連立政権による重要な法人税改正の提案(スペイン)

2021-01-05

2020年10月27日、連立政権は、2021年予算案を承認した。一主要法人関係規定により、配当およびキャピタルゲインの資本参加免税(participation exemption)は、95%に縮小されよう。

10月13日、政府は、EU租税回避防止指令(ATAD)に含まれる特定規定の取り込み、およびEU・OECDの基準に沿ったタックスヘイブン規定の全面的な見直しを含む、いくつかの税制措置も導入した。
これら2つの法案に含まれるいくつかの法人税制措置は、2020年1月1日以後開始課税年度に遡って適用される可能性がある。

資本参加免税制度(participation exemption regime)

2021年予算案では、現行の適格株式保有からの配当・キャピタルゲインの資本参加免税を95%免税に縮小する。本改正は、国外および国内の適格子会社に係る所得に適用されよう(これにより、配当・キャピタルゲインの実効税率は、1.25%(5%の課税所得に対して法定税率25%)となる)。この5%分への課税は、連結納税グループ内の配当・キャピタルゲインにも適用されよう。本規定案には、グループの一部ではなく、また収入が4千万ユーロ未満の法人に対する例外もある。これらの小規模事業体は、2021年1月1日以後に組成された完全所有子会社から受領する配当の全額免除が認められよう(組成した年(formation year)に続く3年間のみ)。本改正は、スペインの持株会社(ETVEs)に大きな影響を与える可能性がある。

出国税(exit tax)

現行法律(CITL)上、法人がその税務上の居住地をスペインから外国法域に移す際、通常適用される出国税規定が含まれている。しかしながら、税務上の居住地がEU/EEA(欧州経済地域)法域に移転する場合、納税者は、その資産が第三者に移転するまで、キャピタルゲイン課税の支払いを繰り延べることができる。ATADに沿って、本規定案では、この繰り延べはなくなるが、EU/EEA法域に資産を移転する、または移籍する(migrating)納税者に、5年均等払いで納税する選択肢が与えられよう。
他のEU法域からの移籍/資産の移転があり、その移籍が出国元の国で出国税の対象となった場合、スペインでは、当該資産の税務簿価を、出国元の国の評価価値相当で認識することとなろう(独立企業間価格でない場合を除く)。

CFC規定

本法案では、ATADにより沿ったものとなるよう、既存のCFC規定の適用範囲が拡大されよう。

個人税率の引上げ

本2021年予算には、居住者個人の新たな所得税率区分(国税)が含まれる。30万ユーロ超の課税所得の税率は、24.5%になる(現在は、6万ユーロ超の課税所得で22.5%が国税の最高税率区分)。
現在20万ユーロ超の投資所得は26%の税率であるが、投資所得課税は、3%ポイント引き上げとなろう。投資所得には、配当、利子、および、ほとんどのキャピタルゲインが含まれる。
地方所得税率区分と合わせると、高額所得者の最高税率は、いくつかの地域では、50%に達することとなろう。

その他の税制措置

タックスヘイブン: スペインのタックスヘイブンリストの最終更新は1991年である。本法案では、最近のEU・OECDの取り組みに沿うよう、「非協力的法域(non-cooperative jurisdictions)」の指定に使われる基準が拡大・現代化され、非協力的法域および有害税制(harmful tax regimes)のリストの定期的見直しと更新が規定されよう。
追徴税(tax surcharge)とペナルティー: 一般税法(General Tax Law)が改正され、自主的な期限後納税の場合の追徴税は軽減されよう。同様に、現行のペナルティーの迅速支払いに係る25%軽減は、40%に引き上げられよう。これらの目的は、自主的なタックスコンプライアンスを向上させ、税務訴訟を減らすことであるとされている。
暗号通貨(cryptocurrencies): 暗号通貨の保有・取引に係る新たな報告規定が導入されよう。

今後の法制化と発効

これら規定の発効日は異なっている。出国税とCFC規定の改正は、2020年1月1日以後に開始し、かつ法律の発効日までに終了しない課税年度から適用されよう。
資本参加免税制度の改正は、課税年度が予算法発効日までに終了しない場合には、2021年1月1日以後開始課税年度から適用されよう。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2021年1月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修