月刊国際税務 Worldwide Tax Summary 1月号

2023-02-09

2023年1月号Worldwide Tax Summaryトピックス

  1. 秋季声明(英国)
  2. 2022年秋季連邦経済声明(カナダ)
  3. FSIE制度の修正法案を公表(香港)
  4. 第2の柱の法案を公表(オランダ)
  5. 外国税額控除規則案(米国)
  6. 公開国別報告(PCbCR)指令を国内法に導入(ルーマニア)
  7. 欧州財務相会議、事業課税に関する行動規範の改訂を承認(EU)

秋季声明(英国)

2022年11月17日、秋季声明(Autumn Statement)が公表された。

事業関係税

法人税 - 政府は、これまでに、2023年4月から法人税の税率を現在の19%から25%に引き上げる旨公表している。

銀行および住宅金融組合の利益に係る付加税(Banking Corporation Tax Surcharge) - 法人税率25%への引き上げの結果、2023年4月から、本付加税の税率が8%から3%に引き下げられる。

エネルギー関連超過利潤税(Energy Profits Levy: EPL)および投資控除 - 2023年1月1日からEPLの税率が10%ポイント引き上げられ35%になる。投資控除は、すべての投資支出(脱炭素化支出を除く)に対して29%に引き下げられる。

発電事業者税 (Electricity Generator Levy: EGL) - 低炭素の英国発電からの特別利益に対して、一時的に45%の税率で新たなEGLが課される。本課税は、2023年1月1日以後に生じる特別利益に適用される。

研究開発(R&D)税制の改革 - 2023年4月1日以後の支出について、研究開発支出税額控除(RDEC)の率が13%から20%に引き上げられる一方、中小企業(SME)追加控除が130%から86%に、SME税額控除率が14.5%から10%に引き下げられる。単一のR&Dスキームの設計に関するコンサルテーション(協議)が開始される。政府は、R&D税制を改革するための法案(今年初めに草案を公表済)を導入予定であり、適格支出のデータおよびクラウド費用への拡大、英国内イノベーションへの支援の集中、濫用をターゲットとしつつコンプライアンス向上、を図る。

オーディオビジュアル創造関連特典措置の改革に関する公開協議 – 英国文化に係るコンテンツ制作を奨励し、オーディオビジュアル分野の成長を支援するための公開協議が開始される予定である。

投資区域 - 政府は、投資区域プログラムを、最も潜在力の高い数少ない知識集約型成長クラスターに絞る。これらのクラスターを特定するための作業が行われており、今後数か月のうちに公表見込みである。

電気自動車用充電ポイントの初年度控除(FYA) - 電気自動車用充電ポイントのFYAについて、法人税は2025年3月31日まで、所得税は2025年4月5日まで延長見込みである。

迂回利益税(Diverted Profits Tax) - 2023年4月以後、迂回利益税の税率が25%から31%に引き上げられる。

OECD第2の柱 - 政府は、2023年12月31日以後開始会計期間から、グローバルでのミニマム法人税率に関するOECD第2の柱のルールを導入する。その内容は以下の通りである。

  • 英国本拠の大規模多国籍企業グループに対し、国外事業の実効税率が15%未満の場合にトップアップ税額の支払いを求める所得合算ルール(IIR)を導入する。
  •  適格国内ミニマムトップアップ税(QDMTT)ルールを補完的に導入し、大企業グループ(専ら英国内で事業を行うものを含む)に対し、英国事業の実効税率が15%未満の場合に、トップアップ税額の支払いを求める。

政府は、バックストップとなる軽課税所得ルール(UTPR)を英国で実施する意向であるが、早くても2024年12月31日以後開始会計期間からの適用となる。

移転価格の文書化:マスターファイル/ローカルファイル - 2023年4月より、英国で事業を行う大規模多国籍企業は、OECDの移転価格ガイドラインで規定された標準的なフォーマットで移転価格文書を保管・保持することが求められる(マスターファイルおよびローカルファイル)。HMRC(内国歳入庁)は、Summary Audit Trail(移転価格結果に至るまでに事業者が行った作業の概説)について引き続き協議する予定である。

国民生活賃金(NLW) - 2023年4月1日から23歳以上の国民生活賃金は9.7%引き上げられ、時給10.42ポンドとなる。23歳未満と実習生にはより低いレートが適用される。

