
Worldwide Tax Summary 2025年2月号
本稿では、海外税制(オーストラリア、ベトナム、オーストリア、ハンガリー、EU、アフリカ、OECD)の動向を解説しています。(月刊国際税務 2025年2月号 寄稿)
2022-08-05
欧州委員会、負債と資本のバイアス削減に係る控除(「DEBRA」)の実施案を公表(EU)
第2の柱のミニマム税実施に係るコンサルテーション(アイルランド)
2022年5月11日、欧州委員会は、負債と資本のバイアス削減に係る控除(DEBRA)、および超過借入コストの税控除制限に関するEU指令案を公表した。本提案は、21世紀の事業者課税に関する連絡文書(本誌2021年7月号参照)で示された、法人税に関する欧州委員会の主要な行動計画の1つである。本提案では、資本投資に係る税控除(10年間)を導入し、負債投資に係る利子控除をさらに制限することで、デットとエクイティファイナンスの取扱いの差異に対処することを目的としている。負債利子控除の制限は、租税回避防止指令(ATAD)第4条に基づく既存の利子制限規定(ILR)と関連する。本規定案は、EU域外本社の恒久的施設(PE)を含め、1以上のEU加盟国で法人所得税の対象となる納税者に適用されよう。本規定案は、金融事業には適用されない。既に国内法で資本に係る控除を適用している加盟国は、本規定の適用を最大10年間(国内法に基づく恩典の期間内で)延期できる。本提案に関して、[2022年7月8日](注)までコメントを募集している。
(注)最低8週間のフィードバック期間だが、すべてのEU言語で利用可能になるまで毎日延長(本指令案に係る最終期限は、7月29日とされている)
欧州委員会によると、本提案の背景には、近年の事業者によるデットファイナンスの大幅な増加がある。負債水準の上昇は、世界的パンデミック時の現金注入の必要性によるもので、事業への投資がエクイティ投資でなくデットファイナンスで行われたのは、これらの税務上の取扱いの差異による。負債利子は、課税事業利得から控除できるので、デットファイナンスは企業にとって有利とみられている。欧州委員会は、この単一市場へのより持続可能でリスクの少ない成長と投資を促したいと考えており、エクイティファイナンスのレベル向上がこの鍵になるとみている。本提案は、EU域内で活動する事業者に係るより調和のとれた法人税制への移行を補完する措置の1つとみられている。最終的には、欧州でのビジネス:所得課税の枠組み(BEFIT)の目的の下での共通税務規則への移行をサポートすることとなろう。
本提案は、第三国の税務上の居住事業体の1以上のEU加盟国のPEを含め、1以上の加盟国で法人税の対象となるすべての納税者に適用される。本提案は、金融事業には適用されない(本提案の第2条。なおATAD ILR第2条(5)とは範囲が異なる)。
本提案により、納税者が一課税期間内に資本を増やす場合、継続する10年間、課税ベースから資本に係る控除が認められることになる。資本に係る控除は、控除ベースに、関連みなし利子率を乗じて計算する。
資本に係る控除 = 控除ベース × みなし利子率(NIR)
控除ベースは、課税年度末の資本と前課税年度末の資本の差、つまり、前年比の資本の増加に等しくなる。資本は、払込資本(paid-up capital)、資本剰余金(share premium account)、(再評価)準備金およびその他の準備金、ならびに利益剰余金(profits or losses carried forward)の合計である。純資本は、納税者の資本と、関連企業への資本参加および自己株の税務価額(tax value)の合計との差として定義される。欧州委員会によると、この定義は、資本参加による控除の連鎖を防止するためである。
適用利率は、通貨毎の10年債リスクフリーレートである。このレートに、1%のリスクプレミアムレートが上乗せされる。中小企業(SMEs)には、より高いリスクプレミアムレート(1.5%)が提案されている。
みなし利子率(NIR) = リスクフリーレート + リスクプレミアム
リスクプレミアム = 1%(SMEsは1.5%)
本控除は、EBITDAの30%に制限される。控除が納税者の純課税所得を超える場合、課税利得が不十分なために課税年度に控除されない資本に係る控除は、将来の期間に無期限に繰り越せる可能性がある。未使用の控除枠(控除がEBITDAの30%を超える場合)も、ILRとの同等性を補強するために最大5年間繰り越して使用できる。
