第1の柱の適用範囲に関する国内法のモデルルール案のパブリックコンサルテーションを開始(OECD(2))

2022-06-07

2022年4月4日、OECDは、第1の柱の利益Aの適用範囲に関する国内法のモデルルール案を公表した(2022年4月20日までコメント募集)。これは、第1の柱(利益A)に関する一連のコンサルテーションの第3回である(第1回はレベニューソーシングとネクサス、第2回は課税ベースの算定、(いずれも、本誌4月号参照))。本適用範囲に関するルールでは、グループが、利益Aの適用範囲となる場合についての判定がなされる(採掘業・規制対象金融サービスの適用範囲除外、および開示セグメントに対する利益A適用のルールについては、後日公表)。なお、現時点で、包摂的枠組み(IF)では、これらのルール案に同意しておらず、OECD事務局の作業となっている(協議プロセスと関係なく、変更の可能性あり)。本協議文書では、デジタル経済に関するタスクフォース(TFDE)が調査中のいくつかの未解決問題を具体的に特定し、利害関係者からの意見を募集している(第2回の課税ベースの算定に関するルール案の公表以降に修正された、いくつかの用語定義も確認)。

本協議文書では、TFDEが、4つの個別に関連する正式文書(多国間協定(MLC)とその説明文書、および国内法モデルルールと関連コメンタリー)を作成中としている。適用範囲に関するモデルルール(スコープルール)案では、事業者が利益Aの適用範囲となるかどうかを判定するため、2つの閾値テストを導入する。

第1のテストは、グローバル売上テストで、事業者は、(グループ最終親事業体(UPE)の連結財務諸表の)対象期間のグループの総売上が2百億ユーロ(12か月未満の場合は比例配分)超かを判定する(TFDEが通貨変動に関連する調整問題を調査中)。なお、総売上は、適格財務会計基準(QFAS)に従って作成されたグループの連結財務諸表で報告された売上に、配当、資本損益、修正再表示、および除外事業体の売上の調整を加え、持分法の合弁事業(JV)売上のグループ持分を加えて調整する必要がある(なお、QFASの利用について、明らかに閾値未満となるグループに不均衡な実務負担とならないよう、重要性の閾値を提案、利害関係者の意見を募集)。本協議文書によると、TFDEは、10%超の収益性テスト(後述)同様の平均化メカニズムと前期間テストを、本グローバル売上テストにも導入するか検討している。なお、2021年10月のIFの声明では、利益Aに係る税の安定性を含む実施の成功を条件に、売上の閾値を1百億ユーロに引き下げる予定である(協定発効7年後にレビュー開始、1年以内に完了)。

第2のテストは、3つの収益性テストであり、事業者が、総売上に対し、一貫して10%超の収益性(税引前利益率)を稼得しているかどうかを判定するよう設計されている。本スコープルールでは、グループの収益性は、現在の期間(期間テスト)だけでなく、前4期間のうち少なくとも2期間(前期間テスト)、また、それら4期間と現在の期間の平均(平均テスト)でも、10%の閾値を超えている必要がある(中立性と安定性の観点)。この前期間テストと平均テストは、毎年継続的に適用されることを求めている一方、これをエントリーテストとしてのみ適用し、一度満たされると後続期間には適用されなくなくなる(特別損失の複数期間への影響を排除する観点)こともTFDEで議論中であり、意見を求めている。このほか、本スコープルールには、グループの合併/分割が行われた場合の前期間テストと平均テストの適用に係る規定(財務データの遡及的再計算を求めず、既存の連結財務諸表の財務データを利用するように設計)が含まれている。

本スコープルールは、利益Aの一般的な設計に従って、グループレベルでの適用を目的としている。グループの概念は、財務会計基準に従って連結財務諸表を通常作成するUPEを参照して定義される。このグループの定義は、第2の柱のGloBEルールの目的で使用される定義よりも狭いと思われる(GloBEの場合、グループには、特定状況で連結財務諸表から除外される事業体も含まれる)。本スコープルールには、UPEを定義するための標準化されたアプローチを保証するため、特定事業体をUPEにすることはできないという少数の例外が含まれる。本ルールはまた、除外事業体、投資ファンド、または不動産投資ビークル所有のグループUPEが、スコープルール(グローバル売上テスト)回避のリストラクチャリングを行うことを防止するため、濫用(細分化)防止規定(主要目的テスト)を導入する(TFDEで、様々な要件(執行を含め)を議論中。コメンタリーで解説予定。祖父条項の適用期限は、早ければ本協議文書の公表日となる可能性)。

本スコープルールには、グループの連結財務諸表で報告される開示セグメントに適用される例外的スコーピングルールのプレースホルダーが含まれる。これらのルールは、グループ全体では上述の売上および収益性の閾値を満たさないが、開示セグメント単独でこれらの閾値を満たすような、限られた状況で、利益Aの対象範囲になる。

2021年10月のIFの声明に合わせ、本スコープルールには、採掘業と規制対象金融サービスの除外が含まれているが、これらの詳細は、今後のモデルルールで明確にされる。本除外は、除外活動から生じる売上と利得に適用される。グローバル売上テストと収益性テストは、これらを除いて適用する必要があり、除外後の両テストにおいていずれかの閾値を下回った場合、利益Aの範囲対象とはならない。なお、本スコープルールでは、採掘業・規制対象金融サービスに加え、特定の事業体を利益Aから除外する。特に、グループおよびグループ事業体の定義は、政府機関、国際組織、非営利組織、年金基金、特定の投資および不動産投資ファンド、およびその価値の95%以上がこれら除外事業体の1つにより所有されている事業体を含み、除外事業体を明確に除外している(第2の柱GloBEルールで採用されているアプローチと一致)。

出典:Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2022年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修