国民保険料(事業主賦課基準額(Secondary Threshold)) - 第1種(Class 1)被用者に係る国民保険料(事業主賦課基準額)は、2023年4月から2028年4月まで9,100ポンドで固定される。

HMRC のコンプライアンスに関するリソースの追加 - 政府は今後5年間で7,900万ポンドを追加投資し、HMRCがより多くの深刻な税不正事案と富裕層納税者の税コンプライアンスリスクに対処するために追加人員を配置できるようにする。この投資により、今後5年間で7億2,500万ポンドの追加税収が見込まれる。

個人関係税

所得税の閾値 - 個人の所得控除(personal allowance)は 12,570ポンド、40%の高税率が課される閾値は50,270ポンドで、いずれも2028年4月まで据え置かれる。

所得税の追加(最高)税率(ART) - 2023年4月6日より、45%のARTの閾値が150,000ポンドから125,140ポンドに引き下げられる。

国民保険の閾値 - 主な閾値は2028年4月まで据え置かれる。

相続税の非課税枠 - これらは2028年4月まで据え置かれる。非課税枠は325,000ポンド、住宅非課税枠は175,000ポンドに据え置かれる(住宅非課税枠は、相続資産額2百万ポンド超から漸減)。

配当控除 - 2023年4月から配当控除が2,000ポンドから1,000ポンドに、さらに2024年4月から500ポンドに減額される。

キャピタルゲインの年間免除額 - 2023年4月から免除額が12,300ポンドから6,000 ポンドに引き下げられ、2024年4月からはさらに3,000 ポンドに引き下げられる。

株式交換(キャピタルゲイン税) - 租税回避防止法規定が導入され、2022年11月17日から、英国法人が関係する株式交換があった場合において、英国に住所地を持たない個人(non-UK domiciled individuals)が、特定の非英国法人から生じる配当や利益に関して送金時課税基準を主張できなくなる。

年金の「トリプルロック」 - 公的年金支給額の伸び率をインフレ率、賃金上昇率、2.5%の3指標のうち最も高いものとする「トリプルロック」制度に関して、4月から公的年金がインフレ率に合わせて増加する。

その他の税制改正

以上のほか、土地印紙税(SDLT)関連の改正(2022年9月23日に施行された非課税閾値の引き上げ(125,000ポンド→250,000ポンド(最初の購入は300,000ポンド→425,000ポンド))は2025年3月まで)や、ビジネスレート関連の改正(2023年4月1日から、イングランドのビジネスレート(固定資産税)について前回の再評価(2017年)以降の不動産価値の変化を反映して更新。ターゲットを絞った支援パッケージを導入など)がある。間接税・関税関連では、VAT(付加価値税)の登録・登録解除の閾値据え置き(2026年4月まで現在の85,000ポンド)、電気自動車に係る自動車税(VED)(2025年4月より、電気自動車、バン、オートバイは、ガソリン車やディーゼル車と同様にVED課税対象)、オンライン売上税(OST)(本誌2022年5月号参照)を導入しない旨の政府決定。近日中にOSTコンサルテーションに対する回答を公表予定)、輸入関税の停止(100超の品目について、2年間輸入関税を撤廃)がある。

出典:PwC UK
「月刊 国際税務」2023年1月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

2022年秋季連邦経済声明(カナダ)

2022年11月3日、フリーランド副首相兼連邦財務大臣は、2022年秋季連邦経済声明(2022 Federal Fall Economic Statement)を公表した。本声明では、法人税や個人所得税の税率変更はないが、以下のような内容が含まれる。

  • クリーンテクノロジーとクリーン水素製造のための投資税額控除を導入(2023年連邦予算公表時に発効)
  • 2024年1月1日から適用される、カナダの上場企業による自社株買いに対する新税の提案
  • 以前に公表された国際的な税制改革措置の状況について最新情報を提供
  • 2022年後に行われる取引について、住宅用不動産のフリッピング(一定の転売)に係るルールを完成前物件の譲渡(assignment sales)に拡大

