レベニューソーシングとネクサスに関する第1の柱のモデルルール案の公表(OECD)

2022-05-09

レベニューソーシングとネクサスに関する第1の柱のモデルルール案の公表(OECD)

2022年2月4日、OECDは、第1の柱の利益Aにおけるネクサスとレベニューソーシングに関するモデルルール案を公表した(2022年2月18日までコメント募集)。

背景

第1の柱では、特定の多国籍企業(MNE)の連結利得のうち、一定の割合(利益A)を市場国・地域(売上が発生する場所)に再配分する。第1の柱は、利益率10%超、かつグローバル売上2百億ユーロ超のMNEに適用される。市場国・地域に再配分される利得は、売上の10%を超える税引き前利得の25%である。各国・地域が、新しい課税権の国内法での実施に向け、必要に応じて利用できる雛形(テンプレート)を提供するため、利益Aの全側面についてモデルルールが策定される。本モデルルール案は、利害関係者からのコメントを受けて修正され、包摂的枠組み(IF)による承認のため、多国間条約(MLC)およびその説明文書に取り込まれる(2022年半ばまでにMLC署名のために開放)予定である。今回公表されたモデルルール案は、ネクサスとレベニューソーシングが対象である。レベニューソーシングの結果は、ネクサス条件充足の判断に用いられるため、関連性がある。課税ベースや対象事業体(surrendering and ceding entities)に関するモデルルール案は、別途公表される。

ネクサス

新しい特別目的のネクサスルールは、各国・地域が、利益Aの下で利益再配分の適格性を有するかどうかを決定するためにのみ適用され、他の税または税目的以外のためのネクサスを変更しない。対象グループ(利益Aの対象MNE)が、各国・地域において、利益Aのネクサステストを充足するか判断するため、利益A目的で売上が発生する国・地域を特定するレベニューソーシングルールを適用することとなる。昨年のIFで、年間GDPが4百億ユーロ以上の国・地域は100万ユーロ、4百億ユーロ未満の国・地域は25万ユーロがネクサスの閾値となることが合意されている(MLCで、為替変動に対する合意アプローチを概説見込み)。

レベニューソーシング

レベニューソーシングルールでは、対象グループが入手可能な情報を用い、様々な指標に基づいて市場国・地域を特定する方法、あるいはバックストップが必要な場合、市場国・地域を、合理的推定が見込まれる配分キーに基づいて特定する方法を規定する(特に、第三者による販売取決め、部品、特定サービス、無形財産について、漏れがないようにする)。本ルールには、ソーシングのアプローチを明示する法律条文と、対象となる売上の種類に応じたレベニューソーシング原則の適用に関する詳細ルールを定めた別表が含まれる(いずれも、拘束力あり)。

売上は、その種類に応じ、取引毎にソーシングを行わなければならない。取引とは、所得を生じる各項目(例えば、個々の在庫項目やオンライン広告のクリック)であり、契約書や請求書単位ではない(各市場国・地域の売上に比例配分、地域価格差も考慮)。本モデルルール案では、8つの異なるタイプの売上区分に対するソーシングルールが含まれている。複数の売上区分に該当する取引は、その優位な性質に従ってソーシングされる。対象MNEグループは、すべての売上のソーシングを行わなければならず、対象MNEグループ固有の事実と状況に基づき、信頼できる方法で(信頼できる指標または配分キーを使用して)行わなければならない。本モデルルール案では、最善の努力をしても、対象グループがすべての取引について源泉を分離できない可能性(最終売上、部品、B2Bサービス等)を認識しており、そのような場合、配分キーが規定される。部品の販売を含む取引の売上ソーシングについては、部品が組み込まれた完成品の最終顧客の引渡場所とすることを求めている(信頼できる指標を用いても判断できない場合、グローバル配分キー(Global Allocation Key)を使用)。

コンプライアンスへのアプローチは、個々の取引レベルではなく、システムレベルとなる(内部統制の枠組みを示す必要)。

出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2022年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修