IRS、グループ内金融取引における黙示的な支援の認識に関するガイダンスを公表(米国)

2024-04-15

2023年12月29日、IRSの首席法律顧問官室(Office of Chief Counsel)は、内国歳入法(IRC)Section 482(およびTreas. Reg. §1.482-2(a))に係るグループメンバーシップの影響に関するガイダンス(AM 2023-008)を公表した。本ガイダンスは、GLAM(generic legal advice memorandum)として公表された。本GLAMでは、Section 482の規則のうち、グループ内金融に適用される規則や、他のSection 482に係る関連規則(例えば、現実的な代替案(realistic alternatives)や受動的関係(passive association))を、グループ内金融の文脈で検討している。これらの原則に基づいて、本GLAMでは、IRSが、グループメンバーシップを考慮して、グループ内金融の独立企業間利率を算定できるとしており、その際、他のグループメンバーからの予期される黙示的な支援を考慮することが可能であるとしている。これは、関連者取極めにおいて財務保証やその他の正式な支援が明示的に記載されていなくても、関連当事者間取引において他のグループメンバーからの黙示的な支援が考慮されるという主張がある場合に見込まれる当局側の考え方をも示している。なお、本GLAMで示された納税者非特定のガイダンスは、特定の状況におけるIRSのポジションについての有用な見解を示しているが、先例として使用したり引用したりするべきではない。本件について、特に、グループ内の中核的な事業体から借入を行っているグループの関連会社の場合、グループ内金融ストラクチャーに関連する移転価格方針を検討する必要がある。借入事業体の信用状況について、移転価格分析において、単独(stand alone)ベースのポジションを取ることはより困難であるかもしれないが、借入者がグループの財務成績に関して不可欠な事業を行っている(または資産を所有している)ことから黙示的な支援が第三者の貸し手によって考慮される、かどうかなどを判定するにあたり、依然として事実と状況に係る分析は、必要と思われる。(注1)(注2)

(注1)本GLAMにおいて、次の事例が示されている。米国子会社(USSub)が、外国親会社(FP)からのグループ内貸付けによって資本を調達する計画を立てている。GLAMによれば、IRSは、FPからUSSubへの貸付けの利率を、USSubがその信用格付けを踏まえて非関連者である貸し手に支払うときの独立企業間利率に調整できるとしている。この場合、非関連者である貸し手は、信用格付けを決定する際に、USSubのグループからの「黙示的な支援」を認識するであろうとしている。したがって、独立企業間利率は、「黙示的な支援」による[上方]の信用格付け調整を考慮するものとなろう。本GLAMでは、「黙示的な支援」とは、借入者であるグループメンバーが財務的に困難に陥った場合において、明示的な保証やその他の正式な義務が存在しない場合でも、他のグループメンバーが供与すると見込まれる財務支援をいう、と定義している。
(注2)OECDが2022年1月に公表した移転価格ガイドライン(2022年版)には、BEPS包摂的枠組(IF)において2020年に承認された金融取引ガイダンスが含まれており、本GLAMにもこれと同様の趣旨が含まれている。今後、OECD加盟国を含め多くの国・地域がこれを国際的なコンセンサスとして尊重していくものとみられる。(日本でも、2022年6月に公表された国税庁の「移転価格事務運営要領」3.8(金融取引に係る独立企業間価格の検討を行う場合の留意事項)の中に、これに関連する記載がある。)

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2024年3月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修