第2の柱のコメンタリーを公表、実施フレームワークに関するパブリックコンサルテーションを開始(OECD(1))

2022-06-07

2022年3月14日、OECDは、第2の柱のモデルルールのコメンタリーと事例集を公表した(注)。本コメンタリーは、モデルルールの解釈と適用に関するガイダンスを示し、モデルルールの一貫した解釈を促し、税務当局と多国籍企業グループ双方にとって協調的な結果を促進することを意図している。

(注)本コメンタリーは包摂的枠組み(IF)で承認されているが、事例集はOECD事務局による公表であり、コメンタリーの一部を構成しないとしている(将来、追加事例の作成・公表の可能性)

本コメンタリーでは、以下を含む、モデルルールで未解決の問題を扱っている。

  • UTPR(軽課税利得ルール)トップアップ税額を徴収する構成事業体/国地域と、トップアップ税額が生じる軽課税構成事業体/国地域の間に、関連性や取引(例えば、控除可能対象支払い)がなくてもよい(税額徴収に係る調整方法はUTPR適用国地域の国内法に委ねられる)という立場を補強
    参考)モデルルール第2.5.3条に関し、IIR(所得合算ルール)が軽課税構成事業体(LTCE)に係るトップアップ税の一部に適用されることとなる場合に、UTPRはトップアップ税総額から当該IIR税を控除した額に適用されることから、結果として少数株主持分もUTPR対象になる可能性(簡素化の観点。例示2.5.3–1参照)
  • トップアップ税率への繰延税金調整総額の切下げ(第4.4.1条)、所得がない年のトップアップ税の可能性(第4.1.5条)の規定に変更なし(注)
    (注)本コメンタリーでは、第1の柱で課税ベースについて提案されているような、GloBEルール導入前に生じた欠損金の利用期限は規定されていない。なお、移行規定(第9.1.3条 – 第2の柱回避防止規定)について、例えば買収後のグループ内統合プロセス等、2021年11月30日後、移行年度(ある国・地域において、多国籍企業グループがその国・地域のGloBEルールの適用範囲に入った最初の事業年度)開始前について、第2の柱の目的上、資産(棚卸資産を除く)は簿価移転となる
  • 適格IIRとみなされない条件として、IIRで支払った税金の一部に相当する税額控除を他の税金に充当することを具体的に例示
  • 実施フレームワーク(年内に策定予定)には、各国が適格IIRを導入したかどうかを税務当局(注)が判断するのを支援するプロセスの実施が含まれることに言及(これらの事後判断の結果は公表見込み)
    (注)EUミニマム課税指令案では、各国地域の税制が適格IIRとなるかどうかの判定権限を欧州委員会または欧州理事会(全会一致)に付託することを検討中
  • 適格還付可能税額控除の定義を拡大し、適格税額控除と非適格税額控除の扱いの違いを明確化(非適格の税制優遇措置や税額控除の利用により、対象税額が減少し、最終的に最終親事業体の本国での実効税率が15%未満となり、UTPR適用のきっかけとなる可能性がある)

また、2022年3月14日には、GloBE(IIRおよびUTPR)実施フレームワークに関するパブリックコンサルテーションが開始された。モデルルールの執行(追加執行ガイダンス)、運用(申告、報告制度を含む情報収集、記録保存)、コンプライアンスコスト削減(簡素化・セーフハーバー(実効税率等の計算免除 - 例:適格国内ミニマムトップアップ税の対象国の場合)、ルール調整(税の安定性、二重課税回避)に関する様々な問題について、利害関係者の意見が求められている(提出期限は、2022年4月11日。4月25日にパブリックコンサルテーション)。

出典:Tax Policy Bulletin
「月刊 国際税務」2022年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修