デジタルサービス税および金融取引税法の公表(スペイン)

2020-12-05

2020年10月16日、デジタルサービス税および金融取引税法が、官報(Official Gazette)で公表された。いずれの法律も、2021年1月16日に発効する。

デジタルサービス税

スペインは、最近、デジタル経済への課税のためのユニラテラルの暫定措置(10月15日付法律4/2020)を可決した。EU(欧州連合)またはOECDがグローバル・コンセンサスに達するまで効力を有すると見込まれる。
スペインのデジタルサービス税は、ユーザーがスペインに所在する場合において、以下のデジタルサービスから生じる収入(VATを除く)に課される間接税として設計されている。

  • オンライン広告: ユーザー機器がスペインにある場合で、デジタルで対象を絞った公告(digital targeted advertising)。本税上、反証がない限り、全ての広告は、対象を絞った広告とみなされる。
  • デジタル仲介(digital intermediation): 取引に使用される機器がスペインにある場合で、特に仲介によりユーザー間の直接の物品/サービスの供給を容認/促進し、あるいは、他のユーザーを探して交流する場合における、ユーザー間の交流を促進するサービス。
  • データ移転(data transfer): 機器がスペインにあるデジタル・インターフェースユーザーから生成されるデータの販売/移転。

以下を含む特定取引は、明確に課税対象外となる。

  • プロバイダーが仲介者とならない場合の物品・サービスのオンライン販売
  • オンライン仲介サービスの範囲内でのユーザー間の物品・サービスの配送
  • 規制金融事業体(regulated financial entities)の規制を受ける金融サービスの提供
  • 規制金融事業体が行うデータ送信サービスの提供
  • 100%直接/間接所有企業間のデジタルサービス活動取引

本税は、前暦年に以下の2つの閾値を超える納税者に課される。

  1. 全世界収入が、7億5千万ユーロ以上
  2. スペイン源泉のデジタル活動収入が、3百万ユーロ超。グループの一部である事業体について、全世界収入は、CbCR(国別報告書)で申告した額に基づき、デジタルサービスのスペイン源泉収入は、グループ事業体間で提供されるデジタルサービスを消去せずに算定する。

3%のデジタルサービス税は、四半期(4月、7月、10月、12月)毎に自己申告する。

金融取引税

金融取引税は、以下の条件を満たすスペイン企業が発行する株式(shares)の取得によって課税が生じる(重要な例外あり)。

  • 株式が、スペイン又は欧州証券取引所(2014/65/EU指令による)、又は他の法域の同等市場(指令第25.4条による)に上場されていること。
  • 取得前年の12月1日時点でのスペイン企業の市場資本総額(market capitalization)が、10億ユーロ超。

取得プロセス、取得場所、参加者の居住地を問わず、取得価値(acquisition value)の0.2%の税率で課される。

法律(10月15日付法律5/2020)には、以下の取得を含む、複雑な免除項目リストが含まれる。

  • 株式発行
  • 投資家間での株式売り出しの初公募
  • 同一の商業グループ(mercantile group)の一部である事業体間
  • スペインの非課税制度(tax neutral regime)が適用可能な場合
  • 自社株/親会社株式


本法では、株式取得者が本税の課税対象になるが、取得を実行する投資/信用(credit)機関は、毎月本税を算定し、納税する義務がある。

 

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2020年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修