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2024-08-01
※本稿は、2024年7月1日号(No.1714)に寄稿した記事を転載したものです。
※発行元である株式会社中央経済社の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。
カーボンニュートラルを目指した脱炭素の取組みが待ったなしの状況となっている。現在、政府の方針としてグリーントランスフォーメーション(以下、「GX」という)が掲げられ、これに対応する活動が開始されている。そのなかでは、排出量取引やカーボンクレジットなどの具体的な取引や炭素に対する賦課金の計画も含まれている。経理部門は、脱炭素の取組みに関与する機会が増えると予想され、ある程度の知識が必要となっている。
そこで、本連載ではGX実現に向けたGXリーグにおける排出量取引やカーボンクレジットについて、Q&A形式で概要を解説する。
本連載最終回である、第7回は、東京証券取引所が開設するカーボン・クレジット市場について解説する。なお、記載については、筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。
東京証券取引所が開設するカーボン・クレジット市場における取引方法、参加者など制度の概要はどのようになっているのか。
2050年カーボンニュートラル目標の実現のため、2023年2月、政府より「GX実現に向けた基本方針」において、カーボンプライシングの制度設計として「排出量取引制度」の導入が示された。そして、GXリーグのなかでGX-ETSとして、2023年度から試行されている。そのなかで、J-クレジットは、GX-ETSで活用可能な適格カーボン・クレジットとして位置づけられている。なお、排出量取引制度は2026年度からの本格稼働が予定されている。
東京証券取引所は、2022年度に実施した「カーボン・クレジット市場の技術的実証等事業」(以下、「実証事業」という)から得た知見と市場運営の経験を活かし、2023年10月11日にカーボン・クレジット市場を開設した。実証事業における市場制度は、株式・デリバティブ市場や各国の市場制度等を参考にしつつも、J-クレジットの特性や流通状況等を踏まえて設計された。
カーボン・クレジット市場は、東京証券取引所が開設する上場株式等の金融商品市場とは異なる市場であるとされている。また、東京証券取引所は、取引の対象となるJ-クレジットは、金融商品ではないとしている。ただし、令和4年(2022年)12月26日に金融庁から公表された「カーボン・クレジットの取扱いに関するQ&A」における説明によると、J-クレジットの売買について、金融商品取引業者など各業法の業務範囲規制のもとにある企業は、届出等、法律上の手続が必要となる場合があるため、金融庁への確認が必要である。
J-クレジットの取引は、相対取引もしくは政府(J-クレジット制度事務局)による入札により行われているが、これに加え、2023年10月11日に東京証券取引所におけるカーボン・クレジット市場が開設され、取引所における取引が可能となった。各取引方法の特徴をまとめたのが図表1である。
図表1:各取引方法の特徴
| 相対取引 | 入札販売 | 取引所取引 | |
| 取引チャネル |
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| 取引時期 |
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| クレジット移転 |
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| クレジットの指定 |
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| 取引情報 |
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(注) 売買契約の完了までの期間は1カ月程度以内が想定されている
(出所)㈱東京証券取引所カーボン・クレジット市場整備室「カーボン・クレジット市場オンライン説明会」をもとに筆者作成
カーボン・クレジット市場においては、認証済みのJ-クレジットを売買の対象とし、実際のクレジット移転を伴う決済を行う。よって、認証予定のクレジットが認証されていないプロジェクト実施段階では、売買の対象とされない。なお、J-クレジットの取引所取引が開始された後も、相対による取引は引き続き可能である。入札販売の実施は、J-クレジット制度のホームページにおいて、入札時期や方法が公表されるため、適宜確認する必要がある。
契約上の相手方は、注文が対当した参加者同士になるが、クレジット移転および資金の振込みは、東証の規則に基づき、東証の口座を介して行われる。カーボン・クレジット市場においては、売り方の顧客が、注文や売買の都度、適格請求書発行事業者である事実の確認、また買い方の顧客の名称等を決済の都度、確認する管理の実施が困難であるため、取次は不可とされている。なお、取次以外に、代理および媒介の形態であっても、インボイス発行における当該顧客の属性確認の必要性のため、取次と同様に不可とされている。
カーボン・クレジット市場の制度の概要をまとめたのが次頁図表2である。
カーボン・クレジット市場で購入したJ-クレジットを再びカーボン・クレジット市場で売却する取引も可能である。購入した場合、取引所からのJ-クレジットの移転は約定成立日から起算して6営業日(T+5)以降、売却した場合の取引所へのJ-クレジットの移転はT+4となる。売却の決済日に手元に移転クレジットがないという事態が生じないよう、決済サイクルおよびオペレーションには十分な注意が必要である。
J-クレジット制度では、J-クレジットの有効期限が設定されていない。ただし、たとえばオフセットの基準はさまざま存在し、そのなかでクレジットの発行時期やプロジェクトの稼働期間等について制約が設けられている場合も想定される。取引を行う各社において、その活用目的によっては、依拠する基準やルールを確認しておく対応が望ましい。
カーボン・クレジット市場において取引の対象とされるのは、J-クレジットのみである。海外のボランタリークレジットやグリーン電力証書、FIT非化石証書等は対象とされていない。㈱東京証券取引所カーボン・クレジット市場整備室「カーボン・クレジット市場オンライン説明会FAQ」(以下、「FAQ」という)によれば、これらを取り扱うかどうかについては未定であるとしている。今後の対応については、差異がある。海外ボランタリークレジットは、GX-ETSにおける取扱い状況等や参加者のニーズを踏まえつつ、検討するとされているのに対し、グリーン電力証書や非化石証書については、セカンダリー市場における取扱いの適否も含めて、研究するとされている。
FAQでは、J-クレジットの先物取引について、現時点では未定であるとしている。排出量取引については、最終的に、ヘッジ手段等の観点から先物取引が必要になると想定しているため、GX-ETSに関する今後の政府の政策動向等や金融関係の規制整備の動向も踏まえつつ、検討するとしている。
現時点では、カーボン・クレジット市場利用規約において空売りは規制されていない。まず、カーボン・クレジット市場における売買は、売付数量と買付数量の相殺(差引き計算)決済はできないとされている。さらに、決済日の前営業日(T+4)11時には、クレジットを東証口座に移転する必要があるため、カーボン・クレジット市場における取引や相対取引からの今後のクレジット受領を見越しての空売りの実施については慎重に検討する必要があるとされている。
カーボン・クレジット市場に参加するためのステータスとして、カーボン・クレジット市場参加者が設定された。次の要件を満たす場合、カーボン・クレジット市場参加者の登録が可能である。
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前記の要件を満たしていればよく、業種等の制限は設定されていない。また、カーボン・クレジット市場への参加にあたり、取引に関する義務はない。カーボン・クレジット市場参加者の参加者名は東京証券取引所のウェブサイトで公表される。2024年5月15日現在で278者が公表されており、GXリーグ参画企業が86者、TSE上場会社が58者、JPX取引参加者・清算参加者が20者、およびJ-クレジットプロバイダーが7者(内数であり、重複あり)となっている。
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