税と環境(2)国境炭素調整

2021-09-05

パリ協定は、各国が野心的な全体目標に合意した一方で、各国に、「国が決定する貢献(NDCs)」による個別の気候目標の設定を許容している。すなわち、このような国別ベースアプローチによって、「共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力」に沿って行動するとの原則が合意され、炭素排出削減目標レベルは各国間で異なり得ることとなっている。

そのため、特に温室効果ガスの排出削減に向けて強力な措置をとる国を中心に、いわゆるカーボンリーケージの極少化のために有効で、かつ自国内企業の競争力確保の妨げとならない気候変動対策をとることが検討されており、これらは気候政策の公正性とも関係する。
そして、これらの目標の達成可能な政策オプションとして検討されるのが、国境炭素調整(BCA)である。

国境炭素調整は、基本的には、輸入時には原産地での温室効果ガス排出に応じた炭素(関)税の課税を行う一方で、輸出時には炭素税を還付する仕組みであるが、排出量取引制度の活用も考えられている。
このような仕組みによって、国内企業に生じる問題への対応を行うとともに、規制が不十分な国に対して温室効果ガス対策を促すこととなるが、その実施に当たっては多くの課題がある。本制度導入の趣旨、対象範囲、排出される炭素の捕捉方法、既存の国際ルールとの整合性などの諸課題について、実務を踏まえた幅広い検討を行ったうえで、新たな国際的合意を形成することが求められている。

国境炭素調整については、OECDでも検討がなされており、Ⅰ概説での記述は、主にOECDペーパー「国境炭素調整の役割は何か」(2020.12)を参照している。

  1. 概説
  2. EUの炭素国境調整メカニズム
  3. 企業側の影響と対応

(全文はPDFをご参照ください。)

「月刊国際税務」2021年9月号 寄稿
PwC税理士法人
顧問 岡田 至康
パートナー 白土 晴久

※PDFは税務関連専門誌にPwC税理士法人として寄稿したものです。発行元の許可を得て掲載しておりますので、他への転載・転用はご遠慮ください。