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インシュアランス・バナナ・スキン(2019年度版)において15位の販売実務(Business practices)を取り上げる。販売実務というと募集コンプライアンスを思い浮かべる方も多いと思われるが、ここで言う販売実務は「募集」に限らず商品の企画・開発から販売戦略、商品改訂まで含む幅広い概念である。また原文の「Business」の概念には販売に限定せず、保険会社としての顧客や市場との取引実務すべてを含むものである。本邦においてはコンプライアンスリスクという概念で捉えることができると考えるが、海外では一般にコンダクトリスクという言葉で語られることが多い。以降、「販売」に限らずより広い概念であるコンダクトリスクとして記す。
15位という順位は必ずしも高い順位ではなく、2013年に4位であったことからもコンプライアンスを中心とする監督当局からの要請、またそれを受けた保険会社をはじめとする金融機関の態勢強化の表れとみることもできる。一方でサーベイにおいて実質的なリスクはいまだ存在しており、例えばカナダの保険会社の回答コメントには「カナダはこれまでこの分野では他の国よりもかなり良い結果を得てきた・・・・が、私たちは本当にそこまで他の国と異なるのだろうか」とあるなど、「自己満足」である可能性も指摘されている。
なお、本稿の記載は特定の金融機関を意図して記載したものでは無い点、記載内容は所属する監査法人の意見ではない点にご留意いただきたい。
最後にコンダクトリスクへの備えができているかについて五つの質問を投げかけたいと思う。
これらの質問は、英国のFCAが金融機関を対象に16年以降行った調査で使用された質問である。
▽質問1:ビジネスに内在するコンダクトリスクを特定するために、どのように能動的な対応を行っているか。
▽質問2:ビジネス上の行為について組織構成員に責任を認識させ、責任を果たすことをどのように促進しているか。
▽質問3:組織構成員がビジネス上の行為をより良いものに改善し、実現できるように会社はどのような支援を行っているか。
▽質問4:取締役会や経営陣はビジネス上の行為についての適切性についての監督をどのように行っているか。また経営上の意思決定を行う際に、ビジネス上の行為の観点での適切性について検討・検証しているか。
▽質問5:組織及び組織構成員の行為をより良いものにするための施策を無効とする可能性のある活動・行動を評価しているか。
読者の皆さんの保険会社ではコンダクトリスクについての認識と対応はいかがであろうか。対応事例についての詳細はFCAのペーパーをご覧いただければと思うが、幾つか対応事例を紹介して本稿を締めくくる。
▽質問1への対応:コンダクトリスクを負の側面を持つ行為に限らず、望ましい行為が実現されないリスクを含めて特定、評価している事例。
▽質問2への対応:ビジネス部門のヘッドを含む第一線のコンダクトリスク管理についての責任を明確化している事例。
▽質問3への対応:コンダクトリスクに係るリスクアペタイトの明確化やグレーゾーンの取り扱いの実事例トレーニングを実施している事例。
▽質問4への対応:社外取締役を中心とする取締役会レベルでのコンダクトリスクやカルチャーをアジェンダとして取り扱う委員会を設置している事例。
▽質問5への対応:報酬や評価に限定せず、M&A、新商品・サービスの導入、インフラ整備など幅広い観点からコンダクトリスクへの潜在的な影響の有無を検討するワーキンググループを設置している事例。
※本稿は、保険毎日新聞2019年10月8日付掲載のコラムを転載したものです。
※本記事は、保険毎日新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。