第2の柱の法案公表(タイ)

2024-06-17

2024年3月1日、歳入当局は、第2の柱・グローバルミニマム課税ルールに係る法案として、討議文書を公表した。本法案は、OECDが公表したグローバル税源浸食防止(GloBE)ルールのガイダンスに従っており、(i)国内ミニマムトップアップ税(DMTT)、(ii)所得合算ルール(IIR)、(iii)軽課税所得ルール(UTPR)の3つを提案している。なお、詳細は、今後の省令で規定される見込みである。本法案では、多国籍企業グループの構成事業体が複数タイに所在する場合、タイに割り当てられるトップアップ税は各構成事業体に配分される。ただし、グループ全体の納税責任を負う単一の事業体を指定することも可能である(その事業体が支払いを滞納した場合、すべての構成事業体が連帯して未納税額を負担)。本法案によると、適用対象となる納税者は、会計年度終了日から15か月以内に、多国籍企業グループに関する詳細な情報の通知、GloBE情報申告書、トップアップ税情報申告書の提出、およびトップアップ税額の支払いを歳入当局に対し行う必要がある。納税者による誤った申告、あるいは申告に不備があると疑われる証拠や理由がある場合には、歳入当局はトップアップ税申告書を提出した日から5年間は納税者に質問への回答を求める召喚状を発行できる(当該期間を2年延長することも可能)。トップアップ税額の除斥期間は、申告日から10年である。トップアップ税の申告を誤った納税者は、不足税額に対して100%のペナルティーを課され、無申告の場合には納税者は不足税額に対して200%のペナルティーが課される。さらに、納付の遅延や不納付は、所得税法における国内規定に従い、月あたり1.5%の付加税(surcharge)が課されよう。今回公表された法案は、おおむねOECDのモデルルールに準拠しているものの、詳細の一部が省略されている。特に留意すべき点として、以下が挙げられる。(注)

  • 本法案によると、トップアップ税は新法として規定される(現行の歳入法の一部としての規定ではない)。そのため、UTPR適用のメカニズムは、損金算入否認としてではなく、構成事業体にトップアップ税額を課すことで調整を行う代替的なメカニズムとなると見込まれる。
  • 本法案によると、国内法のメカニズムは、おおむねモデルルール(OECDモデルルール、同コメンタリー、および包摂的枠組みが公表した合意済の執行ガイダンスを含むと定義)と整合するように規定されている。
  • 本法案には、UTPRの適用を遅らせる条項は含まれていないため、DMTT、IIRおよびUTPRが同時に施行される可能性がある。
  • 経過措置やセーフハーバールールなど、モデルルールに基づくさまざまなメカニズムを含め、GloBE算定に係る調整の詳細は、本法案では未規定である。

本法案には暫定的な施行日が明記されていないが、2023年3月7日に公表された閣議決定によると、2025年1月1日に本規定を施行する可能性が高いと考えられる。

(注)現在提案されているDMTTも、GloBEルールと同様のメカニズムを使用してトップアップ税額を算定する(すなわち、外国子会社合算税制等に係る税額のプッシュダウンを認めている)。

出典:PwC Thailand
「月刊 国際税務」2024年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修