第1の柱(利益A)採掘業の除外に関するパブリックコンサルテーション文書の公表(OECD)

2022-07-07

2022年4月14日、OECDは、第1の柱(利益A)採掘業の除外に関するパブリックコンサルテーション(公開協議)文書を公表した(2022年4月29日までコメント募集)。これは、第1の柱(利益A)に関する一連のコンサルテーションの第4回である(第1回はレベニューソーシングとネクサス、第2回は課税ベースの算定(いずれも、本誌4月号参照)、第3回は適用範囲(本誌5月号参照))。規制対象金融サービスの適用範囲除外(注)、および開示セグメントに対する利益A適用のルールについては、後日公表)。現時点では、これらのルール案はOECD事務局の作業によるものであり、包摂的枠組み(IF)ではまだ承認されていないため、協議プロセスと関係なく、変更される可能性があるとしている。本文書では、デジタル経済に関するタスクフォース(TFDE)で検討中のいくつかの未解決課題を具体的に特定し、利害関係者からの意見を募集した。今後、多くの技術的項目に関する詳細コメンタリーの公表が見込まれる。

採掘業の除外は、利益Aの範囲から「採掘活動」による利得を除外することを目的としている。本文書では、グループが、「採掘産品」の販売売上を得ており、かつ、関連する「探鉱(Exploration)、開発(Development)または採掘(Extraction)」を行う場合に、本除外が適用されるとしている。採掘活動の定義には、「産品テスト」と「活動テスト」の2つが含まれ、いずれも満たす必要がある。たとえば、商品取引のみからの売上(関連する採掘活動を行わず)、または採掘サービスのみ(採掘産品を所有せず)を行うことによる売上は、本除外の対象とならない。

本文書では、採掘業の除外の対象となるグループが、利益Aを適用するために従うこととなるであろう、7つのステップを示している(ステップ2および3は、採掘業の除外に特有)。


ステップ1 - 連結ベース/開示セグメントに、一般的スコープルール(2百億ユーロのグローバル売上閾値、および10%の収益率閾値)を適用

ステップ2 - 適格な採掘活動に関連する(第三者)売上を特定・カーブアウトし、残りの適用対象売上に2百億ユーロのグローバル売上閾値を再適用

ステップ3 - 適格な採掘活動に関連する利得を分離・カーブアウトし、適用対象利得に10%の収益率閾値を再適用

ステップ4 - 適用対象売上に、レベニューソーシングおよびネクサスルールを適用

ステップ5 – 適用対象売上の課税ベース算定、および利得配分ルール適用(マーケティング・販売利得セーフハーバー(MDSH)を含め、採掘業の除外利得は考慮されない)

ステップ6 – 二重課税排除のメカニズムを適用(採掘業の除外利得は考慮されない)

ステップ7 – 執行・報告上の必要文書の提出(税の安定性プロセス)

本文書では、特に売上の閾値を超えているが、適用対象の利益率が一貫して10%の閾値を下回っているグループにおける採掘業除外の適用簡素化について検討中であり、また、グループがこれらのルールに準拠するようシステム改修を行う間、初期的な移行期間が必要か検討するとしている。

ステップ2および3の詳細は以下のとおりである。

ステップ2

  1. 採掘活動(採掘産品の販売、および探鉱、開発または採掘)を特定
  2. 一定時点(Delineation Point)において生じる(とみなされる)第三者売上(又はその指標)を特定。なお、一定時点とは、採掘活動の境界点(boundary)であり、以下のいずれか最も早い時点となる
    a.採掘産品の独立した者(グループの所有持分が25%未満の事業体)への販売
    b.採掘産品のクロスボーダーのグループ内移転(近接している場合の例外あり)
    c.採掘産品について、一定の国際的に認められた参照価格が存在 - その参照価格に採掘産品の量を乗じて計算
  3. 採掘産品の第三者販売売上を控除し、グローバル売上閾値を再適用。(上述の一定時点前の)第三者採掘産品販売売上がない場合は、ステップ2を飛ばして、ステップ3へ

ステップ3

  1. 開示された事業セグメント(DOS)アプローチ(適用可能な場合):
  2. 除外売上額の算定に、上述ステップ2の一定時点を適用
    優越性(Predominance)テストの適用:
    除外セグメント:除外売上(第三者売上、グループ内売上、みなし売上を含む)が[75%-85%](未合意)で、適用対象売上が10億ユーロ未満(未合意)のセグメント
    • 対象セグメント:適用対象売上が[75%-85%](未合意)のセグメント(指標アプローチ)
    • 未配賦コストの配賦(客観的な基準を使用(本文書で特定なし))
    • セグメント全体の利益率が10%超の場合、除外売上控除後の適用対象売上に、セグメント利益率を乗じて、適用対象利得を計算
  3. 優越性テストの適用がない場合、混合セグメントアプローチを適用:
    • 未配賦コストの配賦
    • セグメント内調整:コストを、セグメント内の適用対象売上および除外売上に配賦
    • 適用対象利得を計算

事業体レベルアプローチ(DOSが適用されない場合):一般に、上述のDOSアプローチと同じ原則に従うが、セグメントでなく、事業体レベルでの適用となる

a.除外売上が[75%-85%](未合意)で、適用対象売上が10億ユーロ未満の事業体は、除外
b.a.で除外されない場合、その事業体は、適用対象となり、除外売上(上述の一定時点で判定)を控除して、事業体レベルの適用対象売上を計算
c.適用対象事業体を特定の連結セグメントに統合し、費用を適用対象売上に配賦して適用対象利得を算定、10%の利益率閾値を再適用

