2023年度予算(インド)

2023-05-11

2023年2月1日、財務相は、2023-24年度連邦予算(2023年度予算)を公表した。議会両院での可決、および大統領の承認により発効する。外国投資家や多国籍企業に影響がある改正には、以下が含まれる。なお、BEPS第2の柱の実施に係る特段の公表はない。

法人、有限責任パートナーシップ、ファーム(firms)の税率  これらに係る 所得税率(課徴金および健康教育目的税を含む)は、最低代替税および代替ミニマム税率を含め、変更はない。

非居住者株主への株式発行に関する濫用防止規定  現行税法上、民間企業が株式の発行に際してインド居住者から受領する金額が時価を超える場合に課税する旨の濫用防止規定がある。本予算案では、この規定の適用範囲を拡大し、非居住者に発行された株式も含めることを提案している。これにより、インド法人は、非居住者が時価を超える資本注入を行った場合、通常の法人所得税率で課税されることになる。

非居住者への支払利子に係る軽減源泉税率の適用期間の終了  現在の源泉税規定では、貸付契約が2023年7月1日前に締結された場合、国外からの貸付に係る利払いに5.46%の軽減源泉税率が適用されている。本予算では、さらなる延長は規定されていない。

無形固定資産の取得価額  現行税法上、取得時に対価が支払われていない無形資産や権利(知的財産等)の場合の取得・改良費用を具体的に定めておらず、キャピタルゲイン課税について複数の争訟が発生している。本予算では、取得時に対価が支払われない無形資産やその他の権利の取得・改良費用は、零として扱う旨の明確化を提案している。

税の不服申立手続きの簡素化 – 不服申立の未処理件数残高を減らすため、若手税務調査官による調査に対する不服申立を処理するための新たな代替機関を設けることが提案されている。

発生ベースの源泉所得税の還付 – 本予算では、過年度に発生ベースで源泉所得税が課されている(その後、支払ベースで源泉徴収)場合、納税者が、源泉税の還付を請求できる新規定の導入を提案している。

スタートアップ企業への恩典の拡大  現行税法上、「スタートアップ」として認められるのは、2023年3月31日までに設立された法人のみである。本予算では、2024年3月31日までに設立されたスタートアップ企業に対しても、これらの規定の恩典を拡大することが提案されている。さらに、持株比率の大幅な変更(49%超)があった場合のスタートアップ企業の欠損金の繰越し期間が、設立から10年(従前は7年)に延長される。

非銀行系金融会社(NBFC)に係る利子制限規定 – 現在、インドの銀行・保険会社が国外関連者に支払う利子に対して、利子制限規定(EBITDA30%制限)は適用されていない。本予算では、その恩典をNBFCに拡大することが提案されている。

インフラ投資信託/不動産投資信託の分配金に対する課税  インフラ投資信託や不動産投資信託について、投資先の負債の返済を原資とした投資家への支払いは、投資家レベルで他の源泉からの所得として課税されることになろう。投資口の償還による払い出しの場合、償還された投資口の原価は控除が認められよう。

市場連動債への課税 – 本予算では、市場連動債の譲渡によるキャピタルゲインを、通常の所得税率で課税される短期キャピタルゲインに分類することを提案している。さらに、上場債券に係る利子は、10%の源泉税(および課徴金・健康教育目的税)の対象とすることが提案されている。

移転価格文書の提出期限 – 本予算では、税務当局からの求めがあった場合の移転価格文書の提出期限を、現行の30日から10日に短縮することが提案されている。

税務調査の完了期限  本予算では、2021-2022年度以後の税務調査の完了期限を、年度末から24か月(従前は21か月)に延長することを提案している。

経済特区(SEZ)内のユニットに対するタックスホリデーの申請要件 – 本予算では、タックスホリデーの申請に係るSEZユニットによる輸出売上の実現の期限を、年度末から6か月(またはインド連邦銀行による延長期限)とすることを提案している。

オンライン情報データアクセス・検索サービス(OIDAR)に関するGST適用範囲の拡大 – 非居住事業体が国外からGST未登録ユーザー(インド国内の個人消費者など)に提供するOIDARサービス(クラウドサービス、オンラインデジタルコンテンツ、オンラインゲーム、オンライン広告など)について、非居住者のサービス提供者は、GSTの課税対象になる。本法律は、サービスが完全に自動化されている場合にのみ課税されると解釈されていたが、本予算では、サービスが自動化されているか、人の介在があるかどうかに関係なく、GST の課税対象とすることを提案している。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修