連邦予算(オーストラリア)

2023-01-12

2022年10月25日、連邦予算が公表された。本予算に含まれる税制改正と歳出措置には、過少資本税制の改正案、無形資産に係るクロスボーダー特定支払いの損金算入制限、多国籍企業グループに対する透明性義務の強化、オーストラリア税務当局(ATO)が多国籍企業グループを対象としたコンプライアンス活動を行うための予算増額などが含まれる。これらは、一般的に2023年7月1日以後開始する課税年度、または2023年7月1日以後に行われる支払いに適用されよう(これらの措置の発効日前に、法律案および継続協議が見込まれる)。なお、OECD第1の柱・第2の柱について更なる詳細は示されなかったものの、これらのプロセスへの継続的関与を再確認しており、最終的にこれらの措置を採用する可能性がある。

過少資本税制の改正

主な改正には、以下が含まれる。

  • 負債関連の控除をEBITDAの30%に制限する利益ベースのテストが導入されよう(現行のバランスシートベースのセーフハーバー方式では、負債が調整純資産の60%超の場合に広く利子控除制限)。本新方式では、事業体レベルでのEBITDAテストによる控除否認額は、15年までの繰越控除が可能となる(現在は繰越控除不可)。
  • 現行の独立企業間負債テスト(ALDT)は、事業体の外部(第三者)負債にのみ適用する、より制限的な代用テストに置き換えられよう(現在は、セーフハーバー方式に対する代替テストとして機能し、資本構成が独立企業ベースである限り、(関連者/外部いずれの負債であれ)負債控除を認めている)。
  • 現行のワールドワイド・ギアリング・テストは、利益ベースのグループ比率に置き換えられ、負債控除は、グループ全体の純利子費用のレベル(利益の割合としてのもの)まで認められよう(現行は、オーストラリア企業の負債資本比率をグループ全体のレベルまで広く認容)。

なお、現在の過少資本税制の下で金融機関に分類される事業体は、今次税制改正の影響を受けず、引き続き現行の特定制度を利用することになろう。
本改正は、2023年7月1日以後開始年度(事業年度が暦年の場合は、2024年1月1日以後開始年度)から適用されよう。

低税率または無税の国・地域で保有する無形資産に係る支払控除否認

本予算では、低税率または無税の国・地域で保有する無形資産に係る特定支払控除否認という提案措置に関して、さらなるガイダンスを示している。本措置はまだ立法化されておらず、多くの不明点はあるが、詳細が追加されている。
本予算によれば、本規定は、大規模(連結会計収入10億豪ドル)グローバル企業にのみ適用されよう。また、本規定は、関連者間の支払いにのみ適用されよう。低税率または無税の法域という概念は、税率15%未満(法定税率で判定の可能性)、または十分な経済実体を伴わない税制優遇となるパテントボックス制度を有する国・地域と定義されている。
本予算によれば、本措置は、2023年7月1日以後の支払いに適用されよう。

透明性への取り組み

本予算によれば、大規模グローバル企業である多国籍企業は、ATOによる開示のため、国別の特定税務情報および税務へのアプローチに関するステートメントを作成する必要があるとしている。本措置は、多国籍企業の本拠がオーストラリアにあるかどうかにかかわらず適用されよう。

ATO関連の支出

本予算では、2022-23年からの4年間にわたり、ATOの租税回避タスクフォースに対して11億4千万豪ドルの追加支出を行う。本追加支出は、ATOによる継続的な多国籍企業への取り組みを補完し、検出されたビジネスリスクに係る新たな優先分野の追求を支援するもので、2022-23年からの4年間で28億豪ドルの税収増を見込んでいる。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2022年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修