2024年度予算案(米国(1))

2023-06-14

2024年度予算案(米国(1))

2023年3月9日、バイデン大統領の2024年度予算案と、財務省の歳入案に関する一般説明(Green Book)が公表された。本予算案に含まれる事業関連の税制案には、以下が含まれる。(注)

(注) 共和党が下院を支配していることから、増税案は、当面、進まないとみられる。上下両院の共和党では、政権によるOECD・第1の柱および第2の柱の支持に反対している(本税制案により、中国などに対し米国が競争上不利な立場になることに懸念を示している)。

事業関係税

  • 連邦法人所得税率の21%から28%への引き上げ(州税と合わせた平均法人税率は32.3%) - 2022年12月31日後開始課税年度から適用(2023年1月1日前に開始し、2022年12月31日後に終了する課税年度は、2023年発生分につき按分適用)
  • 法人の自社株買いに対する消費税(Section 4501)の1%から4%への引き上げ - 2022年12月31日後の自社株買いに適用
  • パートナーシップを通じた関連者間のベーシス・シフトの防止 - 2023年12月31日後に開始するパートナーシップの課税年度から適用
  • 支配(Section 368(c)の定義を法人関連テスト(Section 1504(a)(2))に整合 - 2023年12月31日後に発生する取引から適用
  • 清算取引で認識された損失の否認 - 制定日後の分配に適用
  • 分割型組織再編成(Section 368(a)(1)(D)および355)の当事者の不適切なレバレッジによる租税回避の制限 - 原則、制定後の取引に適用
  • 法人の分配金を配当として課税 - 制定日から適用(Section 312(a)(3)関係)、ないし2023年12月31日後の発生取引(組織再編成に係る受取配当の利益制限(boot-within-gain)の撤廃など)から適用

国際課税

  • グローバルミニマム税制の見直し(GILTI(Global Intangible Low-Taxed Income)税制のQBAI(Qualified Business Asset Investment)免除廃止、Section 250控除の50%→25%への縮減(これにより、法人税率引き上げと合わせ、GILTI税率10.5%→21%に引き上げ)、GILTI外国税額控除制限の20%→5%への縮小および外国税額控除の10年繰越し(CFC欠損金の繰越しも容認)(これらにより、実効税率22.1%未満でGILTI課税)、国別GILTI、およびサブパートF所得に係る高税率の免除の廃止)、CFC以外からの受取配当の控除制限、非課税所得への配賦控除の取扱い改正、インバージョン制限、軽減税率適用の国外所得に係る株式損失の否認、および外国事業体の定義拡大(課税対象ユニット(支店やdisregarded entity)を包含) - 適用開始日は各規定によるが、例えば、CFC利益に係るグローバルミニマム税制の見直しのうち、Section 250の改正は2022年12月31日後開始課税年度、その他の要素は2023年12月31日後開始課税年度から適用
  • BEAT(Base Erosion Anti-Abuse Tax)を廃止し、軽課税所得ルール(UTPR)を採用(注) - 2024年12月31日後開始課税年度から適用
  • (注) 他国・地域によるUTPRの適用から米国の財政を保護するための国内ミニマムトップアップ税も含まれている。これとは別途、米国の納税者が米国の雇用と投資を促進することを目的とした米国の税額控除やその他の税恩典を引き続き受けられるようにするためのさらなるメカニズムを規定する予定である。
  • UTPRは、主に軽課税国・地域で事業を行う外国籍の多国籍企業に適用されよう(米国籍の多国籍企業は、国別GILTIの対象)。UTPRは、過去4年間のうち少なくとも2年間のグローバル年間収入が7億5千万ユーロ以上である財務報告グループにのみ適用されよう。
  • FDII(Foreign-Derived Intangible Income)制度の廃止(研究開発支出の追加支援に充当) - 2023年12月31日後開始課税年度から適用
  • サブパートF所得とGILTIを納税者間で配分するルールを改定 - 制定日後に開始する外国法人の課税年度、および当該外国法人の課税年度が終了する米国株主の課税年度に適用
  • CFCのサブパートF所得とE&P(米国連邦法人所得税上の利益剰余金)の計算のミスマッチ解消 - 2023年12月31日以後に終了する外国法人の課税年度、および当該外国法人の課税年度が終了する米国株主の課税年度に適用
  • ハイブリッド事業体の売却に係る外国税額控除の制限 - 制定日後の取引に適用
  • 財務報告グループメンバーの過大純利子(グループ利益に応じた配賦額を超える分)に係る控除制限(3年/無期限の繰越控除あり)(注) - 2023年12月31日後開始課税年度から適用
  • (注) 外資系グループにのみ適用の可能性がある。なお、金融サービス事業体や、年間純利子費用5百万ドル未満の金融グループには適用されない。
  • パートナーシップECI(Effectively Connected Income)代替支払い(トータルリターンスワップなどのデリバティブ金融商品)に係る米国源泉配当の取扱い - 2023年12月31日以後開始課税年度から適用
  • PFIC税制における適格選択基金(QEF)の遡及的な選択の拡大 - 制定日から適用
  • 国外の化石燃料所得に係る税制改正(外国石油ガス採掘所得(FOGEI)に係るGILTI免除の廃止など) - 2023年12月31日後開始課税年度から適用
  • 米国への雇用のオンショア化に係る適格費用の10%税額控除、および雇用の海外移転に係る費用の控除否認 - 制定日後に支払われた、または発生した費用に適用

その他の改正案

デジタル資産関係、保険関係の改正や、その他の税制案(キャリードインタレストに対する通常所得課税、特定不動産の減価償却費を通常所得として処分時にリキャプチャー、同種資産交換利益の課税繰り延べ(Section 1031)の制限、デジタル資産マイニングに係るエネルギー消費税の賦課など)がある。

その他の改正案

デジタル資産関係、保険関係の改正や、その他の税制案(キャリードインタレストに対する通常所得課税、特定不動産の減価償却費を通常所得として処分時にリキャプチャー、同種資産交換利益の課税繰り延べ(Section 1031)の制限、デジタル資産マイニングに係るエネルギー消費税の賦課など)がある。

出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2023年2月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修