第2の柱GloBE執行ガイダンス(第3弾)、および第1の柱の今後の予定を公表(OECD)

2024-03-13

2023年12月18日、OECD事務局は、第2の柱のグローバル税源浸食防止モデルルール(GloBEルール)の運用明確化を目的とした最新の執行ガイダンス(第3弾)を公表した。OECDによれば、本ガイダンスは、2023年2月(第1弾)と7月(第2弾)に公表されたガイダンスとともに、2024年に公表されるGloBEコメンタリーの改訂版に組み込まれる予定であるが、2024年1月1日から、多くの国々で第2の柱の施行が見込まれる。2024年には、様々な論点に関してさらなるガイダンスが公表される予定である。一方、第1の柱に関して声明(statement)を公表し、包摂的枠組み(IF)メンバーは、コンセンサスに基づき、多国間条約(MLC)の条文(テキスト)を2024年3月末までに最終決定し、2024年6月末までに署名式を行うというコミットメントを再確認するとしている(デジタルサービス税(DSTs)およびその他の関連する類似の措置に関する停止措置(2023年末に期限切れ)の延長にも言及している)。

第2の柱に係る本ガイダンスの主要な規定として、移行期間CbCR(国別報告)セーフハーバーに係る新たな裁定取引防止(anti-arbitrage)ルールが含まれている。本新規定は複雑で、詳細な検討が必要である。セーフハーバーの利用について、新たにいくつかの重要な制限が加わるとみられる。OECDによると、IFでは継続的に追加執行ガイダンスを作成予定としている。次のガイダンスは2024年前半に公表予定であり、繰延税金負債に係るリキャプチャールールの適用や、CFC(外国子会社)合算税制などのクロスボーダー課税に関連する繰延税金の配分に係るガイダンスが含まれる予定である。なお、ルールの適格性を判定するピアレビューの詳細については公表されていないが、しっかりとした透明性あるピアレビューを実施するとともに、執行の枠組みと紛争解決メカニズムに関する作業を継続するとしている。

移行期間CbCRセーフハーバーに係る追加ガイダンス

CbCRセーフハーバーにより、多国籍企業は、一定の条件とテストに従い、限られた期間、実効税率(ETR)を算定するために国別報告書(CbCR)データの使用が認められている。本ガイダンスでは、CbCRセーフハーバーの適用についてさらに明確化し、データの一貫した使用や、適格CbCRの要件(パーチェス法の調整がある場合を含む)について言及している。本ガイダンスでは、検証対象となる国・地域(注1)と、事業体に係る簡素な対象租税の一部に含められる税額を明確化(注2)し、また通常利益テスト適用の際に使用する率(経過措置を適用)についても触れている。なお、本ガイダンスによれば、CbCRセーフハーバーの適用上、適格財務諸表データに反映されていない期末日後の調整(移転価格調整など)は認められないとしており留意が必要である(多くの多国籍企業は、通常このような期末日後の調整を反映する「実際の」数値を使用してCbCRを作成しているとみられる)。CbCRセーフハーバーに係るガイダンスの中で、最も重要な点の一つとして、財務情報の元データの違いや税務と財務会計の取扱いの違いから生じる「ハイブリッド裁定取引取決め」(控除/非算入、重複損失、重複租税認識)の取扱いがある(実際にハイブリッド商品やアレンジメントであるかは問わない)。本ガイダンスでは、一般的に、ハイブリッド裁定取引取決めの各当事者が当該取引を同様に取り扱うという前提でCbCRセーフハーバーの適格性を判断するとしている。2022年12月15日(当初のセーフハーバールールのIF承認日。なお、憲法上の理由などがある場合は2023年12月18日(本執行ガイダンスの公表日)も可)後に締結されたハイブリッド裁定取引取決め(それ以前に締結された取決めの軽微な変更を含む)によりセーフハーバーが認められなくなること、控除/非算入取引の定義が非常に広範であること(貸付費用/投資損失に対応する収益/所得認識が求められる)、本店での控除損失について外国支店での控除は認められないこと、控除否認額に対応する税額(計算式の分子)を考慮しないこと(ETR低下となる)にも留意が必要である。なお、ハイブリッド裁定取引取決めに関しては、別途のガイダンスの公表が見込まれる。

(注1)各JV(グループ)は個別判定となる。

(注2)簡素なETRテストにおいては、GloBEに係る調整(CFC合算税制に係る税額等の配分など)は求められず(恒久的施設(PE)の税額はPEのみに配分)、また、CFC等所在地国・地域でCbCRセーフハーバーの適用がない場合においても、構成事業体所有者の居住地国・地域におけるCFC税額等の配分は求められない。

GloBEルールの適用に関する執行ガイダンス

本ガイダンスでは、7億5千万万ユーロの閾値における収入の定義、最終親事業体(UPE)と異なる会計年度または異なる課税年度を有する構成事業体の取扱い、および課税年度と異なる会計年度を有する構成事業体の取扱いについて言及している。また、特定の取引による総額を財務諸表に計上しない可能性のある金融事業体は、UPEの財務会計基準における収入に類似した項目を検討すべきとしている。

Blended CFC税制(米国GILTIなど)の下でのCFC税額の配分に関する追加執行ガイダンス

Blended CFC税制の下でのCFC税額の各事業体への配分に係る配分キー(事業体の帰属所得×(CFC税制の適用税率-各国・地域のETR)の算定上、CbCRセーフハーバー適用の場合は当該国・地域に係る簡素なETRを使用し、QDMTT(適格国内ミニマムトップアップ税)セーフハーバー適用の場合は当該国・地域のQDMTTに従って当該国・地域のETRの算定に使用された税額と所得に基づいて算定する、としている。

申告・届出義務

GloBEルールでは、申告・届出期限を移行年度である報告対象会計年度終了後18か月に延長している。本執行ガイダンスでは、いかなる会計年度についても、申告・届出義務の期限は2026年6月30日前であってはならないとしている(一部の国(例えばベルギー)で、IIRやQDMTTの報告期限の見直しが求められる可能性がある)。

非重要構成事業体(NMCE)の簡易計算セーフハーバー

本ガイダンスでは、簡易計算セーフハーバーの枠組みの一部として、NMCEに係る簡易所得、収入、税額計算を規定している。(注3)

(注3)事業体毎の年次選択であり、GloBE所得および収入を関連CbC規則における総収入(Total Revenue)と同額と扱い、調整後対象租税を関連CbC規則における発生税額(繰延税金などは考慮しない)と同額と扱う。

出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2024年2月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修