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2019-07-04
原文については、ASBJおよびJICPAのウェブサイトをご覧ください。
https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/accounting_standards/y2019/2019-0704.html
https://jicpa.or.jp/specialized_field/20190704ejj.html
ASBJは、国際的な会計基準の定めとの比較可能性を向上させるために、2016年8月に公表した中期運営方針において、日本基準を国際的に整合性のあるものとするための取組みに関する検討課題の一つとして時価に関するガイダンスおよび開示を取り上げていました。これらの状況を踏まえ、ASBJは、2018年3月に開催された第381回企業会計基準委員会において、主に金融商品の時価に関するガイダンスおよび開示に関して、国際的な会計基準との整合性を図る取組みに着手する旨を決定し、検討を重ね、以下の企業会計基準および企業会計基準適用指針(以下合わせて「本会計基準等」とする)を公表しました。
また、JICPAより、以下の実務指針等の改正が公表されています。
本会計基準等の概要は、以下のとおりです。
時価算定会計基準は、統一的な時価の算定方法の採用により、国内外の企業間における財務諸表の比較可能性を向上させる観点から、国際財務報告基準(IFRS)第13号「公正価値測定」(以下「IFRS第13号」という)の定めを基本的にすべて取り入れています。ただし、これまで我が国で行われてきた実務等に配慮し、財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない範囲で、個別項目に対するその他の取扱いを定めています。
IFRS第13号では公正価値という用語が用いられていますが、時価算定会計基準では、我が国における他の関連諸法規において時価という用語が広く用いられている事実等を配慮し、時価という用語を用いています。
金融商品については、国際的な会計基準と整合させ、国際的な企業間の財務諸表の比較可能性を向上させる便益が高いと判断し、時価算定会計基準の範囲に含めています。
これに対し、金融商品以外の資産および負債については、時価算定会計基準の範囲に含めた場合の整合性を図るためのコストと便益を考慮し、原則として、時価算定会計基準の範囲に含めていません。
ただし、棚卸資産会計基準におけるトレーディング目的で保有する棚卸資産については、売買目的有価証券と同様に毎期時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益とする処理が求められています。よって、時価の算定についても金融商品と整合性を図る取扱いが適切と考えられるため、時価算定会計基準の範囲に含めています。
「時価」とは、「算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格または負債の移転のために支払う価格」と定義されています。
時価は、直接観察可能であるかどうかにかかわらず、算定日における市場参加者間の秩序ある取引が行われると想定した場合の出口価格であるとされています。つまり、時価は、資産の売却によって受け取る価格または負債の移転のために支払う価格を意味し、交換取引において資産を取得するために支払った価格または負債を引き受けるために受け取った価格である入口価格ではないとされています。
改正前の金融商品会計基準は、その他有価証券の期末の貸借対照表価額に期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができると定めていました。しかし、時価の定義の変更に伴い、その平均価額が改正された時価の定義を満たさないため、この取扱いが削除されています。
時価の算定にあたっては、状況に応じて、十分なデータが利用できる評価技法を用います。評価技法を用いるにあたっては、関連性のある観察可能なインプットを最大限利用し、観察できないインプットの利用を最小限にします。
時価の算定に用いるインプットは、レベル1のインプットが最も優先順位が高く、レベル3のインプットが最も優先順位が低くなります。
時価は、その算定において重要な影響を与えるインプットが属するレベルに応じて、レベル1の時価、レベル2の時価またはレベル3の時価に分類します。なお、時価を算定するために異なるレベルに分類される複数のインプットを用いており、これらのインプットに、時価の算定に重要な影響を与えるインプットが複数含まれる場合があります。この場合、これらの重要な影響を与えるインプットが属するレベルのうち、時価の算定における優先順位が最も低いレベルに当該時価を分類します。
総資産の大部分を金融資産が占め、かつ総負債の大部分を金融負債及び保険契約から生じる負債が占める企業集団または企業(以下「企業集団等」とする)以外の企業集団等においては、その他の取扱いが定められています。具体的には、第三者が客観的に信頼性のある者で企業集団等から独立した者であり、公表されているインプットの契約時からの推移と入手した相場価格との間に明らかな不整合はないと認められる場合で、かつ、レベル2の時価に属すると判断される場合には、次のデリバティブ取引については、当該第三者から入手した相場価格を時価とみなす取扱いが定められています。
(1)インプットである金利がその全期間にわたって一般に公表されており観察可能である同一通貨の固定金利と変動金利を交換する金利スワップ(いわゆるプレイン・バニラ・スワップ)
(2)インプットである所定の通貨の先物為替相場がその全期間にわたって一般に公表されており観察可能である為替予約または通貨スワップ
時価算定会計基準においては、時価のレベルに関する概念を取り入れ、たとえ観察可能なインプットを入手できない場合であっても、入手できる最良の情報に基づく観察できないインプットに基づき時価を算定するとしています。このような時価の考え方のもとでは、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券は想定されません。よって、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券の記載を削除しています。
