2020-01-05
2020年度の予算案では、3%の一国主義的(ユニラテラル)なデジタルサービス税(DST)を導入する。DSTは、2020年1月1日から適用される。政府は、DSTにより、年間約7億8百万ユーロの税収が生じると見込んでいる。特別な言及はないが、本DSTは、最近導入されたフランスのDSTおよび欧州委員会提案(2018/0073(CNS) - 特定デジタルサービスの提供から生じる収入に係るデジタルサービス税の共通制度に関する理事会指令(Council Directive)の提案)と同様の仕組みになっている。
法制化手続き
本予算案の議会での承認のための期間が2019年末まであり、さらなる改正もありうる。しかしながら、議会では、この新たなユニラテラルDSTについて、コンセンサスを得ているとみられる。
対象となるサービス
本DSTは、以下のような、「ユーザー参加(user participation)」の基盤となるデジタルサービスからの収入をターゲットにしているとみられる。
さらに、本予算案によれば、以下のデジタルサービスは対象外とみられる。
課税対象者
本DSTは、(個別またはグループで)前暦年に以下のいずれの要件も満たす事業者において、上述のデジタルサービスの提供から生じる暦年の発生収入に適用される。
本税は、関連会社間で提供される物品・サービスには適用されない。
関連収入の属地性(territoriality)
課税サービスのユーザーが課税期間においてイタリアに所在する場合に、その課税期間の収入が課税される。ユーザーがイタリアに所在するとされるのは、以下の場合である。
デバイスが「イタリアで使用される(used in Italy)」かどうかは、主にデバイスのIPアドレスによる。
税率
本DSTは総グロス関連収入(VATその他の間接税を除く)の3%である。
課税期間
課税期間は、暦年である。
徴収方法
納税者は、課税収入を稼得した年の翌暦年の2月16日までに納税しなければならない。
また納税者は、同年の3月31日までに、提供課税サービスについて、年次税務申告書(annual tax declaration)を提出しなければならない。同じグループに属する法人は、上述の規定を順守するために、一の事業体を特定しなければならない。
イタリアに恒久的施設(PE)またはVAT登録番号を有しない非居住者である法人および個人は、上述の要件を満たす場合、当局(Italian Revenue Agency)に識別番号(identification number)を申請しなければならない。本申請は、当局が公布する法令で制定される方法に従って、提出されなければならない。
イタリアにPEを有しない非居住法人であり、EU又はEEA(欧州経済地域)の域外国で、イタリアが租税回避及び脱税への対抗のための税務行政執行協力条約ならびに一定の徴収共助条約等を有しない国の居住者である場合には、税務申告とDST支払い義務を順守するため、代理人(fiscal representative)を任命しなければならない。
非居住者であるDST課税対象者と同じグループに属するイタリア居住法人は、DSTの義務に関して連帯納付責任がある。
責任とペナルティー
税務調査、制裁措置の適用、DSTの徴収、および、関連訴訟上の取り扱いは、VATに準拠する。
会計上の要件
DSTの対象となる納税者は、課税サービスから生じる収入、および、税額計算に必要な定量的要素(quantitative elements)を月単位で記帳できる適正な会計システムを保持しなければならない。
発効
本DSTは、2020年1月1日に発効する。イタリアの本DSTは、デジタル経済課税に関する国際合意規定が適用になると、廃止される。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2020年1月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人常任顧問 岡田 至康 監修