源泉税の改正法案(ドイツ)

2021-01-05

2020年11月20日、連邦財務省は、源泉税の救済(relief)および証明(certification)の改正に係る法案を公表した。本改正は、とりわけ、源泉徴収・還付手続き、トリーティーショッピング防止規則、および国内の登記簿(public register)に登録された権利のライセンス/処分(disposal)から生じる所得への非居住者課税等に関係する。新たなトリーティーショッピング防止規定は、以下のとおりである。

新たなトリーティーショッピング防止規定

本法案では、EU法の要件を考慮して、現行のトリーティーショッピング防止規定の大幅な改正を提案している。新規定案には、現行規則で既に知られた要素が含まれている。しかしながら、本法では、本規定にいくつかの重要な改正の導入を意図している。本改正は、CJEU(欧州司法裁判所)での「デンマーク受益所有権(Danish beneficial ownership)」事件判決で策定された原則、およびEU租税回避防止指令(EU ATAD)第6条の要件の反映を意図している。基本規定(basic rule)では、以下のいずれのテストも満たさない場合、条約資格は制限される。

救済資格者(personal entitlement to relief)

救済資格者に関するテストでは、救済を求める外国法人の株主が直接支払いを受けたとした場合に、条約救済の資格が(仮に)あるかどうか、立証が求められる(「ルックスルーアプローチ」)。
しかしながら、本規定では、特定の資格、つまり、特定の租税条約(DTT)での救済申請に言及している。この改正により、立法者は、法案の説明資料に従い、規定の強化を意図している。その結果、他の租税条約による株主への同等救済(equivalent relief)の資格だけでは、本テストを満たすのはもはや不十分となる。これは、以下の基本規定による免除が適用できない限り、条約救済を求める外国事業体とその株主が異なる法域の居住者である状況に影響する可能性がある。

実体(substance): 自身の活動との重要な関連(material connection)

実体テストは、所得源泉(例えば、配当の場合は資本参加(participation))が、外国法人自身の経済活動と重要な関連がない場合には、満たされない。つまり、その所得源泉は、外国事業体の経済活動に関して、経済機能(economic function)を果たす必要がある。
本法案の説明資料によると、「経済活動との重要な関連テスト(material connection with an economic activity test)」を満たすためには、外国法人は本件所得を受領する理由が説明できる必要がある。したがって、今後は、テストを満たすかどうか、個別評価が求められる。
さらに、以下のいずれかの場合、外国法人の経済活動はないと推定される。

a) 外国法人に所得が生じ、資本参加者/受益者(participating or beneficiary persons)に移転(passed on)される。

b) 法人に十分な事業所(business premises)や人材等が存しないにもかかわらず、活動が行われている。

本基本規定の適用除外

最後に、本規定案には、2つの例外がある。

  1. 「主要目的テスト(principal purpose test)」に似た規定で、外国法人が介在する主要目的のいずれもが、税務恩典を受けることではないことを証明することで、条約上の権利が付与される。
  2. 「有価証券市場条項(stock exchange clause)」 – 条約資格を申請する事業体の株式が、公認の(recognised)有価証券市場で通常(regularly)取引されている場合に条約上の権利が付与される。

上述2の例外は現行規定にもみられるが、本法案の資料によれば、本条項は、将来的には、源泉税救済を申請する外国法人のレベルでのみ適用される(つまり、本条項は、外国法人の(間接)株主のレベルでは適用されないこととなろう)。
現行のドイツ投資税法(German Investment Tax Act)対象法人のトリーティーショッピング防止規定免除は、削除される。

改正トリーティーショッピング防止規定の適用範囲

本改正規定は、租税条約、EU親子会社指令、利子ロイヤルティー指令、およびドイツ所得税法(German Income Tax Act) Section 44a(9)のユニラテラル救済に基づいて申請される恩典に適用される。
説明資料によると、本新規則は、租税条約に、「特典制限(limitation on benefits)」(LOB)条項等の条約濫用防止の特別規定が含まれる場合にも適用される。さらに、本資料によると、トリーティーショッピング防止規定のほか、ドイツの一般的濫用防止規定(general anti-abuse rule)も適用可能とされる。

その他

本法案では、免除証明書の取得/税金還付、および手続きのより高いレベルの電子化のための手続き規定について、いくつかその他の改正がある。これらの改正により、免除証明書を遡及して取得することはできなくなり、(申請日ではなく)発行日からのみ有効となろう。
ドイツ組織再編税法(German Reorganisation Tax Act)のさらなる改正で、税務上、再編を通じた欠損金使用を遡及して制限することを目指しており、その他の措置も本法案に含まれている。
本法案には、改正要件の適用日は明記されていない。例えば、本法案に含まれるドイツ源泉税制度のその他の改正は、2022年12月後の適用とされる。

出典:PwC Germany, Real Estate Tax Services News
「月刊 国際税務」 2021年1月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修