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2021-05-10
DX投資促進税制の適用のためには、DX認定の取得を要件に含む改正産業競争力強化法における事業適応計画の認定が必要である。
認定計画に基づき2023年3月末までに取得する設備投資(ソフトウェア等)が税額控除または特別償却の対象となる。
投資による設備取得までの期間を考慮すると、DX認定取得や対象となる投資計画の検討等を開始し、事業適応計画の申請を今後速やかに行えるよう準備が重要である。
令和三年度税制改正で導入予定のDX投資促進税制は、国のDX推進のための税制優遇策であり、前述のDX認定に基づく企業のビジョンの実現・戦略の実施にあたって必要となる投資を後押しする制度である。したがって、DX推進を進める企業ではその投資の財務負担を軽減するために、こうした税制優遇策を可能な限り活用することが期待される。本章では、DX投資促進税制とその適用にあたって認定が必要となる改正産業競争力強化法における事業適応計画について説明する。
DX投資促進税制は、租税特別措置法単独での税制改正項目ではなく、産業競争力強化法の改正と不可分・連携した税制改正項目となっている。そこで、まずは産業競争力強化法の改正の概要とこれに対応する税制措置の全体像について触れることとする。
産業競争力強化法は、産業競争力の強化の基本理念を定め、規制改革の推進と産業活動における新陳代謝の活性化の促進等をその目的としている(産強法1)。今般の改正案においては、新たに「事業適応の円滑化」が「産業活動における新陳代謝」に追加され、「事業適応」の定義が設けられている。「事業適応」とは、事業者が、産業構造または国際的な競争条件の変化その他の経済社会情勢の変化に対応して、その事業の生産性を相当程度向上させることまたはその生産し、もしくは販売する商品もしくは提供する役務に係る新たな需要を相当程度開拓することを目指して行うその事業の全部または一部の変更(改正産強法2⑫)と定義されている。さらに「事業適応」は、その内容により次の3つに分類され、それぞれについて事業適応の実施に関する指針の制定(改正産強法21の13)と実施指針に基づいた事業分野別実施指針の制定(改正産強法21の14)、事業適応計画の作成と認定(改正産強法21の15)等が規定されている。
①成長発展事業適応
②情報技術事業適応
③エネルギー利用環境負荷低減事業適応
これらの「事業適応」による「産業活動における新陳代謝」は、産業競争力強化法等の改正の理由の一つである、「新型コロナウイルス感染症の影響、急激な人口の減少等の短期及び中長期の経済社会情勢の変化に適切に対応して、我が国産業の持続的な発展を図るため、情報技術の進展、エネルギーの利用による環境への負荷の低減等に対応する事業変更を行おうとする者についての計画認定制度の創設」に対応するものである。そして、それぞれの事業適応に対応する税制措置・課税の特例として、①繰越欠損金の控除上限の特例、②DX投資促進税制、③カーボンニュートラル投資促進税制が、今回の改正租税特別措置法で措置されている(改正措置法66の11の4他:認定事業適応法人の欠損金の損金算入の特例、改正措置法42の12の7他:事業適応設備等を取得した場合等の特別償却または法人税額の特別控除)。
以上の全体像をまとめたものが図表5である。
DX投資促進税制を含め、事業適応に対応する課税の特例を受けるには、「事業適応計画」を作成し、経済産業大臣に提出してその認定を受けることが前提となる。事業適応計画には、①事業適応の目標、②事業適応の内容および実施時期、③事業適応に係る経営の方針の決議または決定の過程を記載することとされている(改正産強法21の15③)。より具体的な記載内容や計画書のフォーマットおよび必要な添付資料等は、今後の法律の成立に合わせて制定される実施指針、関連する政令および省令等において明らかにされる予定である。
また、申請された「事業適応計画」が、以下の認定要件をすべて満たす場合には認定が行われ、認定事業適応事業者(経済産業大臣により「事業適応計画」の認定を受けた事業者)の事業適応計画の内容は公表されることとなる(改正産強法21の15④⑤)。
【認定要件】