また、財務省は、過大利子・金融費用の制限(EIFEL)制度に関する改正法案を公表し、カナダの義務的開示ルールの強化案の一部について新たな発効日を公表した。

事業関係税措置

環境インセンティブ

クリーンテクノロジーに係る投資税額控除 – 本声明によると、還付可能なクリーンテクノロジー投資税額控除が導入される。本税額控除は、2023年連邦予算の公表日以降に取得され使用可能となる適格な新規設備の資本コストの30%に相当する。一定の労働に係る要件(財務省が利害関係者(ステークホルダー)と協議の上決定)を満たす申請者は、税額控除率全額が適用され、それ以外の場合は、20%の控除率が適用される(税額控除は、2032年から2034年にかけて漸減予定)。

クリーン水素に係る投資税額控除 – 本声明では、クリーン水素製造のための投資税額控除を進めるという政府の意向(2022年連邦予算で表明)を確認している。
投資税額控除は還付可能で、2023年連邦予算公表日現在行われている適格投資に適用され、2030年後は段階的に廃止予定である。本控除には一定の労働に係る要件が付され、この要件を満たす申請者は最大40%の率で控除を受けることができる(それ以外は30%までとなろう)。財務省は、本税額控除案の実施に関するコンサルテーション(協議)を開始予定である。

自社株買いに対する課税

本声明では、最近米国で導入された措置と同様、カナダ国内の上場企業によるあらゆる種類の自社株買いの純額に対して2%の課税が提案されている。本新税の詳細は2023年連邦予算で公表され、2024年1月1日施行予定である。

過大利子・金融費用の制限(EIFEL)制度

財務省は、昨年春の最初の協議期間中に寄せられた意見に基づき、EIFEL法の草案を大幅に修正し、公表した。EIFELルール案では、特定の納税者が課税所得の計算において控除できる純利子・金融費用の額を、EBITDAの一定割合に基づき制限する。本ルールは、2023年9月30日後開始課税年度(以前は2022年後開始課税年度)からの適用が提案されている(2023年1月6日まで、改正法案に対する意見を募集)。

国際的な税制措置

デジタルプラットフォーム事業者の報告ルール - カナダは、デジタルプラットフォームによる所得報告について、OECDのモデルルールを導入する意向である。財務省は、OECDモデルルールをカナダ所得税法に取り込むための法案を公表した(2023 年 1 月 6 日までコメント募集)。

第1の柱(課税権の再配分) - 本経済声明では、新制度の技術的なルールの確立に大きな進展があり、OECDは引き続き公開協議を実施するとしている。包摂的枠組みでは、第1の柱を実施するための条約を2023年前半に署名できるよう多国間交渉を完了させ、2024年の発効を目指している。

第2の柱(グローバルミニマム税) - 本経済声明では、カナダがグローバルミニマム税に取り組むことを確認し、引き続き、国際的なパートナーと緊密に協力して、タイムリーに実施されるよう調整された実施フレームワークを策定することを表明している。

個人関係税措置

住宅用不動産フリッピングルール(RPFR) - 2022年連邦予算で公表されたルール案では、12か月未満の所有住宅用不動産の特定の処分から生じる利益は事業所得とみなされよう。本声明では、RPFRを完成前物件の譲渡による住宅用不動産の購入権利の処分から生じる利益にも拡大する。本改正案を含め、RPFRは、2022年後に行われる取引に適用される。

その他 - 以上のほか、カナダ労働者給付金(Canada Workers Benefit)関連の改正や、高所得者ミニマム税の改正などが見込まれる。

その他の税措置

義務的開示ルール - 財務省は、義務的開示ルールの強化案を、制定法が国王の裁可を得た日(以前は2022年後に締結される取引)から実施すると公表した。特定法人に係る不確実な税務処理(uncertain tax treatments)の報告義務は、これまで通り2022年後開始課税年度からの実施とし、罰則は制定法案の国王裁可によってのみ適用されよう。
本声明では、2022年連邦予算で公表された措置やその他の既公表の措置(2022年8月9日公表法案、ハイブリッドミスマッチ取決め(2022年4月29日法案)、ミューチュアルファンドトラストの償還(信託・投資主の二重課税調整)関連・当局(CRA)の税務調査関連・EIFEL・暗号資産マイニング(2022年2月4日法案)、デジタルサービス税(2021年12月14日法案)を含む)について、協議を踏まえ修正しながら進めるとしている。また、政府は、既発表の協議(移転価格(2021年連邦予算)および一般的租税回避防止ルール(2022年8月9日付協議文書))を進める方針である。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年1月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