本提案によると、納税者が資本に係る控除の取得後に資本を減少させた場合、それが会計損失または法的義務によるものであることを証明できない限り、当該控除の既取得分に係る純資本の総増加額を限度に、連続する10課税期間で対応額が課税される。
負債と資本の同等性をさらに補強し、加盟国の公的資金の持続可能性を維持するため、資本に係るみなし利子控除に加えて、負債利子の支払いに係る税控除の追加制限がある。比例的な制限により、デットファイナンスに係る利子控除は、ATAD第1条(2)で定義されている超過借入コスト(支払利子-受取利子)の85%に制限される(15%は永久に控除不可)。この制限は、ATAD ILRより先に適用される。
ILR適用による控除可能利子額が、超過借入コストの85%に満たない場合、納税者は、その差額をILRに従って繰り越し、または繰り戻すことができる。
本提案の第5条では、濫用防止規定を扱っている(2019年に行動規範グループにより採択されたみなし利子控除制度に関するガイダンスを参照)。
第5条では、資本に係る控除のベースには、以下に伴う増加額は含まれないと規定している。
関連企業間の融資
関連企業間の資本参加または継続企業としての事業活動の移転
納税者が資本に係る控除を行おうとする加盟国と情報交換を行わない国地域の税務上の居住者からの現金出資
これらの濫用防止規定は、納税者が、関連する取引が正当な商業上の目的で行われたという十分な証拠を示し、定義された資本に係る控除の二重控除とならない場合は適用されない。
さらに、本提案では、資本の増加が現物出資または資産への投資によるものである場合、加盟国は、その資産が納税者の所得創出活動に必要な場合のみ、当該控除のベースの計算上、その資産の価値を考慮するよう、適切な措置を取らなければならないとしている。欧州委員会によると、これは控除ベースを増やすことを目的とした資産の過大評価または贅沢品の購入の防止目的である。
資本の増加がグループ再編によるものである場合、資本の増加は、再編前にグループ内ですでに存在していた資本(またはその一部)を新たな資本に転換することにならない範囲でのみ考慮される。欧州委員会によると、この旧資本の新資本としての再分類は、清算とスタートアップの設立を通じて達成可能としている。
少数の国(ベルギー、ポルトガル、ポーランド、キプロス、マルタ、イタリア)には、資本控除に基づく税務上の控除を認めている既存制度がある。このような制度には通常、みなし利子控除(NID)制度が含まれる。これにより、特定年の新たな(一部の)資本投資に対してみなし利子控除が認められる。控除が認められる期間は、適用利率同様、国によって異なる。NID制度には通常、本指令案とは異なり、マイナスの控除の概念は含まれていない。代わりに、資本の減少はNIDベース減少となる可能性がある。控除ベースに適用される制限は、本DEBRA提案とは異なり、たとえば、グループ内投資が含まれる可能性がある。さらに、資本の定義について、既存のNID制度と本提案とは異なる。NID制度には通常、ILRで要求されるものを除き、負債投資に対する利子控除制限は含まれていない。
本提案の規定に基づき、NIDまたは他の資本控除制度を有する国は、2024年1月1日時点ですでに各国規定の恩典を受けている納税者のため、最大10年間国内規定を維持できる。
本提案では、ILRで一般的に認められているようなカーブアウトは想定されていない。また、外部ファイナンスとグループ内ファイナンスを区別していない。したがって、資本に係る控除と追加的なIRLの双方を考慮したファイナンス構成の再評価が必要になる可能性がある。直接税に関する他のすべての提案同様、本提案を進めるためには、27のEU加盟国の全会一致が必要である。採択された場合、EU加盟国は、[2023年12月31日]までに本EU指令の規定を実施し、[2024年1月1日]から適用することになる(日付は変更可能性あり)。
出典:Source: PwC, Tax Policy Alert
「月刊 国際税務」2022年7月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
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