第2の柱の法案を公表(ニュージーランド)

2023-08-21

2023年5月18日、2023年度予算案の一環で、所得合算ルール(IIR)および軽課税所得ルール(UTPR)を含む法律案が公表された(2022年5月にパブリックコンサルテーション開催済)。ニュージーランド本拠の多国籍企業が国内で軽課税所得を稼得した場合に適用される国内所得合算ルール(DIIR)(注1)も含まれている。なお、報告義務に従わなかった場合、最大で10万ドルのペナルティーが課される可能性がある。これらルールの採用国・地域が「critical mass」に達することが本ルール導入の条件とされているが、IIRは2024年1月1日以後、UTPRは2025年1月1日以後導入の予定である(25百万ドルの税収見込み)。(注2)、(注3)

(注1)DIIRは、国内ミニマム課税(QDMTT)に類似しているが、少数持分を課税対象にしないなど相違点がある)。なお、IIRやUTPRに係る税と異なり、DIIRでは、「imputation credit」が生じることを想定している。

(注2)多国間で解決できない場合、多国籍企業に公正な税負担を求める独自ルールを創設する必要があるとしている(2019年6月、暫定措置としてのデジタルサービス税(DST)導入に係る協議文書を公表)。

(注3)第2の柱に係る他国・地域の動向として、チェコ共和国は、2023年5月15日、GloBEルールを規定するEU理事会指令(EU)2022/2523を導入する法律案を公表した。バハマ政府は、2023年5月17日、現行のビジネスライセンス税(BTL)制度からの移行、および第2の柱に対応する改正の実施に係るパブリックコンサルテーション文書(「バハマにおける法人所得税戦略に関するグリーンペーパー」)を公表した(2023年7月3日までコメント募集)。英国王室属領のジャージー、ガーンジー、マン島の政府は、2023年5月19日、第2の柱の導入に関する意向を共同発表している(グローバルでの実施状況をモニターし、2025年からIIRおよび国内最低税(必ずしもQDMTTではない)を導入)。スイスでは、2023年6月18日、第2の柱実施のための憲法改正に係る国民投票を実施(2024年1月1日施行予定の暫定法令によりGloBEルールを実施予定。他国での実施状況等を考慮し、発効日は未定)。ケニアでは、2023年度財務法案の中で、NFTおよび暗号通貨に係るプラットフォーム所有者を主な対象とする「デジタル資産税」(税率は、デジタル資産の譲渡または交換価格の3%)の導入が提案されている。なお、大統領が、DSTを廃止し、第1および第2の柱の合意に参加する旨を3月に表明している(本誌2023年5月号参照)が、本法案には含まれていない。オランダでは、2023年5月31日、第2の柱を導入するための法案が議会に提出された(2023年12月31日発効見込み)。欧州委員会が2022年12月14日に公表したEU指令2022/2523の実施を目的としており、概ね本指令と整合している(これに先立ち、政府は、2022年10月24日、第2の柱に係るパブリックコンサルテーション(2022年12月5日まで)を開催している(本誌2023年1月号参照))。トップアップ税として、QDMTT、IIRおよびUTPRの3つの課税メカニズムを導入する。なお、政府は、税務当局内で専門家チームを組成するとしており、事前ルーリングにより納税者に安定性が提供されることが期待される。ノルウェー財務省は、2023年6月6日、OECD・第2の柱に沿ったグローバルミニマム税制の実施に係る規定案(2024年1月1日発効見込み)を公表した(IIRおよび国内トップアップ税案のみ、2023年8月1日までコメント募集。UTPR案は後日公表予定)。ノルウェーでIIRの適用対象になるグループは40程度と見込まれるが、他国・地域でのQDMTT導入などを考慮し、追加税収はほぼないであろうとしている(ノルウェーに軽課税の外資系企業はあるものの、国内トップアップ税による追加税収も限定的とみている)。

出典:New Zealand Government / PwC, International Tax News
「月刊 国際税務」2023年7月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修