ただし、市場価格のない株式等に関しては、たとえ何らかの方式により価額の算定が可能としても、それを時価とはしないとする従来の考え方を踏襲し、引き続き取得原価をもって貸借対照表価額とする取扱いとしています。これにより、これまで時価を把握することが極めて困難であるとして、取得原価または償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としていたもののうち、市場価格のない株式等に含まれないものについては、時価をもって貸借対照表価額とする取扱いとなります。
また、市場価格のない株式等については、時価に関する注記を不要としています。
金融商品時価開示適用指針では、基本的にはIFRS第13号の開示項目との整合性を図っていますが、一部の開示項目についてはコストと便益を考慮して採り入れていません。金融商品時価開示適用指針では、金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項として次の開示項目の注記を求めています。
貸借対照表においてまたは注記のみで時価評価する金融商品
(1)時価のレベルごとの残高
貸借対照表においてまたは注記のみで時価評価するレベル2の時価またはレベル3の時価の金融商品
(2)時価の算定に用いた評価技法及びインプットの説明
(3)時価の算定に用いる評価技法またはその適用の変更の旨及びその理由
貸借対照表において時価評価するレベル3の時価の金融商品
(4)時価の算定に用いた重要な観察できないインプットに関する定量的情報
(5)期首残高から期末残高への調整表(当期の損益に計上した未実現の評価損益を含む。)
(6)企業の評価プロセスの説明
(7)観察できないインプットを変化させた場合の時価に対する影響に関する説明
IFRS第13号では上記に加えて次の注記を求めているものの、金融商品時価開示適用指針では、これらの注記は求めていません。
(8)レベル1の時価とレベル2の時価との間のすべての振替額及びその振替の理由
(9)レベル3の時価について観察できないインプットを合理的に考え得る代替的な仮定に変更した場合の影響
なお、四半期適用指針では、四半期においては、上述の(1)のうち貸借対照表において時価評価する金融商品について、企業の事業運営にあたっての重要な項目であり、かつ、前年度末と比較して著しく変動している場合に開示が求められます。
本会計基準等は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。
ただし、2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から本会計基準等を適用することができます。また、2020年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することもできます。
時価算定会計基準及び時価算定適用指針の適用初年度においては、時価算定会計基準及び時価算定適用指針が定める新たな会計方針を、将来にわたって適用します。この場合、その変更の内容について注記が求められています。上述の定めにかかわらず、時価の算定にあたり観察可能なインプットを最大限利用しなければならない定めなどにより、時価算定会計基準および時価算定適用指針の適用に伴い時価を算定するために用いた方法を変更することとなった場合で、当該変更による影響額を分離することができるときは、会計方針の変更に該当するものとし、当該会計方針の変更を過去の期間のすべてに遡及適用することが許容されています。
また、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金およびその他の包括利益累計額または評価・換算差額等に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用する取扱いも許容されています。
遡及適用にあたっては、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第10項に定められる事項の注記が必要となります。
投資信託の時価の算定に関しては、会計基準公表後概ね1年をかけて検討を行うこととし、それまでの間は、改正前の取扱いを踏襲することができます。この場合、時価のレベルごとの内訳等に関する事項の注記は要しません。
貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記については、投資信託の取扱いを改正する際にその取扱いを明らかにすることとし、それまでの間は金融商品時価開示適用指針第4項(1)の時価の注記は要しません。
時価の定義の見直しに伴い、その他有価証券の期末の貸借対照表価額に期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる定めの削除や、市場価格のない株式等以外の時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券の定めの削除など、金融商品会計基準の改正により会計方針の変更が生じます。時価の算定を変更することになり得るという意味では時価算定会計基準が定める新たな会計方針の適用と同一であるため、時価算定会計基準の適用初年度における原則的な取扱いと同様に将来にわたって適用します。この場合、その変更の内容について注記します。
四半期に関しては、適用初年度には、前年度末と比較して著しく変動している資産又は負債等に関する、時価のレベルごとの残高の注記を不要としています。
このニュースレターは、概略的な内容を説明する目的で作成しています。この情報が個々のケースにそのまま適用できるとは限りません。したがいまして、具体的な決定を下される前に、PwCあらた有限責任監査法人の担当者にご確認されることをお勧めします。