
Worldwide Tax Summary 2025年2月号
本稿では、海外税制(オーストラリア、ベトナム、オーストリア、ハンガリー、EU、アフリカ、OECD)の動向を解説しています。(月刊国際税務 2025年2月号 寄稿)
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2024-01-23
2023年10月11日、OECDは、第1の柱・利益Aに関するガイダンスのパッケージ(多数国間条約(MLC)テキスト(7部53条9附属書から成る)とその解説文書、利益Aと利益A関連諸問題に係る税の安定性の適用に関する理解(UAC)、および第1の柱の経済的影響評価のアップデート)を公表した(注1)。未解決の課題が残されており、この段階では、各国・地域が本MLCに署名できる状況ではない(注2)。OECDはこれまでに、利益Aに関する9つの協議文書を公表している(第1回はレベニューソーシングとネクサス規定、第2回は課税ベースの決定に関する規定、第3回は一般的な適用範囲に関する規定、第4回は採掘産業の適用除外、第5回は規制金融サービスの適用除外、第6回と第7回は税の安定性、第8回はユニラテラルの措置に関するガイダンス、第9回は執行と税の安定性の側面を取り上げた)。これらの分野の多くで進展が見られる一方、重要な課題がいくつか残っており、多くの規定が非常に複雑なままであることに改めて留意が必要である。
本MLCには、利益Aの実施規定に加えて、すべての企業に係る既存のデジタルサービス税(DSTs)および関連する類似の措置(注3)を撤回すること、および将来にわたってそのような措置をとらないことを約束することを求める規定が含まれている。また、対象となる多国籍企業(MNEs)に対して重要な経済的プレゼンス(または類似のネクサス)条項を適用しないことへのコミットメントも求めている。適用範囲に関しては、若干の適用緩和がなされている。採掘業(鉱業など)や金融サービス業などでは、利益Aの規定の適用範囲外となる要件が簡素化された。防衛産業は、利益Aの規定の適用範囲から完全に除外される。また、新たに自立型の国内事業の免除が規定され、特定の国・地域から得られる財務的結果を除外することが認められる。マーケティング・販売活動利益に係るセーフハーバー(MDSH)および二重課税の除去において源泉税を考慮することについてはほぼ合意に達している一方、未解決の課題もあり、特定の国々が異議を唱えている。
約140のIF(包摂的枠組み)参加国は、本MLCのテキストを公表することには合意したものの、まだ正式署名の段階ではない。本MLCでは、レベニューソーシング、ネクサス、課税ベースなど多くの重要な技術的な分野の進展が確認できる一方、幾つかの特定の項目について、異なる見解を示している国(ブラジル、コロンビア、インド)がある。なお、米国では、本MLCに関する60日間(2023年10月11日から12月11日まで)の公開協議を実施しており、特にMLC全体のレビューにより特定される新たな課題、実施・執行上の課題(簡素化と技術的正確性のバランスを含む)、誤りへの対処やMLC規定の実施に係る技術的調整などについて利害関係者のコメントを募集している。
(注1)OECDは、上述の第1の柱・利益AのMLCとその関連文書の公表に合わせて、第2の柱・グローバルミニマム税の各国・地域への導入支援を目的とした「ミニマム税実施ハンドブック」も公表した。なお、第1の柱・利益B(基本的な販売マーケティング取引に係る移転価格)に関する追加ガイダンスの公表はない(IFで、2024年前半までに最終ガイダンスを示せるよう、公開協議後も作業を継続している)。
(注2)本MLCの発効(本MLCの第48条)に際しては、30以上の国・地域の批准書等の寄託が必要であるほか、各国・地域に割り当てられた全999ポイント(附属書I)中、600ポイント以上に相当する国・地域の批准等が必要になる。各国・地域への割り当てポイントは、米国486、中国94、香港88、フランス56、英国49、日本47、ドイツ45、スイス34、アイルランド21、インド・オランダ・スペイン各15、韓国11、ベルギー9、カナダ6、デンマーク4、メキシコ・サウジアラビア各2、その他の国・地域は0の合計999ポイントとなっており、米国の批准等が必須になるとみられる。
(注3)オーストリア、フランス、イタリア、スペイン、チュニジア、トルコ、英国のデジタルサービス税、およびインドのオンライン広告サービスに係る平衡税(Equalisation levy)・電子商取引に係る平衡税、の8か国9措置が挙げられている。
出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2023年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2023年10月3日、OECDの包摂的枠組み(IF)は、第2の柱に関連する租税条約上の最低課税ルール(STTR)を実施するための多国間協定(MLI)の交渉が合意に至ったことを公表した。本STTR MLIの本文(テキスト)は、解説書、概要書、FAQとともに、OECDのウェブサイトに掲載されている。2023年10月2日現在、本MLIはすべての国・地域の署名が可能となっている(「BEPS防止措置実施条約」のように留保はできない)(注1)。本STTRは、二国間租税条約に基づく関連事業体間の特定のクロスボーダーの支払い(配当を除く)について、受入国の名目法人税率が9%未満(免税や税額控除などの課税ベースの軽減を調整後)である場合(注2)、源泉地国が追加税を課すことを認めるものである(2023年7月17日に公表されたモデル租税条約と付随コメンタリーについて、本誌2023年9月号参照)。