FSIE制度の修正法案を公表(香港)

2022年10月28日、政府は、特定外国源泉所得課税に関する2022年修正法案を公表した。本法案では、利子、配当、エクイティ持分の処分益、知的財産(IP)所得の4種類の国外所得(特定外国源泉所得)に係る外国源泉所得免除(FSIE)制度が大幅に修正される。本法案は2023年1月1日に発効する見込みである。内国歳入局(IRD)はまた、FAQ、設例、提案されている経済実体要件への準拠に係る当局意見の申請手続きなど、修正FSIE制度に関する執行ガイダンスを専用のウェブページで公表している。
本法案には、当初提案(本誌2022年9月号参照)と比較して、以下を含む変更がある。

  1. 特定の所得と納税者をFSIE制度から除外 – 対象所得について、規制対象金融機関(認可保険会社や銀行など)の規制対象事業に係る利子、配当、および処分益を除外。対象納税者は、香港で事業等を営む多国籍企業の事業体(香港居住多国籍企業事業体の外国恒久的施設(支店等)を除く)。OECD第2の柱のGloBEルールに類似した方法で除外事業体を定義し、一定の修正を加えている(非課税ファンドや実体活動要件を満たす優遇税制の恩典を受ける事業体も除外事業体に該当するが、除外事業体が95%保有する投資/補助的ビークルは明示なし)。
  2. 資本参加免税の要件における50%の受動的所得テストを12か月(5%以上)の保有期間テストに置き換え
  3. スイッチオーバー規定における課税対象要件の適用にルックスルーアプローチを導入(実効税率15%の判定上、最大5階層の投資先事業体を考慮)
  4. 研究開発(R&D)活動の地理的制限を緩和、ネクサス要件の下で納税者が香港外で行ったR&D活動も対象
  5. 片務的税額控除の下で、配当に係る外国税についてルックスルーアプローチを導入(最大5階層、10%以上直接・間接保有)

本法案は、EU(欧州連合)による最終合意(税務上協力的な国・地域の観点)が必要で、香港特別行政区立法会(LegCo)で審査される。

出典:PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」2023年1月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

第2の柱の法案を公表(オランダ)

2022年10月24日、政府は、パブリックコンサルテーション(2022年12月5日まで)のために第2の柱に係る新法案(Minimum Tax Act 2024 (Pillar 2))を公表した。これにより、オランダは 2024年1月1日からの第2の柱の実施に向けて次のステップを踏み出した。本提案は、2022年6月16日に欧州委員会が公表した第2の柱指令の最新の妥協案テキストの実施を目的としている(内容もほぼ同じ)。本法案は、2022年9月9日のフランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン共同宣言(2024年1月1日までに第2の柱を実施することに合意)を踏まえたもので、EUにおける第2の柱指令採択を見据えたものである。なお、申告納付期限は、17か月(初年度20か月)となっており、延滞税やペナルティーもある。本法案では、オランダ法人所得税法(Dutch CITA)と並ぶ、全く新しい独自の法人所得税制が導入される。オランダにおける留意点として、資本参加免税制度(保有要件等が異なるほか、第2の柱では本免税制度が考慮されず、実効税率(ETR)低下の可能性)、連結納税(fiscal unity)制度(第2の柱では事業体単位で算定して国別集計)、トン数税制(国際海運所得と不整合でETRに影響)、清算損制度やイノベーションボックス(ETR低下)などが考えられる。

出典:PwC Netherlands
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PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

外国税額控除規則案(米国)

2022年11月18日、財務省とIRSは、外国税額控除規則案(2022 Foreign Tax Credit (FTC) proposed regulations)を公表し、連邦官報(87 FR 71,271 (Nov. 22, 2022))に掲載された(2022年1月23日までコメント募集)。本規制は、コスト回収要件(重要なコスト・費用(資本的支出、利子、賃料、ロイヤルティー、賃金またはその他のサービスに係る支払い、試験研究に関するコスト・費用は常に重要)の各項目の「実質的に全て」のみの回収を求めるよう緩和)、ロイヤルティー支払に係る源泉税の帰属要件(債務者の国内のみでの使用ライセンスについて、債務者主義を(米国法の使用地主義ではないが)容認)(注1)、外国税の配分・配賦に係る資産の再帰属を取り扱っている。納税者は、一貫性のルールに従って、2022年1月4日に確定した規則(2021年FTC最終規則)(本誌2022年3月号参照)の修正条項の対象となったすべての外国税の取り扱いを決定する際、本規則案により、あるいは確定後の規則に依拠できる。本規則案では、2021年FTC最終規則を修正し、今夏(2022年7月27日)公表された修正条項では小幅な緩和にとどまった厳しい税額控除要件の一部をさらに緩和する。本規則案では、各国の所得税法の多様性を考慮している。上述のコスト回収要件に係る25%セーフハーバー(注2)の適用により、ドイツの営業税(20万ユーロ超の金融コストの25%を課税所得に加算)は外国税額控除の対象となるとみられる。

