2021年度予算案(英国)

2021-05-05

2021年3月3日、財務相は議会に予算を提示した。COVID-19パンデミックに対する緊急措置、財政修復、および経済回復促進の3点を重要な優先事項としている。事業税関連として、以下が含まれる。

法人税

法人税率は、2023年4月から、25万ポンド超の利得に対して25%に引き上げられる。5万ポンド未満の少額の利得に係る税率は19%のままであり、利得が5万ポンドから25万ポンドの事業者は、段階的な救済により、平均税率は標準税率未満となる。迂回利益税(Diverted Profit Tax)の税率は、2023年4月から31%に引き上げられる。

欠損金の繰戻し期間の延長

営業損失(trading loss)の繰戻し規定が、一時的に、1年から3年に延長される。これは、法人化された(incorporated)事業、および法人化されていない(unincorporated)事業のいずれも適用可能である。

  • グループのメンバーではない、法人化されていない事業者や法人(companies)は、2020-21年と2021-22年のそれぞれにおいて、最大2百万ポンドの損失の救済を受けられる。
  • グループのメンバーである法人は、グループの制限なしに、2020-21年と2021-22年のそれぞれにおいて、最大20万ポンドの損失の救済を受けられる。
  • グループのメンバーである法人は、2020-21年と2021-22年のそれぞれにおいて、最大2百万ポンドの損失の救済を受けられるが、グループ全体で2百万ポンドの上限が適用される。

これは、今後の財政法案(Finance Bill)で法制化される見込みである。

プラントおよび機械の特別控除(super-deduction)

2021年4月1日から2023年3月31日まで、新規の適格プラントおよび機械に投資する法人は、初年度に130%の資本控除(capital allowance)の恩典がある。また、一定の適格資産(qualifying special rate assets)について、50%の初年度控除の恩典がある。

フリーポート

フリーポート税務拠点(Freeport tax sites)の事業者は、多くの減税の恩典を受けることができる。

EU内の関連法人(connected companies)への利子/ロイヤルティーの支払い

2021年度財政法案では、利子・ロイヤルティーに係るEU指令(EU Interest and Royalties Directive)を実施する国内法を廃止する。本法律は、現在、英国法人とEU法人間のグループ内利子・ロイヤルティーの支払いに係る源泉税免除を規定している。本廃止により、2021年6月1日から、EU法人に対する年利・ロイヤルティーの支払いに対して、関連租税条約の規定に従って、源泉税が適用される。

R&D租税優遇制度

英国が最先端の研究にとって競争力のある場所であり続けること、これらの優遇措置が引き続き目的に適合し、納税者の資金が効果的に対象とされることを確保する目的で、コンサルテーションが公表されている。さらに、政府は、データとクラウドコンピューティングのコストを、他の多くの政策オプションや優先事項とともに、より広範な見直しで優遇措置の範囲に含めることを提案している。

銀行付加税(bank surcharge)

本付加税は、銀行の利得に対する総税率(combined rate)が現在のレベルから大幅に上昇しないこと、本税率が米国・EUの主要な競争相手に比して不利でないこと、および英国の税制が英国の銀行部門における競争を支援していること、を確保するために見直される。本改正は、2021-22年度財政法案で法制化される。

また、以下のような改正等もある。

期限後申告・納付の利子・ペナルティー

政府は、VAT(付加価値税)と所得税の自己申告の罰則制度を改正する。新しい期限後申告制度は、ポイントベースとなり、関連する閾値に達した場合にのみ、ペナルティーが生じる。

デジタルプラットフォームに関するOECD報告規定

デジタルプラットフォームが、売り手の所得(income)に関する情報を、税務当局(HMRC)と売り手自身の双方に送信することを求める、OECD規定の実施に関するコンサルテーションが開始される。

OECDの義務的開示規定

特定のクロスボーダーの税の取決めに関するグローバルでの情報交換を促進することによって、オフショアの脱税(tax evasion)に対抗するために、既存のEU開示規定をOECDの規定に置き換えることに関するコンサルテーションが開始される。

大規模事業者に係る税務行政の見直し

大規模事業者に対する英国の税務行政の実績を踏まえて、見直しが行われる。これには、適切な場合に事業者に早期の確実性を提供すること、紛争の効率的な解決を確保すること、また、コンプライアンスへの共同的・建設的なアプローチを促すこと、が含まれる。

出典:PwC UK website
「月刊 国際税務」 2021年5月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修