なお、本STTR MLIは、先行する国連のルール(UN STTR)よりも適用範囲がはるかに狭い。UN STTRは適用状況の定義が明確でなく、規定の内容の多くは二国間交渉に委ねられている。今後は、2種類のSTTRが併存する可能性がある。本STTR MLIはIF参加国・地域の一部によって実施・適用されるほか、二国間租税条約の一部として実施・適用される可能性もある(現在、70超のIF参加国・地域が、本STTRを条約に含めることを求める資格を有している)。一方、発展途上国は二国間租税条約の一部にUN STTRの導入を求めることができるが、これはすべて二国間の交渉と合意が必要である(OECDのFAQの質問5では、IFにおける第2の柱STTRとUN STTRの関係(違い)について解説している)。STTRは、多国籍企業グループ内の国際投資に係る税引き後の損益に大きな影響を与える可能性があり、今後の各国・地域の動きを注視する必要があろう。なお、本STTR MLIは、早ければ、2024年8月1日以後開始課税年度から適用される可能性がある(2023年10月にOECDに批准書等寄託の場合)。
(注1)本STTR MLIは、既存の二国間(多国間)条約を修正するのではなく、STTRおよびその関連規定が、Annexとして加わることになる。Annex IにはSTTRが含まれる。Annex IIは純所得ベース以外の方法で計算する税を適用する場合、Annex IIIは法人所得税を所得稼得時でなく利益分配時に課税する場合に、それぞれ追加される。また、オプションとして、Annex IV(年金基金の定義を含める場合)およびAnnex V(発展途上国が先進国になった場合にSTTRを一時停止(逆の場合にはSTTRを開始)するためのサーキットブレーカー規定)がある。
(注2)二国間租税条約の他の規定で認められている場合、より低い税率が適用される可能性がある。
出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2023年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2023年10月3日、BMFは、グローバルミニマム税(第2の柱)に係る法律の公開協議草案を公表した(協議期間は、2023年10月20日まで)。本新規則は2024年1月1日から発効するとされている。本ミニマム税法は、グローバルミニマムレベル課税に関するEU指令、およびOECDモデルルール(移行期間における執行ガイダンス/セーフハーバー規定を含む)の枠組みを、国内法に置き換えるものである。主なポイントとして、以下が含まれる。
適用範囲 - 過去4会計年度のうち少なくとも2会計年度の純売上高が7億5千万ユーロ以上の大企業グループのみが適用範囲に含まれる(純粋な国内企業グループであるか、多国籍企業グループであるかは問わない)。
トップアップ税の課税 – 15%のグローバルミニマム税には、所得合算ルール(IIR)、および軽課税所得ルール(UTPR)(2025年から適用)、が含まれる。実効税率が15%未満の国内構成事業体について、IIRおよびUTPRの前に、国内トップアップ税(QDMTT)が導入される。これにより、国内の課税ベースが国外の最終親事業体の所在地国・地域に流出することが防止される。一方、本国内トップアップ税により、外国企業グループのオーストリアの構成事業体は、関連するオーストリアのコンプライアンス義務も負うことになる。
セーフハーバー規定 – 執行の簡素化のため、本ミニマム税法には、以下のセーフハーバー規定が含まれている。
セーフハーバー規定の適用については、国・地域別のアプローチがとられる。セーフハーバーが認められた場合、当該国・地域のトップアップ税額は零に減額され、一般的な枠組みに従って実効税率を算定する必要はなくなる。ただし、第2の柱に係る税務申告書の提出義務などのコンプライアンス義務には影響がない。移行期間CbCRセーフハーバーは、最初の3会計年度(2024年から開始)にのみ適用される。これらのテストにCbCRと財務情報(企業内ですでに利用可能)を利用することで、大幅に簡素化される。
出典:PwC Austria, Austrian Tax News
「月刊 国際税務」2023年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2023年10月3日、財務省は、2022年12月14日付の多国籍企業グループおよび大規模な国内グループに係るグローバルミニマムレベル課税の確保についてのEU指令の国内法への取り込みに関する公開協議を開始した(10月31日までコメント募集)。財務省は、ギリシャ語で法案を公表している。法案本文(テキスト)は概ね本指令に沿ったものであり、これまでに公表されたOECD/G20包摂的枠組み(IF)の執行ガイダンスの特定要素を考慮した追加的なテキスト(短期ポートフォリオ持分に係る簡素化など)が含まれている。本法案によると、2024年から適格所得合算ルール(QIIR)、2025年から適格軽課税所得ルール(QUTPR)および国内ミニマムトップアップ税が適用されよう(法人所得税やその他の関連税とは別途の追加税の導入)。なお、国内ミニマムトップアップ税について、QIIRやQUTPRと同様、被支配外国法人(CFC)課税に係るプッシュダウン規定が含まれている(詳細は省令で規定の見込み)(注1)。移行期間CbCRセーフハーバーなども規定するとみられる。国際海運所得に関して、本法案では、トン数税制などの対象となる活動を幅広く除外するよう、適用除外の範囲を拡大しているが、現在までに公表された本指令、モデルルールおよび執行ガイダンスではこの特定の除外の拡大については規定しておらず、したがって、制定法の最終版には含まれない可能性がある。一般的濫用防止規定(GAAR)は、本法案には含まれていない。これは、同じくGAARを明確に規定していない本指令/モデルルールに沿ったものである。明確に禁止はされていないため、今後GAARの適用を選択する国・地域が出てくる可能性はある(注2)。本法案では、既存税法の一部としてではなく、独自の執行規定を持つ独立した税法を想定しているため、既存の税法におけるGAARが自動的に適用されるわけではない。
