
Worldwide Tax Summary 2025年3月号
本稿では、海外税制(米国、OECD、国連、イタリア)の動向を解説しています。(月刊国際税務 2025年3月号 寄稿)
2025-01-31
2024年10月30日、財務相は、2024年度秋季予算案を公表した。事業関係税として、以下が含まれる。
法人税率 – 標準法人税率25%を含め、改正はない。
資本控除(Capital allowances) – 恒久的な全額即時償却、100万ポンドの年間投資控除、減耗(writing down)控除、および構造物および建物に係る控除を維持する。また、財政状況が許す限り、全額即時控除をリース用資産の購入にも拡大することを検討する。
研究開発控除 – 既存の税率の改正はない。
パテントボックス税制 – 現行制度を維持する。
移転価格 – 政府は、2025年春に移転価格、恒久的施設(PE)、および迂回利益税に関する規定の改正についてさらに協議するとしている。費用分担取決め(cost contribution arrangements)も見直される。
OECD第1の柱および第2の柱 – 政府は、第1の柱および第2の柱に係る規定の導入に対するコミットメントを再確認している。第2の柱を考慮して、クロスボーダー活動に対する税規定の簡素化または合理化を検討する。また、2024-25年の財政法案に第2の柱の軽課税所得ルール(UTPR)の実施を含めることとし、2024年12月31日以後に開始する会計期間から適用するとしている。
ビジネスレート – 2025-26年分について、イングランドの小売、接客、レジャー(RHL)用の不動産使用に係る75%の軽減措置(上限11万ポンド)を40%に縮減する。2026-27年分より、乗数に係る改正も見込まれる。
エネルギー関連超過利潤税(Energy Profits Levy: EPL)および投資控除 – 以前の公表に従い、EPLの税率は3%引き上げられて38%になり、29%の投資控除は廃止される(2024年11月1日から)。さらに、脱炭素化控除率は80%から66%に引き下げられる。
以上の他、企業や投資家に予測可能性、安定性、確実性を提供すること(税制の簡素化や合理化)を目的とした見直し(2025年春の協議を含む)を進める(資本控除、研究開発控除、土地修復控除、法人税に係る執行(主要プロジェクト投資家に係る事前確認の向上)など)としている。その他の措置としては、グリーン初年度控除の延長(ゼロエミッション車および電気自動車充電ポイントに対する適格支出に係る100%初年度控除を、法人税は2026年3月31日まで、所得税は2026年4月5日まで)、代替金融(Alternative Finance)に係る改正(2024年10月30日から、従来の金融取引との税務上の取扱いを整合)などもある。Reserved Investor Fundについて、契約スキーム(Contractual Scheme)を導入し、共同所有認可契約スキーム(Co-ownership Authorised Contractual Schemes)に関する税規定を一部改正する。
その他の税制関係
個人関係税として、雇用者の国民保険拠出(NICs)料率の13.8%から15%への引上げ(2025年4月6日から)や雇用主NICs賦課基準額(Secondary Threshold)の年間9,100ポンドから5,000ポンドへの引下げ(その後CPIにより増加)(2025年4月6日から2028年4月6日まで)などがある。個人所得税に関して、標準税率や閾値に変更はない(以前の公表に従い、現在の閾値は2028年4月まで凍結されるが、その後は、インフレに応じて引き上げられる)。一方、現物給与課税や、国外勤務所得に係る救済(Overseas Workday Relief)(非定住(non-domiciled)者課税の改正関連。適格給与所得の30%または年間30万ポンドのいずれか低い方に制限される一方、期間は3年から4年に延長)に係る改正などがある。非定住者に対する送金ベースの課税は廃止され、2025年4月6日から居住地(residence)ベースの制度に置き換えられる。キャピタルゲイン税(CGT)に関して、標準税率が(従前の10%/20%から)18%/24%に引き上げられる(2024年10月30日以降の譲渡から)などの改正がある。キャリードインタレストに適用されるCGT税率は32%に引き上げられ(2025年4月6日から)、その後、同制度は所得税の枠組みに移行する。間接税関連では、付加価値税(VAT)について、私立学校の授業料(私立学校が提供する寄宿サービスを含む)に係る20%のVAT導入(2025年1月1日から)や、ビジネスレートについて、私立学校への減免の廃止(2025年4月から)などがある。環境対策関連では、電気自動車(EV)、航空旅客税(APD)、気候変動税(CCL)、炭素価格サポート、プラスチック包装税(PPT)、埋立(廃棄物関連)税(Landfill tax)に係る改正などがある。炭素国境調整メカニズム(CBAM)は2027年1月1日に導入され、アルミニウム、セメント、肥料、水素、鉄・鉄鋼セクターから輸入される商品に炭素価格が設定されよう(登録閾値は5万ポンド)。なお、その他の諸措置として、以前の公表に従って、歳入関税庁(HMRC)には5千人超のコンプライアンススタッフと債務管理スタッフの雇用に対してかなりのリソースが割り当てられ、HMRCのシステム近代化(納税者サービス、相続税システムなど)にも投資されよう。HMRCが課す未払税債務に対する利子率は、1.5%ポイント引き上げられる(2025年4月6日から)。既存の慈善団体(Charities)に係る税制は、濫用防止の観点から強化される(2026年4月から)。セカンドホームに対する土地印紙税(SDLT)の付加税は、5%に引き上げられる(2024年10月31日から)。
出典:PwC UK
「月刊 国際税務」2024年12月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
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