なお、2以上の事業者が事業適応を共同して行おうとする場合には、共同して事業適応計画を作成し、その認定を受けることができることとされている(改正産強法21の15②)。 したがって、企業グループが持株会社体制となっている場合は、グループの親会社であるホールディングス(持株会社)と実際の事業会社である子会社とが共同で事業適応に関する計画を作成し、共同・連名にて申請を行うことになると想定される。
DX投資促進税制に関連する事業適応は、「情報技術事業適応」と分類・定義されるものであり、「情報技術の進展による事業環境の変化に対応して行うもの」とされている。また、情報技術事業適応にかかる実施指針について、以下の事項を制定するものとされている(改正産強法21の13②二)。
課税の特例として、「認定事業適応計画に従って実施される情報技術事業適応(生産性の向上又は需要の開拓に特に資するものとして主務大臣が定める基準に適合することについて主務大臣の確認を受けたものに限る。)を行う認定事業適応事業者が、当該情報技術事業適応の用に供するために取得し、又は製作した機械及び装置、器具及び備品並びにソフトウェア並びに当該情報技術事業適応を実施するために利用したソフトウェアについては、租税特別措置法で定めるところにより、課税の特例の適用があるものとする(注:下線筆者)」とされている(改正産強法21の28②)。
前記の下線部分である「主務大臣が定める基準」というのは、現在確認できる法案においては明らかではないものの、財務省および経済産業省の公表資料からは図表6のような内容であることが想定されている。
図表6の基準(要件)の1つに「情報処理推進機構によるDX認定」が定められているため、DX投資促進税制の適用にあたっては、会社がすでにDX認定を受けているということが前提となる。企業変革(X)要件に関しては、投資意思決定の前段階でこうした経営指標の改善が計画されていることが望ましいが、要件に合致する形で経営指標の改善が検討されていない場合、別途事業適応計画の申請の段階で要件に充足することを示す投資効果の指標を計算することが必要になるため注意が必要である。
前述のとおり、DX投資促進税制は、改正産業競争力強化法における事業適応計画の認定を受け、かつDX認定の取得やその他の事項について主務大臣の確認を受ける事が適用の前提となっている。まずは当該税制の概要について、①対象法人、②対象期間、③対象設備投資、④政策減税措置、⑤その他事項の順に税制改正法案に基づいて説明をする(執筆時点において政省令は未公表である)(図表7参照)。
①適用対象法人の要件
要件は次のとおりである。
②適用対象期間
③適用対象となる設備投資の内容
適用対象は、認定を受けた事業適応計画に従って実施される設備投資であることが要件とされている。つまり、情報技術事業適応に係る事業適応計画に記載された設備投資案件であることが必要であり、情報技術事業適応のために用いるための設備投資であることが前提である。
具体的な資産内容は図表8のとおりである。設備投資減税であることから、税務上資産取得として取り扱われるものが対象であり、税務上も損金処理される費用項目は対象ではない。
こうした設備対象からも、DX推進のためのソフトウェアを中心とした設備投資が対象になると理解できる。ソフトウェアの取得に関しては、特に自社制作のソフトウェアでは税務調査で資産計上の範囲が議論になることもよくみられるが、DX投資促進税制の対象となることも視野に入れて資産計上の範囲を合理的に判断することになると考えられる。
④政策減税措置
対象資産の事業供用事業年度において、図表9のように特別償却または税額控除のいずれかを選択適用できる。なお、いずれの場合も対象金額の上限は特定ソフトウェア・事業適応繰延資産・情報技術事業適応設備の合計額で300億円となっている。
⑤その他の事項
その他の主な事項は次のとおりである。
執筆時点(政省令は未公表)においては関連規定および計画認定等の手続等の詳細は不明な状況であるが、これから本税制の適用は2023年3月31日までに取得した対象資産に限られるため、今後予定される改正産業競争力強化法の施行後、速やかに事業適応計画の申請を行い、計画に基づく対象資産取得について税額控除等の適用を受けることが望ましい。そこで、図表10のような点に留意が必要ではないかと考えられる。
本稿は、「旬刊経理情報」2021年4月10日号で掲載された記事を転載したものです。