月刊国際税務 Worldwide Tax Summary 6月号

2020-06-05

2020年6月号Worldwide Tax Summaryトピックス

  1. COVID-19による移動制限の影響を受けた個人・事業者のためのガイダンスを公表(米国)
  2. 国際税務措置(外国投資制限と刺激策)の公表(オーストラリア)
  3. 法人の本国回帰改正法の発効(韓国)
  4. デジタルサービス税ガイドラインの公表(フランス)
  5. COVID-19に起因する恒久的施設と居住地国の論点(中国)

COVID-19による移動制限の影響を受けた個人・事業者のためのガイダンスを公表(米国)

2020年4月21日、財務省とIRSは、COVID-19パンデミックに関連して移動制限(travel disruptions)の影響を受けた事業者・個人の救済に関して、FAQs(質疑応答集)およびRevenue Procedures(歳入庁手続通達)(RP 2020-20、2020-27)の形でガイダンスを公表した。

  • RP 2020-20では、COVID-19に関連する60日までの期間の特定の移動制限により、非居住者個人が連邦所得税上米国居住者として取り扱われたり、従属人的サービス(dependent personal services)所得に関する租税条約の適格性に影響させたりすべきではないとしている。
  • RP 2020-27では、国外在住で、COVID-19による特定の移動制限の影響を受けた米国民(US citizens)への救済が含まれ、Section 911(d)(1)上、国外稼得所得および住居費額を総所得から控除する選択が引き続き可能である。
  • FAQsでは、COVID-19パンデミックのみに起因して60日までの期間米国で生じる特定の活動・サービスについて、特定の米国での営業又は事業(US trade or business: USTB)と恒久的施設(permanent establishment: PE)の決定に影響させるべきではないことを明確にしている。

このうち、FAQsの詳細は以下の通りである。

IRSは、外国人(foreign person)が米国内法上USTBに従事しているかどうか、米国所得租税条約の恩典を受ける外国人が米国にPEを有するかどうかの決定に、COVID-19の移動制限がどのように影響するかについて、2つのQ&Aを公表した。

Q1は、COVID-19の緊急制限(Emergency Disruptions)に起因する、COVID-19緊急期間(Emergency Period)の特定サービス/活動に関係する。COVID-19緊急期間は、2020年2月1日以後4月1日以前に開始する60日の継続期間と定義されている。COVID-19の緊急移動制限(Emergency Travel Disruptions)は、以下の通りである。

  • 飛行機便のキャンセルおよびその他の形式の輸送制限
  • 屋内退避命令、隔離および国境閉鎖
  • COVID-19緊急期間中のソーシャルディスタンス戦略の実施および公共スペースへの外出制限の勧告による移動不安感(feeling unsafe to travel)

以下の要件を満たす場合、個人がCOVID-19緊急期間中米国に一時的に滞在する間に行うサービス/活動によって、非居住外国人(nonresident aliens)、外国法人、および外国のパートナーシップがUSTBに従事していると取り扱われることはない。

  1. 外国法人、パートナーシップまたは非居住外国人がそれ以外ではUSTBに従事しておらず、また、
  2. 米国に一時的に滞在する間に行うサービス/活動が、COVID-19緊急移動制限によって米国で行われたに過ぎない。

Q2は、USTBに従事するものの、適用される米国所得租税条約上でPEとならない非居住外国人または外国法人に関係する。Q2は、個人が単にCOVID-19緊急移動制限で米国に一時滞在する際のサービス/活動により、非居住外国人または外国法人がPEを通じて事業を行っていると取り扱われるのか、という問いである。IRSは、これらが単にCOVID-19緊急移動制限により米国で生じているのであれば、非居住者または外国法人がPEを有するかの決定にあたり、これらのサービス・活動は考慮されないとしている。

本ガイダンスでは、影響を受ける者は、COVID-19緊急期間を明確にし、その活動/サービスはCOVID-19緊急移動制限がなければ米国で生じなかったであろうことを立証する同時文書を保存すべきであるとしている。さらに、本FAQガイダンスには、非居住外国人および外国法人が、申告による特定の保護(protections)(控除(deductions)や時効の開始など)を受けるために、保護的(protective)な米国税務申告をしてもよいとのコメントが含まれる。

 

出典: PwC, Tax Insights
「月刊 国際税務」 2020年6月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人常任顧問 岡田 至康 監修

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