(注1)米国内でのサービスに係る外国源泉税(債務者主義)は、引き続き外国税額控除の対象にならないであろう。たとえば、ブラジルでは、米国法人がブラジル企業のために米国内で提供したサービスに対する支払いに15%の源泉税がかかる(米国ブラジル間の租税条約はない)が、これは外国税額控除の対象にならないであろう。
(注2)売上/総収入の15%以下、または一定の課税所得の30%以下の控除制限にもセーフハーバーが認められよう。

出典:PwC, Tax Insights
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PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

公開国別報告(PCbCR)指令を国内法に導入(ルーマニア)

政府は、EU指令2021/2101(2021年11月24日)(本誌2021年7月号、8月号、2022年1月号参照)の規定を国内法に取り込み、EU公開国別報告要件を正式に導入した。法令(Order 2048/2022)では、ルーマニア本拠の特定多国籍企業、およびルーマニアに子会社/支店を有する特定多国籍企業(EUまたはEU域外に本拠)に対して、国別に特定の情報を公開することを求めている。年間連結収入の閾値は、過去2年の連続する会計年度のそれぞれで37億RON(ルーマニア・レウ) である。本法令は、2023年1月1日から施行され、2023年1月1日以後開始会計年度に適用される。これは、EU指令によって設定された2024年6月22日の期限よりも早い。ルーマニアは公開国別報告を正式に導入した最初のEU加盟国になる。本法令は、EU指令にほぼ沿ったものとなっている。開示項目は、最終親法人等の名称、会計年度、本報告における使用通貨、事業の概況、従業員数、純売上高合計、総利益/損失、未払い・支払い法人税額、留保利益である。EU加盟国、EUブラックリスト(Annex Ⅰ)およびグレーリスト(AnnexⅡ)掲載国は国別、その他はまとめて開示となる。会計年度終了後12か月以内の開示(ルーマニア語で5年以上、無料開示)が求められる。なお、特定情報の開示に係るセーフガード条項(AnnexⅠ・Ⅱは対象外)があるが、5年以内の開示が求められる。現時点でペナルティーは規定されていないが、今後の動向に留意が必要である。

出典:PwC, Tax Insights
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PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

欧州財務相会議、事業課税に関する行動規範の改訂を承認(EU)

2022年11月8日に開催されたECOFIN月例会議において、EU加盟国の財務相は、事業課税に関する欧州行動規範の改訂版(1997年当初版の改訂)に合意した。本行動規範は、税務上の非協力的法域のEUリストにおいて、どの税制を評価対象とするかを決定する上で重要な役割を担っている。今回の改訂では、その適用範囲が拡大され、EU域内の事業活動の拠点に重要な影響を与える(あるいはその可能性がある)優遇税制、および一般的な適用税制(税制措置)の双方が対象となっている。後者の要素である制度の一般的特徴というのはこれまでなかったもので、その特徴により、(無税を含む)低い税負担(名目税率以外)や、課税繰り延べ(分配時課税制度の特徴)になるか評価する。一般に適用される特徴が有害であるかどうかを評価する際、 税制上適切な濫用防止規定等がないことによる二重非課税や、同一費用、所得額または一連の取引に関連した税制恩典の二重/多重利用可能性により、EU域内の事業活動拠点に重大な影響を及ぼしているかを検討することになる。本行動規範の追加措置は、2023年1月1日から適用される。なお、一般的な税制措置に係る見直しは、2023年1月1日以後に制定または改正された措置に対してのみ行われる(エストニアなどの現行の分配時課税制度は対象外とみられる)。

出典:PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2023年1月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

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