少するとみられている。
(注2) 2022年7月5日、MoFは、クロスボーダーの機能移転の場合におけるドイツ外国税法第1条(1)に基づく独立企業原則の適用に関する新政令(FVerlV 2022 - E)案を公表した。本政令案は、2021年12月31日後開始賦課期間から適用され、現行のFVerlVに取って代わることになろう(2022年7月22日までパブリックコメント募集、2022年秋に修正法案を公表見込み(ドイツ連邦議会の上院(Bundesrat)で可決後、発効))。本政令案によれば、納税者の挙証責任が強化される可能性がある。

出典:PwC Germany website / PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2022年10月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修