憲法改正によるOECDミニマム税率の実施(スイス)

2022-04-08

憲法改正によるOECDミニマム税率の実施(スイス)

2022年1月12日、連邦参事会は、憲法改正によるOECD・G20合意の一定企業に対するミニマム税率実施を決定した。本決定に基づき、暫定条令として、ミニマム税率が2024年1月1日に発効することになる(法律はその後通常の方法で制定)。売上7億5千万ユーロ以上の多国籍企業に対する15%のミニマム税率は、137か国・地域で合意されている。ある国がより低い税率を維持している場合、他の国はそれらの軽課税企業に追加税を課すことができる。スイス法にミニマム税率を組み込むことで、大企業が外国での税務手続に関与することがなくなる。さらに、スイスは、権利を付与されているいかなる税収も放棄する必要はないとしている。スイス国内で事業を行っている一定企業は、将来、より高い税負担は避けられない。ミニマム税率に達していないスイス企業は、スイスで追加税を支払う必要がある。追加税は、海外ではなく、スイスの税収となる。

重要な実施ポイント

ミニマム税額は、連邦主義を十分に考慮して、的を絞った方法で徴収する必要がある。なお、純粋に国内にフォーカスした企業や中小企業(SMEs)には影響がない。連邦参事会は、以下の基準を採用している。

  • 年間売上が7億5千万ユーロ以上の多国籍企業に対するミニマム税率を確実にする
  • 州(カントン)による追加税の徴収(追加税は、カントンの税収になる)
  • 追加税収は、国の財政均等化に関する一般ルールの対象となる

各カントンは、独自に有利な措置を決定することになるが、ミニマム税率を下回る税負担を規定している場合、会社の税負担はミニマム税率のレベルまで引き上げられる(なお、スイスの連邦税率は、税引後利得の8.5%/税引前利得の7.83%であり、州税等を合わせた実効税率は、11.9%-21.6%とされる)。

出典:Federal Department of Finance / PwC, Worldwide Tax Summaries
「月刊 国際税務」 2022年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修