第2の柱の実施法案を公表(ドイツ)

2023-10-17

2023年7月11日、連邦財務省は、グローバルミニマム税をドイツ国内法に導入するためのEU理事会指令の実施に関する法案(2023年7月7日付け)を公表した(注1)。本法案は、さまざまな業界団体からのフィードバックと、2023年2月2日に公表されたOECD執行ガイダンスの第一弾(本誌2023年4月号参照)の最新情報を反映している。本法案は、2023年3月20日の討議草案(本誌2023年5月号参照)に準拠している。本法案は95セクション(討議草案では89セクション)で構成される。本法案では、OECDの執行ガイダンス第一弾の特定部分(注2)の取り込みに焦点を当てている。なお、討議草案では、ドイツ居住者である構成事業体で構成される「ミニマム税グループ」の概念を導入している。ここでは、グループのリーダーのみがミニマム税(IIR(所得合算ルール)、UTPR(軽課税所得ルール)、QDMTT(適格国内ミニマムトップアップ税))の対象になる(他のグループ事業体はミニマム税を支払う必要はない)。本法案では、グループのリーダーが他のグループ事業体から支払税額の払い戻しを受ける補償メカニズムが予定されている。

本法案については、今後の立法過程(政府案公表と議会への付託)を注視する必要がある。

(注1)このほかの改正案として、所得税法と外国税法について、ロイヤルティー損金算入制限ルール(royalty barrier rule)の廃止、被支配外国法人(CFC)に係る軽課税閾値の25%から15%への引き下げ、営業税の対象となるCFC所得の廃止などの大幅な改正が提案されている。(注3)

(注2)OECDの執行ガイダンス(第一弾)の特定部分として、除外資本損益および海外事業投資に係るヘッジ(第2.2章)、債務免除の取扱い(第2.4章)、損失に伴うトップアップ税額の繰越控除に係るガイダンス(第2.7章)、資本損益を除外しない選択(第2.9章)、特定のCFC税制(Blended CFC Tax Regime)に係る発生税額の配分(第2.10章)、移行規定(第4章)が含まれる。なお、2023年7月17日公表の執行ガイダンス(第二弾)は、まだ反映されていない。

(注3)他国の動きとして、英国では、2023年7月18日、2024年度財政法に関連して、第2の柱に係る多くの修正が提案されている。UTPRの適用開始日は未定(財政法で発効)だが、HMRC(歳入関税庁)によると、早くても2024年12月31日以後開始会計年度からとなる。IIRについて、OECDモデルルール、コメンタリー、執行ガイダンスに沿ったものとなるよう、特定の修正がある。ベトナムでは、2023年7月25日、グローバルミニマム税の原案がパブリックコメントのため公表された(QDMTTとIIRについて、2024年1月1日の発効を提案している)。(Source: PwC Suite/PwC Vietnam NewsBrief)

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年9月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修