課税ベースの算定に関する第1の柱のモデルルール案に関するパブリックコンサルテーションを開始(OECD)

2022-05-09

2022年2月18日、OECDは、第1の柱の利益Aに係る課税ベースの算定に関するモデルルール案を公表した(2022年3月4日までコメント募集)。本文書は第1の柱モデルルールに係る2番目の公表協議文書であるが、包摂的枠組み(IF)はこれらのルール案に同意しておらず、現時点では、OECD事務局の作業によるものとなっている(コンサルテーションプロセスとは関係なく、変更可能性あり)。また、IFメンバーは、GloBEルールの採用を求められず、共通アプローチの位置づけとなる(ミニマムスタンダードではない)。

背景

課税ベース算定ルールの目的は、対象となる多国籍企業(対象グループ)の利得の一部を市場国・地域に再配分するための利益Aの算定に使用される利得(または損失)を算定することである。本ルールでは、利得(または損失)は、グループ連結の監査済財務諸表に基づいて計算され、限定的な税務調整を行う(第2の柱における調整と可能な限り一致させる)。また、本ルールには、繰越欠損金に関する規定も含まれている(詳細は、別途公表)。本ルールには、利益Aでセグメンテーションの対象となるグループに係る課税ベースのルールは含まれていない(別途公表)。

税引前利得の決定

利益Aの課税ベースは、対象グループの連結財務諸表をもとに、特定の税務調整と修正再表示の調整を行い、純損失を控除して得られる、調整後税引前利得である。

財務会計基準

財務会計上の利得(または損失)は、その他の包括利益を除く、対象グループの全所得および費用を含む最終親事業体(UPE)の連結財務諸表上の利得または損失である。連結財務諸表は、適格財務会計基準(QFAS)に基づきUPEが作成する監査済財務諸表である。QFASとは、IFRSおよび、以下の国・地域の同等財務会計基準である(将来、適用範囲の閾値が引き下げられた場合、他の国のGAAPを含めることも検討可)。
オーストラリア、日本、ロシア、ブラジル、メキシコ、シンガポール、カナダ、ニュージーランド、スイス、EU加盟国、中国、米国、欧州経済領域加盟国、インド、英国、香港、韓国

調整

税務調整

本モデルルール案の第2条(a)には、財務会計上の利得(または損失)を計算する際に必要な税務調整の概要が示されている。以下の所得や控除費用項目を除外する必要があるとしている。
- 税金費用(又は税金収入)、受取配当、持分利益(または損失)、政策的に認められない費用(賄賂、キックバック、罰金、ペナルティー等)

持分利益(または損失)には、所有者持分の処分が含まれる。資本持分の処分に伴う損益の取り扱いはIFで議論中としているが、現時点では、資産持分の処分に伴う損益は課税ベースに含まれる一方、資本持分の処分に伴う損益は課税ベースから除外される(脚注12では、資本持分が支配持分である場合、資本持分の処分損益を課税ベースから除外しない等のルール見直しが必要になる可能性もあるとしている)。

修正再表示調整

モデルルール案の第2条(b)では、財務会計上の利得(または損失)の計算における修正再表示の取り扱いを概説している。過年度の会計利益の修正再表示は、これが識別され認識された期間の課税ベースに反映されよう(上限あり)。

過年度の損失の計算と控除

利益Aの再配分を経済的利得に限定するため、課税ベースの算定には、繰越欠損金のルールも適用される。利益A導入前に発生した純損失や、特定の事業再編に伴って移転した損失など、いくつかのケースで特定のルールが適用される。繰越期間について、5年から15年の間との記載もあるが、期間の特定はない。なお、2020年10月の第1の柱のブループリントにあったプロフィット・ショートフォール(グループまたはセグメントの利得が、利益率の閾値を下回る場合)のアプローチは、本モデルルールには含まれていない。

モデルルールの変更可能性

本モデルルールは、事務局の作業文書として公表されたものであり、IFメンバーの最終的な見解を反映するものではなく、変更の可能性がある(例えば、規制対象金融サービスに係る適用除外の範囲)。ルールの実務的な適用や定義は、コメンタリーでカバーされるとしている。

出典: PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2022年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修