2021-12-07
中国国家税務総局は2021年7月26日、「ユニラテラル事前確認の簡易手続きの適用に係る事項に関する公告」(国家税務総局公告2021年第24号、以下「24号公告」)を公布し、2021年9月1日より正式に施行されています。
移転価格課税に関する納税者の予測可能性を確保して、移転価格税制の適正かつ円滑な執行を図ることが事前確認(Advance PricingArrangement、以下「APA」)の本来の目的であり、納税者が確認された内容に基づいて申告を行っている限り、移転価格課税は行われません。相手国との租税条約に基づく相互協議を伴うAPA(いわゆるバイラテラルAPA或いはマルチラテラルAPA)であれば、二国間又は多国間で合意することにより、納税者の二重課税リスクを事前に排除します。
しかしながら、日中間の相互協議の現状を考えますと、バイラテラルAPAは、中国における申請の正式受理までの複雑な手続き、繰越案件が多いことによる相互協議の俎上に上がるまでの時間のロス、日中両税務当局間の著しい見解の相違による合意締結の不確実性等から、現実的に全てが最良な解決策となっているわけではありません。
そこで、中国において長期に安定した事業運営を考えると、その他の代替手段も合わせて検討することが不可欠であり、24号公告による新たな簡易手続きの導入は、(相互協議を伴わない)中国税務当局のみとのAPA(いわゆるユニラテラルAPA)も一つの選択肢として有力となる可能性を高めるものと推察されます。
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「月刊国際税務」2021年11月号 寄稿
PwC税理士法人 パートナー 黒川 兼
PwC中国 アソシエイトディレクター 渕澤 高明
※PDFは税務関連専門誌にPwC税理士法人として寄稿したものです。発行元の許可を得て掲載しておりますので、他への転載・転用はご遠慮ください。