(2)外国関連会社に係る非関連者基準の改正
二つ目の改正点として、外国関連会社に係る判定要件(経済活動基準)の一つである非関連者基準の適用に関する改正がある。保険業を営む外国関係会社が、グループの資本の効率化等の観点からグループ内再保険取引により特定の保険会社に引き受けたリスクの再配分を行うことがあるが、他方でグループ内の再保険取引については、保険引き受けによる所得を保険リスクの所在地国から別の国に容易に移転できるという意味で、租税回避リスクが高いという側面がある。このような背景から、一定の要件を満たす再保険取引に係る再保険料に限り、関連者から収入する保険料に該当しないこととする等の改正が行われた。具体的には、次のとおりである。
改正前は、非関連者基準の適用上、特定保険受託者にかかる特定保険委託者は関連者に含まないものとされていたが、今回の改正において関連者に該当することとされた上で、特定保険委託者または特定保険受託者の再保険にかかる収入保険料のうち、次に掲げる要件の全てに該当する再保険に係る収入保険料は、関連者から収入するものに該当しないこととされた。
- 特定保険委託者とその特定保険委託者に係る特定保険受託者との間で行われる再保険または同一の特定保険受託者に係る特定保険委託者の間で行われる再保険であること。つまり、同一国内で実体ある保険事業が一体経営されている保険グループ内での再保険取引ということである。
- その再保険に係る元受保険の95%以上が本店所在地国に所在する非関連者のリスクに係るものであること。つまり、保険引き受けによる所得を保険リスクの所在地国から別の国に移転する可能性が相対的に低いということである。
- 再保険を行うことにより特定保険委託者および特定保険受託者等の資本の効率的な使用と収益性の向上に資することとなると認められること。つまり、引き受けたリスクに見合う資本の保有を求める資本規制があることを前提に、引き受けたリスクをグループ内再保険を通じて再配分することで、必要以上の資本の計上を避け、再保険の当事者全体のROEの向上が図られることになるということである。
また、特定保険受託者に該当する外国関係会社がその特定保険委託者から受託した保険業に係る対価として支払いを受ける手数料等の額について、関連者からの収入保険料に該当しないこととされた。
(3)部分合算課税の対象に保険所得を追加する改正
三つ目の改正点として、BEPSプロジェクト最終報告書(行動3)「外国子会社合算税制の強化」においては、保険所得も配当や利子と同様にBEPSリスクの高い所得類型とされており、諸外国の外国子会社合算税制においても保険所得は基本的に合算対象所得とされていることを踏まえ、今回の改正で保険所得が部分合算課税の対象となる特定所得の金額に追加された。
対象となる保険所得は、次の(イ)の金額から(ロ)の金額を減算した金額とされている。
(イ)収入したまたは収入すべきことが確定した保険料および再保険返戻金の合計額から支払ったまたは支払うべきことが確定した再保険料および解約返戻金の合計額を控除した残額。
(ロ)支払ったまたは支払うべきことが確定した保険金の額の合計額から収入したまたは収入すべきことが確定した再保険金の額の合計額を控除した残額。
なお、外国金融子会社等に該当する場合には、利子や配当等の金融所得と同様に保険所得は部分合算課税の対象とされていない。
(4)適用関係
上記(1)および(3)の改正は、外国関係会社の19年4月1日以後に開始する事業年度に係る適用対象金額およびその適用対象金額に係る課税対象金額、部分課税対象金額およびその部分適用対象金額に係る部分課税対象金額ついて適用される。上記(2)の改正については、内国法人の19年4月1日以後に終了する事業年度に係る課税対象金額(外国関係会社の18年4月1日以後に開始する事業年度に係るものに限る)を計算する場合について適用される。