第2の柱 - 税の安定性の枠組みに係るコンサルテーションを公表(OECD)

2023-03-08

2022年12月20日、第2の柱のGloBEルールに係る税の安定性に関する公開協議文書(コメント期限:2023年2月3日)が公表された。OECDは、第2の柱のルールの複雑さ、および各国・地域間で生じる可能性のあるルールの解釈や適用の差異を考慮し、GloBEルールに係る税の安定性をさらに高めるためのメカニズムに係る検討作業を開始した。本協議文書では、GloBEルールの解釈や適用に関して、2以上の国・地域間で差異が生じる可能性があるケースにつき、コメントを募集した。なお、本文書はOECD事務局作業のみによるものであり、包摂的枠組み(IF)で未合意である。本文書では、課税事象の前(予防メカニズム)と後(紛争解決メカニズム)において、税の安定性を実現するための様々なメカニズムが説明されている。

予防メカニズム - GloBEモデルルール、コメンタリーおよび執行ガイダンスへの依拠(IIR(所得合算ルール)、UTPR(軽課税所得ルール)およびDMTT(国内ミニマム課税)適格性のレビュー(モデルルールの全章が対象)、および国・地域間の解釈や適用の差異に関するIFへの付託(その後、執行ガイダンスに取り込まれる可能性。なお、特定案件の課税論点や納税者情報は共有できない))、類似のリスク状況にある事案に係る共通リスク評価とコンプライアンスでの連携(国際的コンプライアンス確認プログラム(ICAP)類似のもの)、および拘束力のある安定性メカニズム(APA類似のもの)、が挙げられている。

紛争解決メカニズム - 既存MAPの枠組みを参照しつつ、それとは別個の紛争解決メカニズムを策定すること(安易な申請を避けるため、対象を限定することを想定)を挙げており、利用可能な手段として、4つの選択肢(1.多国間条約の策定(米国上院での可決可能性など、実現までのタイミングに課題。なお、UTPRのOECDモデル条約第7条(事業所得)への適合性や、UTPRに係る各国・地域の取扱いとOECDモデル条約第24条(無差別取扱い)との関連性などの論点に係る安定性についても議論の可能性がある)、2.税務行政執行共助条約(MAAC)に基づく当局間合意への依拠(新たに国内法で納税者に申請権を付与する可能性。なお、米国はMAACを批准しているものの、議定書は未だ批准していない)、3.既存の租税条約への依拠(新たにGloBE紛争解決を既存のMAP規定に含める可能性。ただ、OECDモデル条約第25条(相互協議)1項・3項に係る制限や、租税条約がないケースもある)、および4.国内法での紛争解決規定(互恵ベースでの適用。国内法の時効制限なし。反対している複数国あり)の創設、を提示している。このほか、EUレベルでは仲裁指令の適用範囲拡大も考えられるが、グローバルレベルでの解決はなお求められよう。

出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2023年2月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修