第2の柱 – 適用免除基準(セーフハーバー)と罰則等の免除に関するガイダンスを公表(OECD)

2023-03-08

2022年12月20日、OECDは、第2の柱モデルルールの公表(本誌2022年2月号参照)から1年となる2022年12月20日に、第1および第2の柱に関連する以下の4文書を公表した。

  1. 第2の柱 - 適用免除基準(セーフハーバー)と罰則等の免除に関するガイダンス
  2. 第2の柱 - GloBEルールに係る税の安定性に関する公開協議文書(コメント期限:2023年2月3日)
  3. 第2の柱 - GloBE情報申告に係る公開協議文書(コメント期限: 2023年2月3日)
  4. 第1の柱 - デジタルサービス税(DSTs)およびその他の関連する類似の措置に関する多国間条約(MLC)条項案に関する公開協議文書(コメント期限:2023年1月20日)

上述2、3および4の文書は、OECD事務局作業のみによる協議文書(包摂的枠組み(IF)で未合意)である。上述1のガイダンスは、2022年12月15日、IFで承認された(注1)

(注1)2022年12月16日公表の令和5年度与党税制改正大綱(2022年12月23日に閣議決定)にも、これを踏まえた適用免除基準が盛り込まれている。

上述1の適用免除基準と罰則等の免除に関するガイダンスでは、以下をカバーしている。

経過的な国別報告(CbCR)適用免除基準(注2) – 2026年12月31日以前に開始する事業年度(2028年6月30日後終了事業年度を含まない)までの適用となる(注3)。初年度等における多国籍企業の低リスク国・地域での事業をGloBEの範囲から事実上除外し、それによって多国籍企業がGloBEルールを導入する際のコンプライアンス義務を軽減する(多国籍企業の適格CbCRから得られるデータ、および適格財務諸表に含まれる国・地域の収入・所得情報を利用可)。以下のいずれかを満たす場合、当該国・地域の最低課税額は零となる(共同支配会社(JV)等に係る適用免除基準も基本的に同様。各種投資会社等の特別ルールなどもある。)。なお、本適用除外を受ける場合でも、GloBE情報申告の作成などは必要である。

  1. デミニマステスト - 国・地域のCbCR上の収入金額1,000万ユーロ未満、かつ税引前利益100万ユーロ未満(損失を含む)であること。
  2. 簡易ETR(実効税率)テスト – 当該国・地域でのETRが経過措置税率(transition rate)以上であること。簡易ETRは、法人税等の簡易対象税額(多国籍企業の財務諸表で報告される法人税等から、対象税額とならないものや、不確実な税務ポジションに関連する税額を控除)を、多国籍企業グループのCbCRで報告される税引前利益(損失)で除して計算する。経過措置税率は、2023年および2024年開始事業年度は15%、2025年開始事業年度は16%、2026年開始事業年度は17%である。なお、関連会社などを含むグループ内配当の除外が十分でない点や、財務諸表未計上の対象税額が考慮されない点など留意が必要である。
  3. ルーティン利得テスト - 国・地域の税引前利益(損失)が、CbCR上での当該国・地域の諸居住構成事業体に係る、GloBEルールによって計算された実質ベースの所得除外額(SBIE)以下であること。なお、この場合、モデルルール第4.1.5条の追加当期トップアップ税額も生じない。

    (注2)令和5年度税制改正大綱(2022年12月23日に閣議決定)上、「一定の国別報告事項における記載事項等を用いた経過的な適用免除基準を措置するほか、所要の措置を講ずる」としている。

    (注3)モデルルール第9.1.3条の経過措置(GloBEルール適用前のグループ内資産移転による簿価ステップアップの防止措置)に関して、移行年度(ある国・地域において、多国籍企業グループがその国・地域のGloBEルールの適用対象となった最初の事業年度)が、本適用除外基準の適用を受けなくなる最初の年度となる可能性がある点、留意が必要である。

恒久的な簡易計算による適用免除基準の策定のための枠組み - 多国籍企業に対し、GloBEルールの下で必要とされる計算や調整の回数を減らすか、代替的な簡易な所得・収入・税額計算の実施を容認する。以下のいずれかを満たす場合、関連事業年度の最低課税額は零となる。

  1. ルーティン利得テスト – 国・地域の超過利得(即ち、SBIEを超える簡易措置所得)が零の場合。更に、(簡易所得計算を適用して)GloBE欠損の場合もこのテストを満たす。
  2. デミニマステスト - 上述の経過的な適用免除基準と同様であるが、平均値(注3)を使うこと、また簡易的ではあるものの、GloBEルールに従ったより複雑な計算が必要になる。

    (注3)令和5年度税制改正大綱(2022年12月23日に閣議決定)上、「対象会計年度及びその対象会計年度の直前の2対象会計年度に係るその特定多国籍企業グループ等の収入金額の平均額」及び「・・・利益又は損失の額の平均額」により計算するとされている。
  3. ETRテスト - GloBEルール同様ETRを計算(簡易な所得、収入、税額計算を使用して計算される可能性)。本テストでは、ETR15%以上の場合に満たされる。
    なお、重要性の低い構成事業体(NMCE)(規模または重要性のみを理由に多国籍企業グループの連結財務諸表上連結されていない多国籍企業グループのメンバー)(恒久的施設を含む)についても、簡易な所得および税額計算がある。NMCEの収入、所得および調整後対象税額は、関連するCbC規則、または国内のCbC規則がない場合はOECDのCbCRガイドラインを参照して算定される。
    これらの簡易計算に関して、今後合意された執行ガイダンスの公表が見込まれる。当該セーフハーバーの利用にあたり、多国籍企業グループは、一定の申告要件が求められる可能性がある。

経過的な罰則等の免除制度 – 経過的な期間中、GloBEルールの適用に関して合理的な措置を講じている多国籍企業については、GloBE情報申告に関連する罰則等を適用すべきでない旨が認識されている。なお、本免除措置は、各国政府の裁量で行われるものであり、多国間の手続きや審査の対象にはならない。

出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2023年2月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修