「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(改正企業会計基準第24号)の公表(ASBJ)

2020-04-02

日本基準のトピックス 第391号

主旨

  • 2020年3月31日、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」とする)は、改正企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「本改正会計基準」とする)を公表しました。
  • 本改正会計基準は、財務諸表における注記情報の充実を図るため会計方針の開示の取扱いについて明確化しています。また、その中で会計処理の対象となる会計事象や取引(以下「会計事象等」とする)に関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則および手続の開示上の取扱いについても明らかにしています。
  • 「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」とは、特定の会計事象等に対して適用し得る具体的な会計基準等の定めが存在しない場合をいいます。本改正会計基準は、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合についても、関連する会計基準等の定めが明らかな場合と同じく、重要な会計方針として注記することを明確化しています。
  • 原文については、ASBJのウェブサイトをご覧ください。

経緯

2018年11月に、基準諮問会議より、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則および手続に係る注記情報の充実について検討することがASBJに提言されました。この提言を受けて、ASBJは2018年12月より審議を開始し、2019年10月に企業会計基準公開草案第69号(企業会計基準第24号の改正案)「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」を公表して広く意見を求めました。本改正会計基準は、公開草案に寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正したうえで公表されたものです。

わが国の会計基準等では、会計方針の開示について、企業会計原則注解(注1‐2)において「財務諸表には、重要な会計方針を注記しなければならない。」と定められています。当該定めは関連する会計基準等の定めが明らかな場合におけるこれまでの実務に影響を及ぼすものではないため、本改正会計基準においても、当該定めを引き継ぐこととしています。

概要

開示目的

本改正会計基準では、重要な会計方針に関する注記は、財務諸表を作成するための基礎となる事項を財務諸表利用者が理解するために、採用した会計処理の原則および手続の概要を示すことを目的(開示目的1)とすること、および当該開示目的は、会計処理の対象となる会計事象等に関連する会計基準等の定めが明らかでない場合も同じであるとしています。

なお、上記の「会計基準等」とは、企業会計基準適用指針第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」において、具体的に次に掲げるもの、およびその他の一般に公正妥当と認められる会計処理の原則および手続を明文化して定めたものであることが示されています。また、法令等により会計処理の原則および手続が定められているときは、当該法令等も一般に公正妥当と認められる会計基準等に含まれる場合があります。

(1)ASBJが公表した企業会計基準
(2)企業会計審議会が公表した会計基準(企業会計原則等を含む。)
(3)ASBJが公表した企業会計基準適用指針
(4)ASBJが公表した実務対応報告
(5)日本公認会計士協会が公表した会計制度委員会報告(実務指針)、監査・保証実務委員会報告および業種別監査委員会報告のうち会計処理の原則および手続を定めたもの

本改正会計基準では、「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」の例として、関連する会計基準等が存在しない新たな取引や経済事象が出現した場合に適用する会計処理の原則および手続で重要性があるものが該当するとしています。また、対象とする会計事象等自体に関して適用される会計基準等については明らかではないものの、参考となる既存の会計基準等がある場合には、当該既存の会計基準等が定める会計処理の原則および手続も含まれるとしています。

さらに、業界の実務慣行とされている会計処理の原則および手続のみが存在する場合で当該会計処理の原則および手続に重要性があるとき(企業が所属する業界団体が当該団体に所属する各企業に対して通知する会計処理の原則および手続も含まれる。)も該当するとしています。

重要な会計方針に関する注記

本改正会計基準では、関連する会計基準等の定めが明らかな場合におけるこれまでの実務に影響を及ぼさないために、企業会計原則注解(注1‐2)における定めを引き継ぎ、重要な会計方針に関する注記について次のように取り扱うとしています。

(1)財務諸表には、重要な会計方針を注記する。

(2)会計方針の例としては、次のようなものがある。ただし、重要性の乏しいものについては、注記を省略することができる。

  • 有価証券の評価基準および評価方法
  • 棚卸資産の評価基準および評価方法
  • 固定資産の減価償却の方法
  • 繰延資産の処理方法
  • 外貨建資産および負債の本邦通貨への換算基準
  • 引当金の計上基準
  • 収益および費用の計上基準

(3)会計基準等の定めが明らかであり、当該会計基準等において代替的な会計処理の原則および手続が認められていない場合には、当該会計方針に関する注記を省略することができる。 

未適用の会計基準等に関する注記

本改正会計基準では、未適用の会計基準等に関する注記に関する定めを独立した項目に移動することで、当該定めは、既に公表されているものの、未だ適用されていない新しい会計基準等全般に適用されることを明確化しています。

また、本改正会計基準では、専ら表示および注記事項を定めた会計基準等に関して未適用の会計基準等に関する注記を行う場合は、以下の事項の注記のみで足りる(新しい会計基準等の適用による影響に関する記述の開示は求めない)ことを明確化しています。

(1)新しい会計基準等の名称および概要

(2)適用予定日(早期適用する場合には早期適用予定日)に関する記述

適用時期等

本改正会計基準は、2021年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用されます。ただし、公表日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することができます。

本改正会計基準を適用したことにより新たに注記する会計方針は、本改正会計基準の定める表示方法の変更には該当しません。ただし、本改正会計基準を新たに適用したことにより、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則および手続を新たに開示するときには、追加情報としてその旨を注記することが求められます。

なお、本改正会計基準の公表後、適用までの間は、本改正会計基準における未適用の会計基準等に関する注記の定めを類推適用し、上記の事項を注記することが適切とされています。


1 ASBJは、企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」において、開示について包括的に定めた会計基準において原則(開示目的)を示し、開示する具体的な項目およびその注記内容については当該原則(開示目的)に照らして判断するとしています。

このニュースレターは、概略的な内容を説明する目的で作成しています。この情報が個々のケースにそのまま適用できるとは限りません。したがいまして、具体的な決定を下される前に、PwCあらた有限責任監査法人の担当者にご確認されることをお勧めします。

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