バイデン大統領、自社株買いに係る消費税増税案、超富裕層へのミニマム税などの再提案を表明(米国)

2023-05-11

2023年2月7日、バイデン大統領は、議会での一般教書演説(State of the Union address)の中で、富だけでなく労働にも報いる税制改革を含めた自身の経済政策方針への支持を呼びかけた。また、連邦法定債務の上限引き上げに向けた議会の責任ある行動を求める一方、連邦財政赤字削減のため共和・民主両党と個別協力の用意がある旨を表明した。大統領は、インフレ抑制法(IRA)の一環として2022年に施行された法人の自社株買いに対する消費税の1%から4%への引き上げを提示した。また、超富裕層へのミニマム税(“billionaire” minimum tax)やその他の法人・個人関係税制案の制定を議会に呼びかけた。大統領の税制案は、2024年度予算案の一部として議会に提出される(大統領の予算案と、財務省の歳入案に関する一般説明(Green Book)は、2023年3月9日公表)(注1)。なお、下院は共和党、上院は民主党支配のため、税制関連法案の成立には両院の超党派の支持が必要となる。今年の大半は、連邦債務上限および政府財源に関する議論が議会の主要な関心事になると思われるが、2017年税制改革法(TCJA)の規定により2022年に償却の対象となったSection 174研究費の支出・発生初年度控除の復活など、これまで超党派の支持を受けてきたいくつかの税制案が取り上げられる可能性がある。財務省と内国歳入庁(IRS)は、最近制定された法案(法人の自社株買いに対する消費税、法人AMT(代替ミニマム税)(CAMT)やその他のIRA税規定)に関するガイダンス(注2)に取り組んでいる。

(注1)2024年度予算案では、2023年度予算案にも含まれていた、純資産1億ドル超のすべての納税者に係る未実現キャピタルゲイン所得を含む総所得に対するミニマム税率(税率25%(2023年度予算案では20%))のほか、法人税率の28%への引き上げや、現行の税源浸食濫用防止税(BEAT)に代わる軽課税利得ルール(“undertaxed profits rule”)などの提案がある。また、昨年11月に下院で可決された「Build Back Better」調整法案のうち、国別のグローバル無形資産低課税所得(GILTI)制度など特定条項の制定や、法人税率引き上げに伴うGILTI税率の引き上げも想定されているほか、FDII(国外源泉無形資産関連所得)制度の廃止(研究開発支出の追加支援に充当)なども提案されている。

(注2)2022年12月27日、財務省・IRSは、CAMTに係る暫定ガイダンス(Notice 2023-7)、および自社株の買戻しに対する新たな消費税の適用に係る暫定ガイダンス(Notice 2023-2)を公表した(本誌2023年3月号参照)。また、2023年2月17日、CAMTによる保険業界への意図しない重大な悪影響の回避を意図した暫定ガイダンス(Notice 2023-20)を公表した(2023年4月3日までコメント募集)。Notice 2023-20では、財務諸表上時価評価される生命保険会社の特別勘定資産の取扱い、特定の共同保険契約から生じる組込デリバティブの取扱い、および特定の旧免税事業体(免税措置の廃止が有効になった際に保有資産の税務ベーシスを決定するための特別移行規定を議会が定めている)に関連して生じる税務上の取扱いなど、早急に対応が必要な論点を扱っている。

出典:Samil PwC Tax News Flash
「月刊 国際税務」2023年4月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修