新たな法人AMT(代替ミニマム税)に係る暫定ガイダンス(米国(1))

2023-04-10

2022年8月16日制定のインフレ抑制法(IRA)により、新たな法人AMT(代替ミニマム税)(CAMT)(内国歳入法Section 55、56Aおよび59関連)が導入された。適用対象法人は、調整後財務諸表所得(AFSI)に基づき、15%のCAMTが課されることになる(2022年12月31日後に開始する課税年度から適用)。2022年12月27日公表のNotice 2023-7(本ガイダンス)では、法人(S corporation等を除く)、特定のパートナーシップ、一定の(財務苦境)法人(troubled corporations)、連結納税申告書を提出する関連グループへのCAMTの適用について、規則案公表までの暫定ガイダンスを示している。減価償却費に係るCAMT調整の算定、連邦所得税額控除の取扱い、適用対象法人の判定に係るセーフハーバーについても規定している。内国歳入庁(IRS)・財務省は、規則案の公表前に、追加の暫定ガイダンス(注1)を示す予定である。本ガイダンスでは広範な分野(特定の法人取引(Section 332、337、351、354、355、357、361、368、721、731および1032関連)に関する特別規定(原則、連邦所得税と同様の取扱いだが、例えばスピンオフに係る負債の取扱い(Section 357(c)関連)など、構成要素単位での判定もある))、連結納税グループに係るAFSIの算定(単一事業体と扱う。適用対象法人性の判定およびCAMTの算定双方に関連)、債務免除益(Section 108関連)の取扱い(連邦所得税と同様の取扱い)、(CAMT適用初年度の)適用対象法人の判定に係るセーフハーバー(注2)、減価償却費に係るAFSIの税務ベースへの調整(Section 167および168関連)、特定の税額控除に係る調整(Section 48D、6417および6418関連)、適用対象法人判定時のパートナーシップAFSIの取り扱い、および保険に係る論点をカバーしているが、外資系多国籍グループ(FPMG)に係る規定を含め、今後のガイダンスで対応すべき多くの論点につきコメントを求めている(Internal Revenue Bulletinで公表後60日以内)。なお、本ガイダンスでは、外国法人から分配される利益の二重課税の可能性や、FPMGの判定・適用範囲など、特定の国際税務の論点には対応していない。

(注1) 財務諸表の時価評価項目 (生命保険会社の個別勘定資産や一部の金融商品など)、その他包括利益(OCI)で報告される特定項目、および特定の再保険契約から生じる組込デリバティブの取扱いを想定している。

(注2) このセーフハーバーにより、当期を含む3課税年度(2021年12月31日後終了課税年度)の調整後平均AFSI(当該法人の単一事業主グループ(Section 52(a)および52(b)関連)の他のメンバーと合算)が、10億ドルではなく5億ドルを超えていれば、CAMTの適用対象法人となる。FPMGに係る追加の閾値についても、国内メンバーの年間平均AFSI(当該法人の単一事業主グループの他のメンバーと合算)が1億ドルではなく、5千万ドル以上であれば、適用対象法人になる可能性がある。なお、本セーフハーバーの適用においては、AFSIの算定を簡素化し、多くの一般的調整は考慮しない。このほか、課税年度が異なる期間に係る特別規定もある。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修