ステップ3では、グループ内売上の特定、およびコスト配賦が必要となるため、ステップ2より複雑で、適用範囲の平均化メカニズムや損失の繰り越しルールによりさらに複雑になるとしている。なお、上述の事業体レベルアプローチは、規制対象の金融サービスの除外にも同様に適用可能と思われる。

(注)2022年5月6日、OECDは、第1の柱(利益A)規制金融サービスの適用除外に関するパブリックコンサルテーション(公開協議)文書を公表した(2022年5月20日までコメント募集)。現時点では、これらのルール案はOECD事務局の作業によるものであり、包摂的枠組(IF)ではまだ承認されておらず、今後も変更の可能性があるとしている。本文書では、デジタル経済に関するタスクフォース(TFDE)で検討中のいくつかの未解決課題を具体的に特定し、利害関係者からの意見を募集した。今後、多くの技術的項目に関する詳細コメンタリーの公表が見込まれる。
規制金融サービスの適用除外では、利益Aの範囲から、規制金融機関(RFI)のレベニュー(収益)および利得を、事業体単位を活用して除外する。このセクターの特徴は、リスクベースの自己資本比率規制という、独自規制があることである。本適用除外は、その要件に依拠している(特定の資本措置の対象となる事業体のみ、利益Aから除外)。一般的に利得の場所をマーケットに整合させるのはこの規制によることとなる。
本文書で定義されている規制金融機関には、1. 預金機関(事業体の対象期間末の負債の[20%](未合意)以上が預金等)、2. 住宅ローン機関(事業体の対象期間のレベニューの[75%](未合意)以上が信用供与)、3. 投資機関(事業体の対象期間のレベニューの[75%](未合意)以上が、一定の証券業(保管機関、投資銀行、投資会社、ブローカー/ディーラーなど))、4. 保険機関(事業体の対象期間のレベニューの[75%](未合意)超、または対象期間末の総資産価値の[75%](未合意)超が、一定の保険(再保険を含む)・年金契約等関係)、5. アセット・マネージャー(事業体の対象期間のレベニューの[75%]以上が一定の投資運用業(広範なものが含まれることが今後のコメンタリーで示される予定))、および6. 混合金融機関(上述1、3、4、5のいずれかの許認可事業を行い、3、4、または5のレベニューが[75%](未合意)以上)、の6タイプがある(なお、対象活動期間のレベニューの相当部分([50%以上](未合意))がグループ内でないことを求めており、グループ内の財務センター(キャプティブ保険、金融センター)は適用除外にならないことが今後のコメンタリーで示される予定)。また、規制金融機関の機能を排他的に履行する限定タイプの100%グループ内サービス事業体(RFIサービス事業体)(典型的にはコストプラスの限定的な管理業務を想定、今後のコメンタリーで例示予定)も加えて、7つになる。上述の規制金融機関の各タイプの定義には、通常①許認可要件(各国・地域の活動状況で判定(支店レベルでの判定、他法域の同等制度に基づく許認可も考慮の可能性))、②規制資本要件(「実効的な銀行監督のためのコアとなる諸原則」など(事業体毎のリスクを考慮))、および③活動要件(上述各タイプの要件)の3つの要素があり、これらすべてを満たす場合、事業体のレベニューおよび利得は、利益Aから完全に除外される。なお、これはIFで最終コンセンサスを得た見解でなく、一部のメンバーは、再保険とアセット・マネジメントを利益Aから除外すべきでないとしている点に留意が必要である。
本文書では、規制金融サービスの適用除外の対象となるグループが、利益Aを適用するために従うこととなるであろう、7つのステップを示している(ステップ2および3は、規制金融サービスの適用除外に特有)。
ステップ1 - 連結ベース/開示セグメントに、一般的スコープルール(2百億ユーロのグローバル売上閾値、および10%の収益率閾値)を適用
ステップ2 – 適用対象となる(規制金融サービス事業体以外の各事業体による第三者に係る)レベニューに2百億ユーロのグローバル売上閾値を再適用。なお、簡素化として、グループ最大規模(複数可)の規制金融機関の第三者レベニューを除外して判定、また、対象事業体のレベニュー(グループ内を含む)を累積で判定、という2方法を示している。
ステップ3 – 規制金融サービス(事業体単位)の利得を分離(トップダウン/ボトムアップアプローチ)し、適用対象利得に10%の収益率閾値を再適用(本適用除外が適用されないみなしセグメントは、本適用除外となるみなしセグメントとのグループ内取引に係るレベニューおよびコストを、独立企業原則に基づき認識)
ステップ4 - 適用対象レベニューに、レベニューソーシングおよびネクサスルールを適用
ステップ5 – 適用対象レベニューの課税ベース算定、および利得配分ルール適用(マーケティング・販売利得セーフハーバー(MDSH)の適用上、規制金融サービスの適用除外となる利得は考慮されない)
ステップ6 – 二重課税排除のメカニズムを適用(規制金融サービスの除外利得は考慮されない)
ステップ7 – 執行・報告上の必要文書の提出(税の安定性プロセス)
本文書では、特にレベニューの閾値を超えているが、適用対象の利益率が一貫して10%の閾値を下回っているグループにおける規制金融サービスの適用除外の簡素化について検討中としている。

出典:OECD website / PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2022年6月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修