下院共和党、第2の柱およびユニラテラル税への対処法案を提出(米国)

2023-08-21

2023年5月25日、ジェイソン・スミス下院歳入委員会委員長(共和党)および下院歳入委員会共和党議員は、法案(「Defending American Jobs and Investment Act」)を提出した。本法案(新Section 899)によれば、財務長官が上下両院議会の特定委員会に提出する報告書(「外国による域外課税および差別的な課税(注1)に関する報告書」)に記載される外国に係る特定外国人、外国法人(Section 245A(b)に規定する特定10%被保有外国法人を除く)および外国パートナーシップに対する所得税(Section 871(a)(1)、871(a)(2)、871(b)、881(a)、882(a)、884(a))および源泉税(Section 1441(a)、1442(a)、1445(a)、1445(e))の税率が、当初5%ポイント、最大20%ポイントまで引き上げられよう(1年目5%、2年目10%、3年目15%、4年目以降20%)。本税率引き上げは、最初の報告書(外国名記載)の提出日から180日経過後に発効することとなろう。なお、本法案では、その他の対処措置として、連邦政府調達の制限、および二国間租税条約や貿易協定に関する制限も含まれる可能性がある。(注2)

(注1)「域外課税」は、法人に対する外国課税で、何らかの所有の連鎖によって当該法人と関連する者が受領する収入・利得を基に算定されるもので、①個人の所有者持分を考慮せず、②当該者との直接/間接保有でない所有の連鎖に基づく課税として、第2の柱の軽課税所得ルール(UTPR)を、また、「差別的な課税」は、外国課税で、①当該外国源泉とみられない所得項目への課税、②所得課税でない、③結果的に非居住者や外国法人/パートナーシップのみに適用、④国内法や租税条約で所得税と扱われない、のいずれかに該当する課税として、デジタルサービス税(DST)などを指しているとみられる(付加価値税、物品・サービス税、売上税、消費税や取引単位課税など(財務長官が指定)は含まれないであろう)。なお、本法案が、民主党支配の上院議会で可決される可能性は低いとみられるが、OECDのプロセスやその政策の方向性の一部に対する共和党議員のさらなる不満を示している。

(注2)EUでは、欧州理事会に対し、第2の柱に係るEU指令条項の無効化訴訟が提起されている。特に同指令第17条の国際海運活動からの所得および特定の付随的な所得に係る適用除外に関するものである。海運業界は、トン数税などの特定の税制の適用を受けており、第2の柱ルールは、業界固有の制度がそのまま維持されるように特別に設計されている。第2の柱における適用除外は、OECDモデル租税条約第8条のコメンタリーに定義されているように、適格な付随的国際海運所得にさらに拡張されている。原告は、本第17条が、類似の事業者間に不均等な競争条件を作り出すと主張している(本第17条の適用による適用除外が限定的で、EU指令と既存のトン数税制およびEU国家補助規定との間に矛盾が生じる可能性がある)。原告は指令全体ではなく、本第17条の無効化を求めているとされるが、原告の代理人弁護士は、本指令自体の無効化が必要になる可能性があるとしている(Source: PwC, Latest digital tax byte)。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年7月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修