政府の大統領令改正法案(韓国)

2023-04-10

2023年1月18日、企画財政部(MOEF)は、2022年12月末の税法改正(注)に係る大統領令の改正法案を公表し、2023年2月3日までパブリックコメントを募集した(本法案は、閣議決定の後、2023年2月公布見込み)。本法案の多くは、原則として、改正規定の公布日または施行日の属する事業年度からの適用が見込まれる。本法案には、以下が含まれる。

外国子会社からの配当に係る受取配当控除(DRD)の適用範囲

最近行われた法人所得税法(CITL)の改正により、国内法人が海外子会社から受領する配当に係るDRD規定が導入された(改正前は、間接外国税額控除制度)。DRD率は、国内法人の受領(みなし)配当の95%である。本法案によると、DRD規定の適用を受けるためには、国内法人は、配当基準日(dividend record date)の6か月以上前から配当を支払う外国子会社の株式または持分を10%以上保有している必要がある。i) 受動的事業(リース等)または主に受動的所得(利子、配当等)を目的とする事業を営む外国子会社(実効税率15%以下)からの受取配当や、 ii) ハイブリッド金融商品取引(当該所得が韓国でエクイティに係る配当として扱われるが、外国で借入に係る利子支払と扱われる場合)からの受取配当については、DRD規定が適用されないであろう。

外国子会社に係る間接外国税額控除の適用基準の緩和

従来、間接外国税額控除の対象となる適格外国子会社の範囲は、外国子会社の配当決議日の6か月以上前から、国内の親会社が外国子会社の株式または持分の25%以上を直接保有する外国子会社とされていた。最近改正されたCITLでは、DRDの外国子会社保有要件に合わせるため、25%の基準が10%に引き下げられた。さらに、本法案では、間接外国税額控除の対象となる適格外国子会社について、国内の親会社が配当基準日の6か月以上前から外国子会社の株式または持分の10%以上を直接保有している場合におけるその子会社とすべきと提案している。

租税条約による免税の適用を受けるために必要な追加情報

韓国源泉所得の実質的所有者である非居住者または外国法人が、租税条約による源泉税の免除を受けるためには、所得の支払者に、租税条約免除の申請書、および権限のある当局が発行する居住証明書を提出する必要がある。本法案では、10億ウォン以上の所得に対して租税条約による免税を適用する場合、外国法人(海外の投資ビークルを除く)は、i) 外国法人の設立に関する情報(役員構成、株主等の概要を含む)、ii) 外国法人の事業に関する情報(外国法人の居住地国において最近3年間に提出された監査報告書を含む)、iii) 使用料所得の場合、無形資産等の実際の所有者を証明できる書類(ライセンス契約、登記地および無形資産の所有者を示す書類等)、などの追加情報の提出が求められる。本追加情報要件は、外国法人が所得の支払日から遡及して1年間に請求した条約免税の合計額が10億ウォン以上である場合にも適用されよう。

以上のほか、購入者発行のタックスインボイスの詳細や、外国連絡事務所への物品/サービスの提供に係るタックスインボイス要件の拡大(国内に事業を行う場所を有しない非居住者または外国法人に係るタックスインボイス免除の適用除外)の提案もある。

その他の関連法令の改正

国際租税に関する調整法(LCITA)関連では、移転価格の所得調整に係るみなし配当支払日の明確化、国外関連者との取引に係る文書やマスターファイル・ローカルファイルの提出に係る新たなないし追加の免除要件、ハイブリッド金融商品取引(支払利子)に係る文書提出要件の明確化および未提出への罰則(最大3千万ウォン)の創設が含まれる。租税特別措置法(STTCL)関連では、R&D税額控除(高控除率)の対象範囲の拡大、ハイテク企業の法人所得税減免に係る若年勤労者の年齢基準の拡大、新雇用税額控除制度の実施に係る詳細や、省エネ設備(2023年取得)に係る加速度償却が含まれる。また、付加価値税法(VATL)(インボイス関連)、個人所得税法(IITL)(非上場株式の評価関連)、相続・贈与税法(IGTL)(中規模会社の評価に係るコントロールプレミアム(20%)の廃止)、関税法(電子商取引に係る新規則 – プラットフォーマー等からの取引データ収集の法的枠組み)の改正も含まれる。

(注) 韓国では、法人税の最高税率を25%(3千億ウォン超)から22%(2百億ウォン超)に引き下げる予定であった(本誌2022年11月号参照)が、2022年12月23日の国会での可決法案によると、課税所得2億ウォン以下は9%(改正前10%)、2億ウォン超2百億ウォン以下は19%(改正前20%)、2百億ウォン超3千億ウォン以下は21%(改正前22%)、3千億ウォン超は24%(改正前25%)と、それぞれ1%ずつの引き下げとなっている。

出典:Samil PwC Tax News Flash
「月刊 国際税務」2023年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修