2021-12-06
2021年10月8日、BEPSに関するOECDの包摂的枠組み(IF)の参加140か国・地域のうち136か国・地域が、国際的な法人税制度の抜本的な見直しに政治的に合意した。本合意には、7月の取決めに留保を表明したアイルランド、ハンガリー、エストニア、バルバドス、ペルーが含まれる。一方、7月の合意に署名したパキスタンは、本合意への支持を撤回した。IFメンバーの他の3か国(ナイジェリア、ケニア、スリランカ)はいまだ本合意に署名していない。また、IFメンバー国でないキプロスは以前、EU加盟27か国で唯一反対を表明している。なお、本合意では、第1の柱および第2の柱双方の実施に関して、いくつかの選択肢を認めている。
第1の柱では、一定の多国籍企業(MNE)の連結利得の定式的なシェアが、(売上が生じる)市場に配分される。第1の柱は、利益率(税引前利益/売上)10%超で、グローバルの売上が200億ユーロ超のMNEに適用される。市場に再配分される利得は、売上の10%を超える税引前利益の25%として計算される。なお、採掘産業および規制された金融サービス業は、引き続き、第1の柱の利益Aの適用対象から除外されている。
第2の柱/GloBEルールでは、IFメンバー国・地域は、15%のミニマム実効税率(ETR)で法域レベルのミニマム税制を制定することに同意した。グローバルの売上が7億5千万ユーロ超の法人は、第2の柱の対象であり、本拠のある法域には、より小規模な国内MNEsに規定を適用する選択肢が維持されている。MNEグループの最終親事業体(UPE)である年金基金/投資ファンド、あるいはこれらの事業体・組織・基金により使用される保有ヴィークルは、GloBEルールからの対象外とできる。さまざまな国際海運サービスもGloBEルールから除外される。各国はまた、GloBEルールのいくつかのカーブアウトに合意した。なお、GloBEルールは共通アプローチであり、ミニマムスタンダードではない。IFの声明では、引き続き、第1の柱と第2の柱の双方について、2023年に発効(第1の柱の多国間協定は2022年に策定・署名のために開放、第2の柱の法律は2022年に各国国内法で手当て)としている。
本声明は、7月1日の政治的合意(本誌2021年8月号参照)を強化し、今後数か月の重要な技術的詳細に関する作業の方向性を示している。なお、7月公表のIF声明について、本声明で追加の技術的な詳細はほとんど公表されていない。7月の暫定合意の公表以降の重要な変更点には、以下が含まれる。
* 有形資産の簿価と給与の一定率(10年間の移行期間の後、5%)
有形資産の簿価は当初8%、5年間で0.2%ずつ減少し(7%になり)、その後、年間0.4%ずつ減少
給与は当初10%、5年間で0.2%ずつ減少し(9%になり)、その後、年間0.8%ずつ減少
なお、本合意では、GloBEのモデルルール**やSTTRのモデル条約(およびコメンタリー)を2021年11月末までに策定予定としている。
** ETR(実効税率)の計算も含まれる(本合意では、現行の分配に係る税制との関連において、利益が4年以内(7月時点では、3-4年以内)に分配され、ミニマムレベル以上で課税されれば、トップアップ税の租税債務はないとされている)
(注)アイルランドの2021年10月12日の予算演説の中で、Donohoe財務大臣は、本合意を受け、グローバル売上7億5千万ユーロ超の 「大」法人に対し、最低実効法人税率15%を導入する意向である旨コメントしている(PwC, Latest digital tax byte)
出典:OECD
「月刊 国際税務」 2021年11月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修