2024年予算(シンガポール)

2024-05-13

2024年2月16日、ローレンス・ウォン副首相兼財務大臣は、国会で2024年予算声明を公表した。事業関連の主な措置として、以下が含まれる(ほかに、中小企業向けの支援措置などもある)。

第2の柱のトップアップ税 - 2023年予算で第2の柱・トップアップ税導入の意向を表明したことを受け、第2の柱の所得合算ルール(IIR)と国内トップアップ税(DTT)を、2025年1月1日以後に開始する会計年度から対象事業者に対して導入する旨を公表した(軽課税利得ルール(UTPR)は、各国・地域の導入状況を踏まえ、追って検討)。

還付可能投資税額控除 - 第2の柱トップアップ課税への対応として、新たな還付可能投資税額控除(RIC)制度を提案している。RICは、還付可能な現金給付型の税額控除で、当該税額控除の適用要件を満たしてから4年以内に、法人税額からの控除または現金での還付が利用できるものである。RICは、経済開発庁(EDB)および企業庁により、個別に承認される。RICの額は、適格期間中に適格活動にかかった支出の最大50%まで(申請された適格活動の内容により異なる)となる。RIC適格となる活動の例として、新たな生産能力への投資(製造工場の新設、低炭素エネルギー生産など)、デジタルサービス・専門サービス・サプライチェーンマネジメントに係る活動範囲の拡大/設置、本社活動/センター・オブ・エクセレンス(CoE)の拡大/設置、コモディティー商社活動の開始/拡大、研究開発(R&D)・イノベーション活動の実施、脱炭素化を目的とした解決策の実施、が含まれる。また、プロジェクトの種類にもよるが、適格支出として、資本的支出(建物、土木、構造工事、工場、機械、ソフトウェアなど)、人件費、研修費、専門家報酬、無形資産費用、シンガポールでの業務委託費、資材・消耗品、運賃・物流費、が含まれる可能性がある。なお、本制度と既存制度との重複適用はできない(たとえば、RICの適用を受ける部分について、資本控除を重ねて受けることはできない)とみられるため、留意が必要である。本制度の詳細は、2024年第3四半期までに、EDBと企業庁から公表見込みである。

海運企業に対する代替的な純トン数税制 - 2024賦課年度(YA)より、海運分野インセンティブ(MSI: Maritime Sector Incentive)制度に関して、適格海運企業の適格所得に対して、その船舶の純トン数を参照して課税する代替的な課税ベースが利用できるようになる。本代替課税の適用を受けないMSI 事業体には、現行税制が引き続き適用される。課税ベースの詳細などは現時点で不明だが、本税制は、従業員数や現地での事業支出などの経済的コミットメントに対する要件が比較的軽い、他国で多く適用されているトン数税制を参照すると見込まれる。関係当局は、2024年第3四半期までにその詳細を公表見込みである(なお、2024賦課年度の申告期限は、2024年11月30日)。

資産・財産管理に係る税制優遇措置の強化 - 2024年予算において、資産・財産管理(マネジメント)業界に影響を与える3つの重要な改正(sections 13D・13O・13U制度を2029年12月31日まで5年間延長、section 13O制度の強化、sections 13D・13O・13U制度の経済要件に係る改正)を提案しており、詳細は2024年第3四半期までに金融管理局(MAS)から公表見込みである。全体として、2024年予算では、sections 13D・13O・13U制度の延長に加え、シンガポールで登録されたリミテッド・パートナーシップ・ファンドもsection 13O制度の対象とする(現在は、シンガポール法人(非公開有限会社または可変資本会社)に限られる)など、関連業界に前向きな改正を提案している。

その他の優遇措置関連

以下の税制優遇措置に関して、2024年2月17日より、追加的な法人軽減税率が導入される。

  • 「Global Trader Programme」、「Development and Expansion Incentive」、「Intellectual Property Development Incentive」について、現在の5%/10%に加え、15%の税率を追加
  • 「Finance and Treasury Centre Incentive」、「Aircraft Leasing Scheme」について、現在の8%に加え、10%の税率を追加

出典:PwC Singapore
「月刊 国際税務」2024年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修