
Worldwide Tax Summary 2025年2月号
本稿では、海外税制(オーストラリア、ベトナム、オーストリア、ハンガリー、EU、アフリカ、OECD)の動向を解説しています。(月刊国際税務 2025年2月号 寄稿)
2024-07-12
2024年4月16日、クリスティア・フリーランド副首相兼財務大臣は、政府の予算案を公表した。個人関係税および事業関係税の主な改正項目として、以下が含まれる。
事業関係税の改正項目(上述を含む)としては、クリーン電力投資税額控除、EVサプライチェーン投資税額控除、クリーンテクノロジー製造投資税額控除、加速度CCA控除、特定の賃貸住宅に係る利子控除、空き地課税(建設奨励)、特定住宅の金融化の制限、ハラール住宅ローン関連、情報開示請求に係る不履行への対応、Synthetic Equity Arrangements(注1)、法人グループ支配があるMutual Fund Corporations(導管扱い、時価課税なし)への対応、中小企業向け炭素還付(Carbon Rebate)、租税債務の回避(関連者間の資産移転)への対応、報告・届出義務のある取引に係る罰則、破産状態の操作(債務免除)への対応、科学研究・開発(SR&ED)税制(今後、第2次コンサルテーションを行う予定)、が含まれる。
(注1) Synthetic Equity Arrangementsには、配当受領者が、株式に係る損失リスク、およびキャピタルゲイン/利得の機会(経済的エクスポージャー)の全て/実質的に全てを他の者に提供する取決め、が含まれる。本予算案では、租税回避防止規定の例外の廃止を提案している。本措置により、納税者は、当該取決めがある株式について、受取配当控除の適用を受けられないことになろう。
国際税務関連では、以下の改正項目が含まれる。
第1の柱・第2の柱 - 本予算案において、OECD・第1の柱についてのコミットメントを再確認する一方、デジタルサービス税(DST)の制定計画(本誌2023年9月号参照)を進めており、その実施法案(C-59)が議会に提出されている(2024暦年施行、初年度は2022年1月1日以後の収入が課税対象見込み)。第2の柱の実施法案(当初法案は、本誌2023年10月号参照)は、近く議会に提出見込みである。(注2)
(注2) 2024年2月の下院財務常任委員会の報告書では、必要があれば、多国籍企業に対して25%以上の実効税率を適用し、デジタルサービスに係る独自の課税の導入を進めるよう(また、デジタルサービスに係る税が引き続き国際先例との整合性を確保するよう)提言している。なお、カナダの一般的な連邦法人所得税(CIT)税率は15%(38%(基本税率)-10%(州・準州レベルのCIT課税の可能性を考慮。外国法域に係る課税所得には適用なし)-13%(一般税率控除/製造・加工業に係る控除))であり、州・準州のCIT(連邦CIT上、損金不算入)税率はかなり異なっている(なお、オンタリオ州では、CIT税率11.5%/10%及び2.7%の法人ミニマム税(CMT))。
暗号資産報告 - OECDは、暗号資産の取引に関する税務情報を自動的に交換するための枠組み(暗号資産報告枠組み(Crypto-Asset Reporting Framework:CARF))を策定している。本予算案では、カナダにおけるCARFの導入を提案している。新しい報告規定では、カナダに居住して、あるいはカナダで事業を営んでおり、暗号資産交換取引に係るサービスを提供する、暗号資産サービスプロバイダーに適用される(顧客や暗号資産取引に関する一定の情報を報告する)。また本予算案では、電子マネー商品や中央銀行のデジタル通貨に関する改正を含め、OECDの共通報告基準(CRS)の実施に係るカナダの規定の改正案も含まれている。これらの措置は、2026年以降の暦年に適用される。
非居住者のサービス提供者に対する源泉徴収 - カナダで提供されたサービスに対して非居住者に支払いを行う者は、現在、支払い額の15%を源泉徴収し、CRA(カナダ税務当局)に納付することが義務付けられている。これは、非居住者が最終的にカナダで支払うべき税の前払いとして機能することを意図している。一方、非居住者の中には、租税条約による免除や、国際海運などの特定活動に係る免除などにより、これらのサービスに対してカナダで納税義務を負わない者もいる。このような場合、CRAが特定の取引について源泉徴収義務の事前免除を行うか、非居住者が既に源泉徴収された金額の還付を申請できる。本予算案では、一定の要件のもと、特定の期間に発生する複数の取引を対象とする包括的な免除を認める立法権限をCRAに与えることを提案している。本措置は、制定法案に係る国王の裁可(royal assent)(事実上、総督の承認)により発効することになる。
以上の他、消費税(GST/HST)関連では、GST軽減措置の拡大(一定の学生寮免税等)や、フェイスマスク・フェイスシールドに係るGST/HST暫定免除の廃止がある。また、本予算案では、政府が過去(2021~2023年)に公表した諸措置について、その後の協議、審議、法制上の進展を考慮して修正の上、進めることを確認している。
出典:PwC Canada
「月刊 国際税務」2024年6月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修
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