第1の柱 - 利益Bの公開協議草案を公表(OECD)

2023-03-08

2022年12月8日、OECDは、第1の柱・利益Bに関する公開協議文書を公表した(同日ウェビナー開催)。本文書では、利益B(基本的マーケティング・販売活動を行う関連者である販売業者に係る報酬の標準化が目的)の主な設計要素を示している。本文書では、国内での基本的マーケティング・販売取決めの意義、それらの実務上の特定方法、および適用対象となる取決めに係る独立企業原則(ALP)に沿った価格設定、に関する進展状況を概説している。また、追加作業分野を特定し、利害関係者の意見を募集した(2023年1月25日期限)。利益Bに関する作業は、第1の柱・利益Aに合わせ、2023年半ばまでに完了見込みである。なお、本文書で概説されている提案はOECD事務局作業のみによるものである(包摂的枠組み(IF)で未合意)。本文書によれば、利益Bは、OECD移転価格ガイドライン(TPG)に基づくALP適用簡素化・合理化措置、および適切な現地コンパラブル(比較対象)が入手困難な一定の国・地域(low capacity jurisdictions’(LCJs))の懸念への対処を意図している。本文書では、利益Bの4つの重要な設計要素、すなわち、1)適用範囲、2)取引価格設定方法、3)文書化要件、4)税の安定性、について意見を募集した(実施フレームワークは、利益Bの設計完了後に検討見込み)。本文書の第3章では、利益Bの適用範囲(定性的・定量的基準に基づき利益Bの適用対象となるグループ内取引)について概説している。売買取引のほか、代理店・コミッショネア契約も検討中である。なお、二国間・多国間APAの対象の場合は利益Bの適用除外となる(IFでは、コモディティー商品および無形商品(ソフトウェアやデジタル商品など)の除外も検討中)。第4章では、利益Bの取引価格設定方法(取引単位営業利益法(TNMM))を提示。なお、IFでは、適用除外(現地コンパラブルがあるケースやTNMMが最適法でない特定ケース(内部CUP(比準独立価格)があるケースなど))を検討中である。また、本文書では、一般的ベンチマーク検索基準に依拠すること、TNMM適用にあたって純利益指標(営業利益または売上利益)がしばしば使用されるが一部IFメンバーでは代替的純利益指標(すなわち、ベリーレシオや総資産利益率など)も検討されていること、計量経済分析の利用によって補完される可能性、について説明している。第5章は文書化要件(TPG第5章に準拠)、第6章は税の安定性(APAやMAPの有用性を認識。既存のMAP合意は利益Bに優先するが、継続中のMAP事案では利益Bのガイダンスを考慮すべき)、となっている。本文書によると、IFでは現在、利益B実施に係る様々な手段の適切性を評価しており、利益BのガイダンスはTPGに含まれる可能性がある。また、利益Bの強制性/選択制も検討中であるほか、利益Bの影響・効果を評価するため、国・地域での実際の適用情報を収集する仕組みの適切性も検討している。

出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2023年2月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修