
産業TREND/経営リーダーの論点 ファウンドリーの顧客獲得戦略――技術の“金の卵”で新興育成
持続的に成長が見込まれる半導体業界ですが、世界中で工場が新設され供給過剰に陥る「2024年問題」などのリスクも予想されています。そのために重要となる半導体受託製造(ファウンドリー)の顧客獲得戦略などについて解説します。(日刊工業新聞 2025年2月27日 寄稿)
2025-02-28
※本稿は、『日刊工業新聞』2025年1月30日付「経営リーダーの論点(13)」に寄稿した記事を再編集したものです。
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国内住宅産業の主要な問題に「空き家」がある。空き家は、産業が創出した価値が放棄されている状態だ。問題解決には、特定の居住者が住み続けるという前提を変革し、住宅を社会資本としてより流通させることが求められる。行政と業界団体の連携、非競争領域との協調などを通して、産業全体で取り組むことが重要だ。
日本の総人口は2008年をピークに減少に転じた。この影響を直接受けている産業の一つに、住宅産業がある。住宅数に着目すると、問題が明確になる。住宅着工件数は減少基調にあるものの、世帯数の増加以上に住宅総数が増加し、結果として空き家が増えている。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、賃貸住宅の入居者がいない期間や別荘などの二次的住宅を除く「空き家」は385万戸(住宅総数の5.9%)に上った。30年には470万戸に達すると推計されている(図表1)。
いわゆる「ボロ屋敷」ではなく、親世代から相続したり、居住者が高齢者施設などに入居していなくなったりしたものなど、さまざまな理由で空き家になったケースが増えている。価値ある財が活用されないまま放置されている非効率は、産業全体で解決すべき喫緊の課題といえる。
解決するには、日本全体の人口動態に合わせて、住宅を長く活用できる産業構造に転換する必要がある。特定の居住者によって住まれ続けるのではなく、社会資本として市場を循環し、新たな居住者に引き継がれることが前提になり、現在の新築に重きを置く産業が変化することを意味する。
この変革に向けて、大きく三つの論点があると考える。
第1に「新設段階での性能向上」だ。耐震性の向上やエネルギー消費量低減といったハードとしての性能向上とともに、経年劣化の速度が異なる設備の更新容易性など、長期利用を想定した住宅設計が求められる。
住宅品質の向上はイニシャルコスト増に直結する。「断熱性能を上げると光熱費を削減できる」「高品質の外壁を採用すると維持修繕費を削減できる」「資産価値が上がり、将来的に高く売却できる」などと、ライフサイクルでコストメリットを享受できることを示すための算定基準を整備することが肝要だ。
長期利用に向けた性能基準の改訂、高性能の住宅に対する認証、税制・金利優遇などの複合的な施策も必要となる。これらにより、新設段階での建て主の意思決定を長期目線にシフトさせる。
第2に「住宅の維持管理・バリューアップ」だ。経年劣化の修繕や耐用年数を過ぎた設備の入れ替えなどのメンテナンスはなされるものの、住宅の価値を維持・向上するための投資は限定的なのが実情。売却を念頭に置いた維持管理が定着しておらず、次の所有者に価値を適正に説明するための記録を残す仕組みも整っていない。リフォームをしてもさほど価格に反映されず、インセンティブが生まれにくい。
維持管理・バリューアップに対する経済合理性を成立させるには、ローン審査の優遇や補助、中古住購入時の性能調査と補修に対する補助などの優遇策、逆に不具合を放置することに対する税制優遇の廃止などを、官民で検討する必要がある。
また、ハウスメーカーやビルダーは引き渡し後に建て主との接点が限定的になるため、リフォームを含めた維持管理状況をモニタリングできておらず、記録が散逸している。元施工者が一貫して関与し、価値を説明できるようになれば、顧客ニーズに応じたリブランド活性化への道も開く。
住宅として使い続けるのではなく、集会施設や宿泊施設などに用途を変更し、新たな価値を創出するビジネス開発やそれを後押しする制度見直しも有効な施策と考える。建築基準法上の既存不適格、歴史的な経緯により違法状態になっている住宅の改修に対する取り扱いの見直しも考慮すべきである。
第3に「適正管理された住宅の価値を評価する仕組み」だ。中古住宅流通促進に向けて、価値を適正に判断するための情報開示と価格査定の透明化が求められる。
不動産仲介者は、物件のオーナーが売買の意思を示した時点で、不動産流通機構の物件情報交換システム「REINS」に登録する。だが、買い主は維持管理の履歴を正しく照会できない。価格の根拠がない状態での取引になるため、結果として投資の有無にかかわらず築年数によって価格査定される。これを是正するには、住宅維持管理履歴をオープンデータとし、売買などのタイミングで関係者が参照して価格査定に反映する仕組みを構築することが必要だ(図表2)。
売買時、適正に維持されてきたことを専門家が調査し、価値評価に反映することも大切だ。中古住宅の流通割合は日本が1割強なのに対し、米国や英国は8割を超えている。海外では買い主の約8割が、劣化や欠陥の有無などを住宅検査員が調査するインスペクションを実施している。
中古住宅の価値は調査結果と近隣の取引事例によって比較評価され、価格が下がりにくい。日本でも専門家の関与を促し、海外に準ずる価値評価を導入することが望ましい。
日本の商習慣では、築年数20年以上の担保評価額がゼロで価値がほとんど考慮されない。だが、減価償却による価値目減りといった画一的な考え方をやめて、中古住宅を適切に評価する仕組みづくりで「住宅産業のあるべき姿」(図表3)を目指すべきである。
かつて、住宅は子孫代々が安心して住み続けられることに価値が認められており、売却は想定されていなかった。だが現代は子どもの独立などで1代で役目を終えることが普通となり、既存制度や生活習慣とのギャップも大きくなっている。
日本は税制や価値評価方法によって中古住宅の需要や流通が阻害されている面があり、抱える課題は構造的なものだ。この人口減少時代、住宅産業をサステナブルに価値を創造する構造に転換させるためにも、官民が足並みをそろえることが求められる。
持続的に成長が見込まれる半導体業界ですが、世界中で工場が新設され供給過剰に陥る「2024年問題」などのリスクも予想されています。そのために重要となる半導体受託製造(ファウンドリー)の顧客獲得戦略などについて解説します。(日刊工業新聞 2025年2月27日 寄稿)
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