第4回 IFRS第17号適用等に向けたソフトデザインアプローチ

新基準の導入は、新たな保険数理計算に関する要件が追加されるという点において会社のデータ管理領域に重要な影響を与える。要件への準拠という観点では、この計算に必要なデータを保持し、管理する仕組み（データベース）を構築または可能であれば再利用することになるであろう。

保険数理計算は、経済価値ベースの規制フレームワークなどの既存の投資を活用できる。調整表の作成を含む詳細な開示も、既存の機能を活用することを基本とするが、追加的な投資を必要とする場合があるかもしれない。

特にIFRS第17号は、損益計算書の表示方法を抜本的に変更するものであるため、これにより多くの主要なベンダープラットフォームにおいて、仕訳ルール、総勘定元帳および勘定科目表（COA）の重要な変更ないしは再実装が必要となるかもしれない。

新基準では、事業パフォーマンスの報告と測定が大きく変化することが予想され、ファイナンスと保険数理の間の結びつきがより一層強くなる。これは単に基準の要求事項を満たすことに加え、ビジネスへの洞察や分析的な視点を提供するリスクおよび保険数理モデルへの投資の機会を提供する。保険数理モデルへの投資は、更なる標準化の機会とモデル計算外の削減を考慮すべきである。

新基準が連結ベースでの報告に与える影響は、内部および外部の両方で、法令、規制、および経営陣による報告のニーズを満たす新しいプラットフォームを確立するための機会を提供している。

保有するデータ量の大幅な増加（会計単位、CSMなど）と、データ処理のスピードは、インフラへの多大な投資を必要とするであろう。システム基盤は通常、非戦略的で非付加価値的な取り組みとして考えられていたが、保険会社はこの要求事項に対処するためにクラウドインフラストラクチャとアプリケーションオプションを考慮すべきである。

企業の分析能力と統合され、戦略・予算策定・事業計画を一体となって管理するFP&A（Financial Planning & Analysis：財務計画および分析）ツールは、現行で用いられている複数のスタンドアロン型の報告ツールにとって代わる。

サインオフのためのワークフロー通知を伴う自動調整ツールは、すべての重要なインターフェイスで使用される。これにより財務報告をはじめトレンド分析やパフォーマンス指標の測定などにおける必要な検証プロセスは管理され、自動化される。

内部および外部のシステムからのデータを、最も細かい粒度で収集し管理するデータレイク機能を確立する。これにより、新しいシステム開発は、データ要件を定義するための初期費用なしに、ファイナンスが必要とするすべての詳細を提供することができる。

データレイクからのデータ量の増加を管理するために、データの可視化および高度な分析的レイヤーを実装する。視覚化ツールは、「巨大な」データセットの視覚的な描写とドリルダウンを可能にし、高度な分析ツールは、基礎となるデータの接続と洞察を特定するために半自動的に作用する。

すべての新しいアプリケーションは、情報が「オンライン」である複数のデバイスを介してアクセスすることができる。理想的には、複数のアプリケーションからの情報は、関連するソース情報への連続的なドリルダウンと組み合わせられる。

企業が持つ情報モデルに基づいて、情報を保持、調整、充実させている。共通の参照データとマスターデータは、適切なツールで管理され、関連するプラットフォーム間で自動的に同期される。メタデータ管理を用いて、情報の流れとデータストアが十分に文書化されている。

一般的で単純なタスクは可能であれば排除され、より重要な統制など再現性を有する作業が必要とされる場合には、RPAを使用して自動化されている。さらに、AIの一形態である機械学習は、経験分析および他の豊富なデータ処理を改善するための洞察と予測を作成するために使用される。

インフラストラクチャー戦略では、オンプレミス、プライベートクラウドおよびパブリッククラウドといったプラットフォームやインフラストラクチャーソリューションの使用を定義する。すべての環境は、マスターデータのシングルサインオン自動再利用をサポートし、レイテンシ（ネットワーク待ち時間）が最適化される。

ビジネスツール（FP&A、BI、RPAなど）の利用状況の増加を反映するために、IT運用モデルを最適化する。内部ITを付加価値活動に集中させ、適切な第三者に非付加価値活動をアウトソースする。

効率面・機能面の高いライセンシングを提供するITソーシング契約を交渉する。