法的事業体の税務上の区分規定に関するコンサルテーション(オランダ)

2021-06-05

2021年3月29日、オランダ財務省は、オランダおよび外国の事業体(entities)の区分規定(qualification rules)の改正案を含む協議(コンサルテーション)文書を公表した(2021年4月26日まで)。

本提案の目的は、国際的な文脈でハイブリッドミスマッチの数を減らすことである。特に、提案された規定は、事業体の非対称的な区分(qualification)に起因するハイブリッドミスマッチを少なくするはずである。各国間の事業体の税務上(fiscal)の区分のミスマッチによって、所得に2回課税されるか(つまり、事業体のレベルとその参加者(participants)のレベルで)、まったく課税されない可能性がある。

法律案は協議期間後に公表され、本提案は2022年予算の税制の一部(2022 Budget Day tax plan)となることが想定されている。本改正は、2022年1月1日の発効が提案されている。

オランダを含む国際的なストラクチャーについて、特に、以下のいずれかを含む場合に、本提案規定の影響を受ける可能性がある。

  • 非透明(non-transparent)なオランダのリミテッドパートナーシップ(CV)
  • 共同口座に係るオランダの基金(FGR)
  • 既存のオランダの法的形式に類似(comparable)しない外国の事業体

個人投資家も影響を受ける可能性がある。

本提案規定によると、「同意要件(consent requirement)」は、オランダでの多くのハイブリッドミスマッチの原因であるため、廃止される。「同意要件」に基づいて、オランダのCVまたはFGRは、他のすべてのパートナー(リミテッドおよびジェネラルパートナー)の同意なしにリミテッドパートナーの加入(admission)または入れ替え(replacement)が可能である場合、オランダの法人所得税上は、非透明であるとされている。

FGRの場合は引き続き非透明とされるための新たな代替要件が提案されているが、CVは新規定では常に透明(transparent)となる。

ハイブリッドミスマッチの数はかなり減少するはずであり、透明なオランダのCVストラクチャーを求める組織にとってはより多くの柔軟性が期待される。ただし、予期しない結果を回避するために、既存のストラクチャーを分析することが重要である。

オランダのCVおよび類似の外国リミテッドパートナーシップ

オランダのCVの区分を透明または非透明として現在規定している「同意要件」は、本法案では廃止される。したがって、オランダのCVは常に税務上透明として扱われ、オランダの法人所得税やオランダの源泉税は課されない。代わりに、2022年1月1日の時点で、CVのパートナーは、CVへの参加に関して、オランダの(法人または個人の)所得税が課されることとなる。本区分は、オランダのCVに類似する外国のリミテッドパートナーシップにも同様に適用される。

現在オランダの法人所得税上非透明とされているCVおよび類似の外国のリミテッドパートナーシップの場合、透明への変更(擬制)により、資産と負債がパートナーに譲渡されることとなる。突然の税金のキャッシュアウトを回避するため、本協議文書には、条件付きロールオーバー条項や支払い延長などのさまざまな救済が含まれている。

共同口座のFGRおよび類似の基金

FGRに関しては、本法案で、「同意要件」がここでも廃止される。それでも、以下のいずれかの場合に、FGRが依然として非透明となり得る新要件が提案されている。

  • FGRへの参加権が上場されている
  • FGRは、発行済参加権の償還要請に応じる必要があり、この義務が定期的に行使される

非透明なFGRが透明なFGRに変更された場合、CVと同様に、資産と負債がパートナー/投資家に譲渡されることになる。このような状況はまれであると予想されるため、救済措置は提案されていない。

オランダの法的事業体に類似しない外国の事業体

現在、外国の事業体は、オランダの法的事業体との類似性に基づいて、オランダの税務上、透明または非透明のいずれかに分類されている。本提案によれば、この分類方針は維持される。既存のオランダの法的事業体と類似しない外国の事業体の場合、本提案には以下の2つのアプローチが含まれる。

固定アプローチ(Fixed approach) - 外国の事業体がオランダで実質的管理の場所(place of effective management)を有する場合、そのような事業体は非透明であるとされる(したがって、オランダの法人所得税の対象となる)。

対称性アプローチ(Symmetry approach) - 外国の事業体がオランダで実質的管理の場所を有しない場合、その区分は、その事業体が設立された法域の区分に従う。

後者は、オランダの事業体が外国の事業体の持分を有する場合、またはその逆の場合に生じる。

本協議文書では、オランダの法的事業体に類似しない事業体の例として、英国の有限責任パートナーシップ(LLP)、アイルランドの無制限会社(Unlimited Company: ULC)、およびドイツのKommanditgesellschaft auf Aktien(KGaA)に言及している。さらに、例えばまた、フランスのSociété en Nom Collectif(SNC)は、オランダの法的事業体に類似するものではない。

出典:PwC Netherlands website
「月刊 国際税務」 2021年6月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修