(注1)2023年2月の執行ガイダンス(モデルルール10.1条関連パラ118.30)(本誌2023年4月号参照)によると、適格国内ミニマムトップアップ税(QDMTT)の一要件として、国内の構成事業体(CE)は、国内のCFC税制における外国CEの所得に係る税額を除外しなければならないとするほか、一般的にCFC税制の下でCEの所有者が支払った国内CEに配分可能なクロスボーダーの税額を除外しなければならない、とされている。なお、ハンガリーでは、2023年10月18日、財務省が、グローバルミニマム税(GloBE)に係る理事会指令(EU)2022/2523およびOECDモデルルールの実施法案をパブリックコメントのために公表している(2024年1月1日にIIR・QDMTT、2025年1月1日にUTPRが適用開始見込み)が、この点を考慮している(外国親会社に課されるCFC(被支配外国法人)税は、QDMTTの実効税率の計算上、配分されない)。
(注2)たとえば、カナダの財務省が2023年8月4日に公表した第2の柱の法案の中で、一般的租税回避防止規定(所得税法第245条)の適用が提案されている(本誌2023年10月号参照)。
出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2023年10月9日、連邦政府は、連邦予算について合意に達した。以下を含む措置が公表されている。
以上のほか、投資控除の改正(持続可能で社会的責任のある投資に対する控除の大幅拡大)、軽課税国・地域に係る対応強化(会計検査院(Rekenhof/Cour des Comptes)報告書に基づく)、長期リース(erfpacht/emphytéose)に係る登録免許税引き上げ(2024年1月1日から5%(従前は2%))、非営利団体・法人所得税の特則関連・スポーツ部門やブローカーに対する税務調査の強化、一定要件に基づく解体・再建築への6%のVAT税率適用(2024年1月1日以後)がある。
本合意措置について、法案作成および議会手続きを経て、官報(Belgisch Staatsblad/Moniteur belge)に掲載後、発効となる。
出典:PwC Belgium
「月刊 国際税務」2023年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2023年10月17日、EU理事会において、欧州財務大臣は、非協力的な国・地域のリスト改訂に関するEU行動規範グループ(注)の勧告を承認した。アンティグア・バーブーダ、ベリーズ、セーシェルがAnnex I(ブラックリスト)に追加された一方、英領バージン諸島、コスタリカ、マーシャル諸島が前回2023年2月時点のブラックリスト(本誌2023年4月号参照)から削除された(それぞれ、情報交換の改善、有害な国外源泉所得免除制度の見直し、実体要件の効果的な実施の確保に対応)。また、Annex II(グレーリスト)も改訂され、タイ、モントセラト(いずれも、国別報告制度を実施)、ヨルダン、カタール(いずれも、有害税制を改正)がグレーリストから削除された。
(注)EU行動規範グループは、1998年以来、数百もの税制をレビューしており、EU行動規範の遵守状況を監視している。今後、EUリストの地理的範囲を拡大するほか、受益所有権(beneficial ownership)、公正な課税、効果的なミニマム課税などの追加基準の採用も視野に入れている。
出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2023年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
2023年10月17日、EU理事会は、租税分野における執行協力に関するEUの規定を改正する指令(DAC8)を採択した(注)。本改正は主に、暗号資産および電子マネー取引による特定の収入に関する報告および自動的な情報交換、ならびに富裕層個人に係る事前タックスルーリング規定、に関連する。登録・報告義務の範囲を拡大し、税務当局間の全体的な執行協力を改善することで、既存の法的枠組みを強化することを目的としている。本指令は、本理事会において、加盟国の全会一致で採択された(2023年10月24日に官報掲載、11月13日(公布日から20日目)に発効)。加盟国は2025年12月31日までに本新規定を国内法に導入する必要があり、ほとんどの規定は2026年1月1日から適用されることになる。
(注)2023年5月16日のECOFIN財務相会合での合意内容について、本誌2023年7月号参照。なお、初期の草案ではペナルティーの調和(下限の規定)が図られていたが、その選択は、各加盟国の裁量に委ねるとしている(だたし、効果的、比例的、かつ抑止的なものである必要)。
出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2023年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
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